日経平均株価が史上最高値を連日更新(※3万9233円71銭(2024年2月26日終値))し話題になっています。
株価が好調なニュースに世の中が盛り上がっていますが、そもそもこの「日経平均株価」というものが何なのかきちんと理解できていますか?
また、似たような経済指標に「TOPIX」がありますが、日経平均とTOPIXの違いをきちんと説明できますか?
もしかすると、TOPIXは日経平均の英語表記だなんて勘違いしてはいませんか??
日経平均もTOPIXも、日本の経済を代表する株価指数(インデックス)ですが、それぞれ内容が異なっており、指数の変化にも特徴があります。
2024年から改訂された新NISAの影響もあり、昨今「インデックス投資」が非常に人気ではありますが、インデックス投資をするのであれば、その対象となるインデックス(指数)の内容や特徴をきちんと理解しておかなければいけません。
今回は、日経平均とTOPIXについて
- 日経平均とは何なのか
- TOPIXとは何なのか
- それぞれどのような特徴があるのか
などを順に解説していきます。
また、それぞれの特徴を踏まえた上で、どっちのインデックスに投資した方がおすすめなのかについても考えていきましょう。
- 日経平均とは
- TOPIXとは
- 日経平均とTOPIXの違い・それぞれの特徴
- 日経平均 or TOPIX:どちらのインデックス投資の方がおすすめか
インデックス(指数)とは
日経平均とTOPIXの話をする前に簡単に「インデックス」について解説しておきます。
インデックスとは株式市場の動きを表す指数のことです。
株式市場には、様々な会社(※国内上場企業3,928社/2024年2月27日時点)の株があり、それぞれバラバラに動いていますが、それらを総合的に評価するために作られた指数を、株価指数/インデックスと呼びます。
インデックスの動きを確認することで、個々の銘柄の株価変動が集約された株式市場全体の動きを知ることができます。
日経平均もTOPIXも日本の株式市場を表す代表的な株価指数です。
インデックスはこの2つだけではありません。日本国内だけでも、日本取引所グループJPX総研が算出しているものだけでも40種類近くもありますし、海外に目を向ければ、アメリカの「NYダウ」や「S&P500」「NASDAQ」など、多種多様なインデックスがあります。
インデックスとインデックスファンド(投信)
近年、インデックスファンドへの投資が人気です。
新NISAの積立投資枠のランキングを見てもインデックスファンドが上位のほとんどを占めています。
SBI証券のランキングを見ると、上位はインデックスファンドばかりです(残念ながらほとんどが全世界株式や米国株式などの海外のものではありますが…)
これらインデックスファンドは、特定のインデックスに沿った値動きになるように運用される投資信託です。
例えば、日経平均をベンチマーク(基準/目標)とするインデックスファンドであれば、日経平均が上がればファンドの基準価額も上がり、下がれば同様に下がるように運用されます。
インデックスは、株式市場全体の値動きを表している指数なので、個別銘柄(1企業の株価)より分散投資の効果が高く、リスクヘッジできるというメリットがあります。
個人で日経平均の中身と同じポートフォリオを組むこともできますが、それには莫大な手間とコスト、巨額の資金が必要になります。
それと同様の投資を、1商品で手軽に少額から簡単にできるのが、インデックスファンドへの投資のメリットであり、人気の理由です。
分散投資の効果が高かく、リスクヘッジにもなるインデックスファンドは、新NISAのつみたて投資枠の対象にも数多く選ばれており、特に初心者におすすめのものとして金融庁も認めています。
このようにインデックスファンドへの投資が人気であり、初心者におすすめな点に間違いはありませんが、インデックス投資で重要なのは、どのインデックスをベンチマーク(基準)とするファンドに投資するかです。
そして、インデックスを選ぶためには、それぞれのインデックスについてその中身をきちんと理解しておかなければいけません。
それでは日本経済・株式市場を代表する二大インデックスである「日経平均」と「TOPIX」についてそれぞれ見ていきましょう。
日経平均とは
日経平均とは、日経平均株価の略称/俗称であり、日本経済新聞社が選定した225銘柄で構成されています。
対象の銘柄が225銘柄ということもあり「日経225」とも呼ばれます。
日経平均の構成銘柄は、東証プライム市場から、日本経済新聞社が流動性の高さや業種のバランスを考慮して選定しています。
日経平均採用の225銘柄は年2回(4月と10月)に見直しが行われ、必要に応じて入れ替えが起こります。
最近では昨年2023年9月に、ニトリやメルカリといった最近好調な企業が追加された一方で、日本板硝子や三井E&S、松井証券が外されたことが話題になりました。
