ひふみプラスへの投資はやめたほうがいいのでしょうか。
ひふみプラスはレオス・キャピタルワークスが運用する日本株中心のアクティブファンドです。2012年の設定から高いパフォーマンスを実現し、日本を代表するアクティブファンドにとして有名ですが、足元の成績を見るとTOPIXよりも低いパフォーマンスに甘んじています。
ひふみプラスへの投資を継続して良いのか、今後の見通しに不安を感じている投資家も多いことでしょう。
ひふみプラスへの投資をやめたほうがいいか悩んでいる投資家の参考になるよう、ひふみプラスの特徴やパフォーマンスが不調な原因を分析して今後の見通しを解説します。
参考ページ:【ひふみ】ひふみ投信・ひふみワールド公式サイト
- 運用はレオス・キャピタルワークス、社長兼会長に藤野英人氏
- 成長銘柄を発掘する能力が非常に高い運用会社
- 設定から約5年の騰落率は+258.1%と驚異的(2012年5月~2016年12月)
- 人気が出すぎて純資産が急増、不調の原因に
- ひふみ魅力化計画で立て直しを目指す
ひふみプラスについて
まずはひふみプラスについて、運用会社や商品概要といった基本情報から見ていきましょう。
運用会社レオス・キャピタルワークスについて
ひふみプラスの運用会社はレオス・キャピタルワークスです。
レオス・キャピタルワークスは、現在も代表取締役会長兼社長を務める藤野英人氏によって立ち上げられた運用会社です。
看板商品であるひふみ投信のパフォーマンスが良かったことと、藤野氏を中心に積極的な情報発信をおこなったことで人気と資金を集め、日本を代表する運用会社となりました。
レオス・キャピタルワークスはもともと独立系運用会社として設立されました。系列に属さない運用会社は親会社からのしがらみはなく、純粋に自らの運用と顧客に集中して業務をおこなえる環境にあります。
ただし、2020年にSBIファイナンシャルサービシーズ(SBIホールディングスの子会社)が株式の過半数を保有し現在は子会社化されています。
レオス・キャピタルワークスの主業務は投資信託の運用と年金基金などと契約を結び運用を受託する「投資顧問業務」です。
運用資産が全体で1.2兆円を超えており、運用会社の規模としては大きな会社になります。また、投資信託の運用資産も1兆円を超えており、多くの投資家からの支持を集めている運用会社と言えるでしょう。
レオス・キャピタルワークスの代表商品
レオス・キャピタルワークスの代表的な投資信託は以下の通りです。
商品 | 主な内容 |
ひふみ投信 | 主に日本の成長企業に投資 |
ひふみワールド | 海外の成長企業に投資 |
ひふみらいと | 国内外の株式や債券に投資 |
まるごとひふみ(15/50/100) | 株式と債券に投資 名称の数値が株式の組み入れ比率 |
「ひふみ投信」はレオス・キャピタルワークスが直接販売、「ひふみプラス」は銀行や証券会社などの金融機関での販売、「ひふみ年金」はiDeCoや企業型DCの対象投資信託です。
ひふみ投信とひふみプラス、ひふみ年金はすべて同じひふみ投信マザーファンドで運用されているので運用内容は同じです。
ひふみ投信はR&Iファンド大賞2023において「投資信託10年国内株式コア部門」で、優秀ファンド賞を受賞しています。
R&Iファンド大賞とは格付投資情報センター(R&I)が5,000本を超える投資信託の中から、中立的な立場で「優れた運用実績を示したアクティブファンド」を表彰するアワードです。
レオス・キャピタルワークスの主な歩み
2003年4月 | レオス株式会社設立 |
2003年9月 | レオス・キャピタルワークス株式会社に商号変更 |
2008年10月 | ひふみ投信の運用・販売を開始 |
2012年5月 | ひふみプラスの運用・販売を開始 |
2013年4月 | ひふみ投信マザーファンド100億円突破 |
2016年9月 | レオス・キャピタルワークス運用資産残高2000億円突破 |
2016年10月 | 確定拠出年金(DC)専用投資信託「ひふみ年金」運用開始 |
2017年12月 | ひふみ投信マザーファンド 純資産総額5000億円突破 |
2019年10月 | 「ひふみワールド」運用・販売を開始 |
2019年12月 | ひふみワールドの姉妹ファンド「ひふみワールド+」の運用を開始 |
2021年3月 | 「ひふみらいと」「まるごとひふみ」運用・販売を開始 |
2021年5月 | レオス・キャピタルワークス 運用資産総額1兆円突破 |
2021年8月 | ひふみシリーズ純資産総額1兆円突破 |
代表取締役会長兼社長 藤野英人氏
