【用語解説】VICEファンド

VICEファンドとは

VICEファンドは、タバコ会社、カジノ運営企業、酒類メーカー、航空・防衛産業といった、一部の人々からは「不道徳」と見なされる業界に投資するファンドのことです。

このファンドは、2002年に米国のUSAミューチュアルによって設定された投資信託であり、正式には「USAミューチュアルズ VICEファンド」と呼ばれています。日本語では「ワル者ファンド」とも称されることがあります。

 

一般的な投資信託とは異なり、VICEファンドは倫理的、環境的、社会的な配慮を重視する「SRI（社会的責任投資）」とは対極に位置しています。SRIは企業の社会的責任や持続可能性を重視し、環境に優しい企業や社会的に貢献する企業に投資することを目指します。

これに対して、VICEファンドは「倫理的に問題がある」とされる産業に意図的に投資し、そうした産業がもたらす収益性に注目しています。

 

VICEファンドが注目される理由

VICEファンドが注目される理由の一つは、その運用成績の安定性です。特に、景気の変動に対する耐性が強いとされています。

 

タバコや酒類、ギャンブルといった産業は、一般的に景気の好不調にかかわらず一定の需要があります。そのため、これらの企業の株価は、他の多くの産業よりも景気変動の影響を受けにくい傾向があります。また、地政学的リスクが高まると、防衛関連株が牽引役となり、ファンド全体のパフォーマンスを押し上げることが多いとされています。

 

さらに、VICEファンドの投資先であるこれらの業界は、しばしば高い収益率を誇ります。

例えば、タバコや酒類は価格の弾力性が低く、価格を引き上げても消費者の需要が大きく減少しないため、企業は安定した収益を確保することができます。カジノ産業も同様に、一定の顧客層が常に存在し、特に観光地における収益性が高いことで知られています。

 

このような背景から、VICEファンドは一部の投資家にとって魅力的な選択肢となっています。その理由は、収益性の高さや景気変動に対する耐性に加え、倫理的な基準を気にしない投資戦略によるものです。

しかしながら、その「不道徳」な投資先からくる社会的批判や倫理的な問題も無視できません。したがって、VICEファンドに投資する際には、そのリスクとリターンを慎重に検討する必要があります。