フィリップス曲線とは
フィリップス曲線とは、インフレ率と失業率の間に逆相関が存在するという経済理論を示す曲線のことです。
フィリップス曲線は経済の過熱と冷え込みを示す指標として有用です。
経済が過熱し、失業率が低下するとインフレ率が上昇する傾向があります。すると、中央銀行はインフレを抑制するために金利を引き上げる可能性が高くなります。
金利の上昇は、債券市場において価格の下落を引き起こすため、債券を保有する投資家はリスクが増大します。一方、金利の上昇は銀行の収益性を向上させるため、銀行株にはプラスの影響を与えることがあります。
経済加熱 ▶️ 失業率低下 ▶️ インフレ ▶️ 金利引上げ ▶️ 債券価格低下・銀行株上昇
逆に、経済が冷え込み、失業率が上昇すると、インフレ率が低下する傾向があります。この場合、中央銀行は経済を刺激するために金利を引き下げる可能性があります。
金利の低下は、借り入れコストの低下になるため、企業の投資を促進し、株式市場にプラスの影響を与えることがあります。また、金利の低下は債券価格の上昇を引き起こし、債券投資家にとっては利益をもたらす可能性もあります。
経済冷え込み ▶️ 失業率上昇 ▶️ デフレ ▶️ 金利引き下げ ▶️ 株価・債券価格上昇
フィリップス曲線を理解することで、投資家は様々な経済状況に応じたポートフォリオの構築が可能となります。
例えば、インフレ率が上昇すると予測される場合、インフレに強い資産(例えば、不動産やインフレ連動債)への投資を検討することができます。逆に、インフレ率が低下すると予測される場合、成長株や長期債券への投資が有利になることがあります。
また、フィリップス曲線を理解することは、経済政策の影響を予測する上でも役立ちます。
政府や中央銀行がどのような政策を採用するかを予測することで、それが市場に与える影響を先取りし、投資戦略を最適化することができます。例えば、インフレ抑制を目的とした引き締め政策が予想される場合、金利上昇を見越して短期債券や現金ポジションを増やすなどの対策が考えられます。
このように、フィリップス曲線を理解しておくことは、経済環境をより深く理解し、適切な投資判断を行う上で有効です。経済の動向を把握し、政策の影響を予測することで、リスクを管理しつつ、より高いリターンを追求することができるでしょう。
フィリップス曲線の課題と限界
このように景気・経済の関係を示しているフィリップス曲線ですが、いくつかの例外的な状況や当てはまらないケースもあるため注意が必要です。
そもそもこの理論は、ニュージーランド出身の経済学者ウィリアム・フィリップスによって1958年に発表されました。彼の研究では、英国のデータを用いて、賃金の変化率と失業率の関係を分析しており、その結果、インフレ率が上昇すると失業率が低下し、その逆もまた然りであることが示されました。
フィリップス曲線の基本的な概念は、経済が活況を呈すると、企業はより多くの労働力を必要とし、失業率が低下します。このとき、労働市場が逼迫し、賃金が上昇しやすくなるため、インフレ率も上昇するというものです。
逆に、経済が不況に陥ると、企業の需要が減少し、失業率が上昇します。この結果、賃金上昇の圧力が弱まり、インフレ率が低下するという関係です。
しかし、フィリップス曲線の理論は1970年代のスタグフレーション(高インフレと高失業が同時に進行する状態)によって大きく揺らぎました。
この時期には、石油ショックの影響で物価が急騰しながらも、失業率も上昇するという、フィリップス曲線の前提に反する現象が発生しました。
このような状況も含めてフィリップス曲線の理論を補完するために、経済学者たちは期待インフレの概念を導入しました。
これにより、短期的にはフィリップス曲線の関係が成り立つものの、長期的には労働者や消費者の期待がインフレ率に対して適応するため、インフレと失業の関係が変わることが説明されました。長期的なフィリップス曲線は、自然失業率(NAIRU)に基づき、失業率がNAIRUを超えない限り、インフレ率に影響を及ぼさないとされています。
また近年では、フィリップス曲線のフラット化が議論されています。
これは、低失業率でもインフレが低い状態が続く現象です。このフラット化の背後には、中央銀行のインフレ目標政策やグローバル化の影響があると考えられています。
フィリップス曲線は、その理論の限界が指摘される一方で、経済政策の設計において依然として参考にされる重要な概念です。インフレ率と失業率の関係を理解することは、適切な金融政策や財政政策を策定し、経済の安定を図るための重要な概念であることには変わりありません。
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