レオス・キャピタルワークスの代表取締役会長兼社長は藤野英人氏です。キャリアを現野村アセットマネジメントでスタートさせ、外資系運用会社で実績を上げてきたファンドマネージャーです。自身でレオス・キャピタルワークスとひふみ投信シリーズを立ち上げた日本を代表するファンドマネージャーの1人です。
出典:ひふみの運用哲学 | ひふみブランドコンセプト | ひふみ
投資啓発にも積極的で、複数の大学で教授として活動する傍ら、書籍の執筆も行っています。投資や資産運用の重要性を広めるとともに、自らの運用に関する意見も積極的に発信しています。藤野氏が代表を務めるレオス・キャピタルワークスが運用するひふみプラスはサラリーマン運用者の多い日本の投資信託業界の中で、数少ない運用者の顔が見えるファンドともいえます。
ひふみプラスのポイント
ひふみプラスのファンド概要
商品分類 | 追加型投信/内外/株式 |
当初設定日 | 2012年5月28日 |
信託期間 | 無期限 |
決算日 | 毎年9月30日(休業日の場合、翌営業日) |
収益の分配 | 決算時に収益分配方針に基づいて分配を行ないます。 |
購入単位 | 販売会社が定める単位 なお、収益分配金の再投資は1円以上1円単位 |
手数料 | 申込金額に対する手数料率は3.30%(税抜3.00%)を上限として販売会社が定める料率 |
信託報酬 | 信託財産の純資産総額500億円まで :年率1.078%(税抜年率0.980%) 信託財産の純資産総額500億円を超える部分 :年率0.968%(税抜年率0.880%) 信託財産の純資産総額1,000億円を超える部分 :年率0.858%(税抜年率0.780%) |
その他費用 | 監査費用として信託財産の純資産総額に対して年率0.0055%(税抜年率0.0050%)以内を乗じて得た額 |
NISA | NISA対象、つみたてNISA対象 |
参考:ひふみプラス|投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2023年6月17日
ひふみファンド4つの特色
ファンドの特色1:定量 × 定性の銘柄分析
ひふみプラスの特色については、目論見書で以下のように説明されています。
国内外の上場株式を主要な投資対象とし、市場価値が割安と考えられる銘柄を選別して長期的に投資します。
- 国内外の長期的な経済循環や経済構造の変化、経済の発展段階等を総合的に勘案して、適切な国内外の株式市場を選びます。
- 長期的な産業のトレンドを勘案しつつ、定性・定量の両方面から徹底的な調査・分析を行ない、業種や企業規模にとらわれることなく、長期的な将来価値に対してその時点での市場価値が割安と考えられる銘柄に長期的に選別投資します
出典:ひふみプラス|投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2023年6月17日
ひふみプラスは国内外の上場株式を対象とします。その基準はいわゆる「割安株」ですが、単に業績などの定量的な側面だけでなく、経営者の質や現場の状態など定性的な側面も考慮する点に特徴があります。
ファンドの特色2:柔軟な組み入れ比率
ひふみプラスの特色として、株式の組入比率の変化については柔軟であることが挙げられます。
組入銘柄の株価水準が割高と判断した時に、利益確定や下落リスク回避のために保有株式を一部売却する場合があります。
また、市場価値が割安と考えられる銘柄が無くなっていると判断した時に、買付を行なわずに好機を待つ場合があります。
このような状況においては、ポートフォリオに占める株式の比率が低くなります。一方で、市場価値が割安と考えられる銘柄が多くあると判断した時には、株式を買い付けることによってポートフォリオに占める株式の比率が高まる場合があります。
出典:ひふみプラス|投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2023年6月17日
一般的な投資信託の場合、株式に投資するものは基本そのままですが、ひふみプラスはその比率が柔軟に変化します。
実際、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年には現金の比率が増えています。株価が暴落する時期に現金の比率を高めることによって、リスクをコントロールすることができます。
ファンドの特色3:ファミリーファンド方式での運用
運用はファミリーファンド方式により、マザーファンドを通じておこなわれます。
出典:ひふみプラス|投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日 2023年6月17日
ファミリーファンド方式とは、ベビーファンド(ひふみプラス)の資金をマザーファンドに投資して、マザーファンドが実際に有価証券に投資することにより、その実質的な運用を行なう仕組みです。
ひふみ投信とひふみプラスは同じマザーファンドで運用されますので、パフォーマンスは原則同じになります。
投資先は独自に発掘した成長企業
ひふみプラスの特徴は、企業調査のプロであるアナリストやファンドマネージャーが実際に企業に足を運び、成長性をその目で確かめる高いリサーチ力です。地味で地道な中小型銘柄でも成長性のある企業などを独自のルートで発掘しています。
実際にひふみのアナリストやファンドマネージャーが、企業や施設に足を運び、経営者や現場の社員とも対面して投資先を選んでいます。どのような投資環境でも独自要因で成長を遂げる企業を発掘します。
守りながらふやす運用
ひふみプラスのもう1つの特徴として、守りながら増やす運用を掲げています。
IT企業など成長企業の王道のような銘柄だけでなく、地味で地道に収益をあげる銘柄まで、さまざまな価値観を組み入れることで「打たれ強いファンド」を目指すとしています。
運用者の顔が見える運用
セミナーやイベントで、最高投資責任者である藤野氏をはじめ、アナリスト、その他のひふみのメンバーが積極的にコミュニケーションしています。
ひふみプラス 最近のパフォーマンスと評判
では、肝心のひふみプラスのパフォーマンスと評判を見ていきましょう。
ひふみプラスの2023年8月31日現在の基準価額は52,444円、純資産総額は5,297億円です。なお、設定から現在まで分配金の支払い実績はありません。
また、設定来のパフォーマンスは以下の通りです。設定から現在まで分配金の支払い実績はありません。
出典:レオスキャピタルワークス | ひふみプラス | マンスリーレポート
パフォーマンスをみると、設定来では424.44%と高い実績を残しています。TOPIXと比較しても100%以上上回っており、十分なパフォーマンスと言えるでしょう。
設定来(2012年から)のパフォーマンスで見ると素晴らしいですが、過去3年以下のパフォーマンスを見るとすべてTOPIXを下回っています。
この足元での成績の悪さがひふみプラスの評判を下げていることは間違いありません。インターネット上の口コミでは辛辣な評価も見受けられます。
ひふみプラスが不調の原因
ひふみプラスが不調の原因はどこにあるのでしょうか。考えられる原因を2つ解説します。
原因1:残高の急増による組み入れ銘柄の大型化
ひふみプラスの過去3年のパフォーマンスはTOPIXの上昇率の半分以下と非常に不調です。
不調の原因の1つに「組み入れ銘柄の大型化」が挙げられます。
株式投資において、特定の会社の株を大量に(発行済株式総数に占める保有株式数の割合が5%以上)買い付けた場合、大量保有者として『大量保有報告書』を出して報告する義務が発生します。
大量保有報告書を出すと、自分(自社)の買付や売付が市場に常に晒される(公表される)ことになるため、自社の売買によって株価が動いてしまう可能性があります。特に大量の株を売付する際、出来高への影響が大きく値段が崩れてしまい、自身が大きな損失を被ることになります。
このような状況を避けるには、1つの企業に投資しすぎることを回避すること、あるいは時価総額の高い会社(大企業・大型株)に投資し発行株式数に対する割合を小さくする必要があります。
ひふみプラスの年間運用成績と純資産を見てみましょう。
運用が好調であった時期は、概ね2012年5月の設定から2017年ごろまでです。一方、純資産は2016年末から2017年末にかけて大きく増加しています。
時期 | 年末基準価額 | ひふみプラス 年間騰落率 |
TOPIX 年間騰落率 |
年末純資産 (億円) |
2012年(5~12月) | 1,1951円 | 19.51% | 20.61% | 8.8 |
2013年 | 19,992円 | 67.28% | 54.41% | 78.4 |
2014年 | 22,875円 | 14.42% | 10.27% | 191.7 |
2015年 | 27,880円 | 21.88% | 12.06% | 680.3 |
2016年 | 29,169円 | 4.6% | 0.3% | 857.5 |
2017年 | 42,235円 | 44.8% | 22.2% | 4,531.7 |
2018年 | 33,268円 | ▲21.2% | ▲16.0% | 5,306.2 |
2019年 | 40,951円 | 23.1% | 18.1% | 5,629.6 |
2020年 | 49,441円 | 20.73% | 7.39% | 4,528.8 |
2021年 | 51,081円 | 3.32% | 12.74% | 4,795.6 |
2022年 | 44,236円 | ▲13.40% | ▲2.45% | 4,617.3 |
2023年(1~6月) | 43,689円 | ▲14.47% | ▲1.42% | 4,433.7 |
では2016年末と2017年末、そして最もデータの新しい2023年8月末で組み入れ上位銘柄がどのように変化しているのかを見ていきましょう。
まず運用成績の良かった2016年末の組み入れ銘柄です。中小型株や超小型株の組み入れが目立ちます。
2016年12月時点組入銘柄(純資産:857.5億円)
銘柄 | 分類 | 組入比率 | |
1 | あいホールディングス | 中小型 | 2.7% |
2 | GMOペイメントゲートウェイ | 大型 | 1.6% |
3 | 荏原製作所 | 大型 | 2.0% |
4 | メガチップス | 中小型 | 2.0% |
5 | アウトソーシング | 中小型 | 1.9% |
6 | 船井総研ホールディングス | 中小型 | 1.7% |
7 | 東京センチュリー | 大型 | 1.6% |
8 | 山一電機 | 超小型 | 1.5% |
9 | トラスコ中山 | 中小型 | 1.4% |
10 | ライク | 超小型 | 1.4% |
続いて純資産が大きく増加した後の2017年末の組み入れ上位銘柄です。
アメリカの株式であるマイクロソフト、日本の大型株である三菱UFJフィナンシャル・グループやNTTドコモそしてトヨタ自動車と誰もが知っている銘柄が上位に組み入れられています。
2017年12月時点組入銘柄(純資産:4,531.7億円)
銘柄 | 分類 | 組入比率 | |
1 | 東京センチュリー | 大型 | 1.9% |
2 | 共立メンテナンス | 中小型 | 1.8% |
3 | マイクロソフト | 大型 | 1.7% |
4 | あい ホールディングス | 中小型 | 1.7% |
5 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 大型 | 1.7% |
6 | NTTドコモ | 大型 | 1.6% |
7 | トヨタ自動車 | 大型 | 1.6% |
8 | ルネサスエレクトロニクス | 大型 | 1.5% |
9 | 新日鐵住金 | 大型 | 1.5% |
10 | ローム | 大型 | 1.5% |
最後に2023年8月の組み入れ上位銘柄です。現時点では上位銘柄に中小型株に分類される銘柄はなくなっています。
2023年8月時点組入銘柄(純資産:4,531.7億円)
銘柄 | 分類 | 組入比率 | |
1 | 東京エレクトロン | 大型 | 2.4% |
2 | 楽天銀行 | 大型 | 2.3% |
3 | ソニーグループ | 大型 | 2.1% |
4 | 東京海上ホールディングス | 大型 | 2.1% |
5 | 日本電信電話 | 大型 | 1.7% |
6 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 大型 | 1.7% |
7 | インターネットイニシアティブ | 大型 | 1.7% |
8 | GMOペイメントゲートウェイ | 大型 | 1.6% |
9 | アドバンテスト | 大型 | 1.5% |
10 | オリエンタルランド | 大型 | 1.4% |
ひふみプラスの設定当初における運用は中小型株の組み入れ比率が高く、そのことが他の投資信託との違いであり、またパフォーマンスがよい理由でもありました。
レオス・キャピタルワークスは自分たちでもアピールしているように「足で稼ぐ運用」を売りにしており、設定当初は自分たちで中小型株に分類される企業を調査して、有望な銘柄を発掘するところに強みを持っていました。
その結果としてTOPIXを大きく上回るパフォーマンスを実現していました。
しかし、パフォーマンスが良すぎることで注目を集め人気化し、2017年には大量の資金が集まるようになってしまいました。
大量の資金を運用するにはこれまで対象にしていた中小型株では時価総額が小さすぎて十分な投資の受け皿にならず、時価総額の大きい大型株への投資を増やすことになりました。
ひふみプラス(レオス)本来の「有望な銘柄を独自の調査で発掘する」という強みがなくなるわけでありませんが、規模が大きくなりすぎて、その強みが発揮され亡くなってしまいます。
その結果として、組み入れ銘柄の内容は設定当初とは大きく異なるようになってしまし、パフォーマンスの不振につながっています。
原因2:グロース株(成長株)の調整
ひふみプラスは「成長企業への投資」を得意としています。純資産の急激な増加により中小型株中心の投資ができなくなり、大型株を組み入れるようになってもその傾向が見てとれます。
成長企業は株式市場ではグロース株と呼ばれ、割安株のことを指すバリュー株と対比されます。
ひふみプラスの不振の原因には、組み入れの多いグロース株の世界的な調整が挙げられます。
2019年末に中国の武漢で感染者の報告があった新型コロナウィルスは、その後世界的なパンデミックを引き起こしました。
日本では2023年の5月にインフルエンザなどと同じ扱いの「5類感染症」となっていますが、特に発生直後の期間は感染拡大を防ぐため世界的に外出が制限されるなどの措置が取られました。
この期間、株式市場でどのような状況であったかというと、感染が始まった当初は調整局面となりましたが、その後外出禁止が企業のDX投資(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるとして、ハイテク株を中心に急激な値上がりを見せました。
特にハイテクグロース株の多いアメリカナスダック市場は、2019年末には9000ポイント程度であった指数は2021年末には15,000ポイントを超えて推移しました。それに連れて日本の株式市場もハイテクグロース株を中心に高パフォーマンスが相次ぎました。
その後、新型コロナの終息とともに株式市場で新たな課題となったのは世界的なインフレ、つまり物価高でした。それまで金利を低位に抑えていた各国の中央銀行でしたが、2022年はインフレへの対応として政策金利の引き上げ局面となりました。
成長株は将来の成長のために資金が必要な企業が多いです。企業の資金調達は借り入れが中心のため、金利が上がると調達コストが上がります。
そのため、成長のため資金を多く必要とするグロース株の企業は、金利の上昇局面では売られる傾向があります。
2022年以降は世界的な金利上昇局面となり、ハイテクグロース株は軒並み調整を余儀なくされています。
日本においても傾向は同じで、それまでデフレといわれていた日本の物価も上昇傾向がみられ、2023年には日本銀行もマイナス金利政策の終了を示唆する行動を取り始めています。世界の国と比較すると幅は小さいですが、日本でも金利上昇がみられ、日本の成長企業株にも逆風が吹いています。
このような投資環境が、成長株を中心に組み入れているひふみプラスには逆風となっており、足元のパフォーマンス不調につながっています。
今後のひふみプラスの見通し
アメリカの利上げサイクルは終盤に差し掛かっているといわれています。世界的なインフレ圧力が落ち着いて金利が安定すれば、また成長株も含めて株式市場に資金が戻ってくると考えられます。
レオス・キャピタルワークスは2023年9月にひふみ魅力化計画という動画をアップしています。ここ数年のひふみ投信のパフォーマンスについて評価が低いことも認識したうえで、状況を打開するべく検討をおこなっている姿勢を示しています
これまで避けてきた大企業への投資についても徐々に変化が見えるとし、今後は大企業も投資の対象にしていくと説明しています。
その理由として、以下のように日本の大企業への投資を取り巻く環境が変化していることを挙げています。
- 伊藤レポート(2014年0によりROEの重要性が、大企業も含めて認知されてきている
- コロナを経て、日本の大企業も経営者の代替わりが進んでいる
- 世界的な著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が日本株に投資をしている
具体的なアクションと結果はこれからですが、少なくとも自分たちに対する批判や評価を客観的に受け止めて、改善しようとしている姿勢があることは確かなので今後に期待したいところです。
運用会社であるレオス・キャピタルワークスの運用能力、特に成長する銘柄を発掘してくる能力が高いことは、純資産が急激に増える前のパフォーマンスが証明しています。
日本国内におけるアクティブ運用をおこなう運用会社としては、とても優秀であることは確かです。
レオス・キャピタルワークスも状況をただ見ているだけではなく、ひふみ魅力化計画と銘打ってひふみ投信の見直しを進めています。成長銘柄を発掘する能力を大型株にも活かすことができれば、ひふみプラスの本格的な復活につながると考えられます。
ひふみプラス以外のおすすめの投資先など
ひふみプラスは、パフォーマンス不振を改善するべく様々なアクションを起こしていますが、足元のパフォーマンスが悪いのは確かです。
今後のパフォーマンスについてもあまり期待が持てず、ひふみプラスへの投資をやめておくのであれば、代わりとなる投資先にはどんなものがあるのか2銘柄紹介します。
eMaxis Slim 国内株式(日経平均)
運用会社 | 三菱UFJアセットマネジメント |
投資対象 | 日本株式 |
主な投資目的 | 日経平均株価(日経225/配当込み)の値動きに連動する投資成果をめざす |
決算 | 年1回(4月25日) |
手数料(税込み) | 購入時手数料:なし 信託財産留保額:なし 信託報酬:年率0.143%以内 |
NISA | 一般NISA・つみたてNISA対象 |
参考:eMAXIS Slim 国内株式(日経平均) | 投資信託なら三菱UFJアセットマネジメント
日本株全体の成長が今後も続くと考えるならば、低コストのインデックスファンドに投資することも選択肢のひとつです。
現在日本のインデックスファンドは運用会社によるコスト競争が激しく、昔に比べるとはるかに安いファンドがたくさんあります。
その中で三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS slimシリーズ」はインターネットでの申し込みが前提となりますが、業界最低水準の手数料を維持することを目指すインデックスファンドです。
eMAXIS Slimについて詳しくはこちらの記事でも解説しています。
企業価値成長小型株ファンド(眼力)
運用会社 | アセットマネジメントOne |
投資対象 | 日本株式 |
主な投資方針 | 主として企業価値成長小型株マザーファンドを通じて、わが国の小型株に実質的に投資 |
決算 | 年2回(2月20日、8月20日) |
手数料(税込み) | 購入時手数料:上限3.3% 信託財産留保額:0.3% 信託報酬:年率1.595%以内 |
NISA | 一般NISA・つみたてNISA対象 |
参考:企業価値成長小型株ファンド(眼力)|ファンド情報|アセットマネジメントOne
ひふみプラスが過去に中小型株で高いパフォーマンスを出していたことを考えると、日本の中小型株ファンドで投資を検討するのもよいかもしれません。
アセットマネジメントOneが運用する「企業価値成長小型株ファンド(眼力)」は、投資方針および投資対象が小型株ファンドに決められており、運用の途中で大型株ファンドを大量に入れることはありません。
その代わり小型株に投資できないくらい純資産が増えてしまった場合、その後の資金の追加は停止、つまり投資信託の購入がストップすることが考えられます。
BMキャピタル
名称 | ビーエムシー合同会社 |
英名 | BMC LLC |
所在地 | 〒106-0032 東京都港区六本木7-18-1 |
事業目的 | (1)金融商品取引法に基づく有価証券及びデリバティブ取引 (2)各種事業への投資 (3)有価証券の自己募集 (4)経営コンサルティング業務 (5)前各号に附帯する一切の業務 |
参考:BMキャピタルHP
成長性の高い日本の中小型株に投資したいのであれば、それを専門にするヘッジファンドもおすすめです。
BMキャピタルは、国内の割安な中小型株に投資し運用するヘッジファンドです。ひふみ投信以上に高いパフォーマンスが評価を集めています。
ただしBMキャピタルは投資信託ではなくヘッジファンドなので投資するにはいくつかの条件があります。最低出資金額も高めに設定されているので、投資の際にはきちんと確認する必要があります。
BMキャピタルについて詳しくはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
ひふみプラスは中小型株の銘柄選定に優れた能力を持ち、2012年5月の設定から約5年後の2016年12月までパフォーマンスは+258.1%と、同期間におけるTOPIXの+65.0%をはるかに上回る成績を実現していました。
しかし、パフォーマンスの良さが人気となり、急激な資金流入を経験して純資産が一気に増えた結果、得意の中小型株への投資だけでは資金を使い切れず大型株への投資もおこなうようになりました。
大型株の投資が増えたことによりそれまでの中小型株選別での優位性がなくなり、パフォーマンスは悪化して不調といわれるようになりました。
運用成績の良さが仇となり過剰な資金流入を引き起こし自分の首を絞めることになってしまいました。
レオス・キャピタルワークスも状況をただ見ているだけではなく「ひふみ魅力化計画」と銘打ってひふみ投信の見直しを進めています。
成長銘柄を発掘する能力を大型株にも活かすことができればひふみプラスの本格的な復活につながると考えられます。
アクティブファンドへの投資を決定する要因はいくつかありますが、最後には運用会社あるいは運用者が信頼できるかどうかになります。
藤野会長兼社長を中心としたレオス・キャピタルワークスの運用に関しては、ホームページやユーチューブなどで積極的に情報発信されています。そのような情報を見て、運用会社として信用できると思う人には、ひふみプラスへの投資あるいは保有継続をおすすめします。