日経平均の構成銘柄
日経平均の構成銘柄は、プライム市場の中でも流動性の高い銘柄が選ばれており、大型株が多いのが特徴です。
日経平均の構成銘柄は日本を代表する銘柄が多く、ファーストリテイリング(ユニクロ)・東京エレクトロン・ソフトバンクグループ・KDDI・ダイキンなどが名を連ねています。
特定の業種に偏りが出ないように、バランスを考えて構成銘柄が選定されているため、様々な業種の大型銘柄で構成されています。
TOPIXとは
TOPIXは「東証株価指数」のことです。
TOkyo Stock Price IndeXの頭文字からきています。
ニュースでは日経平均株価の方をよく耳にするかもしれませんが、経済番組などでは必ずチェックされる非常に重要なインデックスです。
実は、日本株をベンチマークとするインデックスファンド(投資信託)を見ると、日経平均よりもTOPIXを対象としているものの方が数が多いです。
TOPIXの構成銘柄
日経平均が、東証プライム市場から選ばれた流動性の高い大型株225社で構成されているのに対し、TOPIXは従来の東証1部市場の全銘柄が原則として対象です。
現在は、株式市場の区分が変わり、東証1部・2部・マザーズ・ジャスダックは廃止され「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つになりました。
TOPIXの構成銘柄は、プライム市場の原則全銘柄に加えて、元々東証1部にありTOPIXに含まれていたものなどが対象となっています。そのため、TOPIXの対象銘柄は2100銘柄以上も及びます。
構成銘柄上位には、トヨタ・ソニーグループ・NTT(日本電信電話)・三菱UFJフィナンシャルグループ・キーエンスなどが名を連ねています。
日経平均とTOPIXの違い
日経平均とTOPIXは、どちらも日本の株式市場を表す指標でありながら、構成銘柄の選定条件や銘柄数が違いました。
日経平均(日経225) | TOPIX(東証株価指数) | |
選定条件 | 東証プライム市場から 日本経済新聞社が選定 |
旧東証1部全銘柄 (東証プライム市場+α) |
選定基準 | 流動性の高さと全体のバランスを重視 | 流通株式時価総額100億円未満の銘柄については段階的にウエイトを軽減 |
銘柄数 | 225銘柄 | 2100銘柄以上 |
代表的な銘柄 | ファーストリテイリング 東京エレクトロン ソフトバンクグループ KDDI ダイキン |
トヨタ ソニーグループ NTT(日本電信電話) 三菱UFJフィナンシャルグループ キーエンス |
銘柄数や選定基準にも違いはありますが、日経平均とTOPIXの最大の違いはなんといっても指数の算出方法です。
指数の算出方法
- 日経平均:株価平均型
- TOPIX:時価総額加重平均型
日経平均とTOPIXの算出方法についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
日経平均の算出方法
日経平均の算出方法は「株価平均型」です。
株価平均型はその名前の通り、構成銘柄の「株価」を平均して算出する指数です。
平たくいってしまえば、225銘柄の株価の合計(※)が日経平均株価の基準です。
※厳密には、各銘柄に対して「株価換算係数」という数値をかけて、実際の株価から調整された値で計算します。
TOPIXの算出方法
一方の、TOPIXの算出方法は「時価総額加重平均型」です。
時価総額加重平均型では、時価総額の合計から指数を算出します。
TOPIXでは、制定時(1968年1月4日)の時価総額を100として、そこからの変化の割合で数値を算出しています。
日経平均(株価平均)とTOPIX(時価総額加重平均)の違い
日経平均(株価平均型)の場合、株価の高い銘柄(値がさ株)の株価の影響を大きく受けます。
例えば、
- A社:1株10,000円
- B社:1株100円
の2銘柄で構成しているとイメージしてみてください。
A社の株価が10%と上がると、全体でも「10,100円→11,100円」とほぼ10%と株価が上がりますが、同様に全体の株価(日経平均)を上げるためには、B社の場合株価を10倍にしなければいけません。
このようにより株価の高い銘柄の影響を大きく受けるのが「株価平均型」の特徴です。
一方で、TOPIX(時価総額加重平均型)の場合、時価総額の大きな企業の株価の影響をより大きく受けることになります。
それぞれ株価と時価総額の大きな銘柄の影響が強いことに変わりはありませんが、より特定の銘柄の影響が大きくなっているのは日経平均の方です。
実際に、日経平均(株価平均型)とTOPIX(時価総額加重平均型)の構成比率上位5銘柄を比較してみましょう。
日経平均 | TOPIX | ||
銘柄名 | 構成比率 | 銘柄名 | 構成比率 |
ファーストリテイリング | 10.14% | トヨタ自動車 | 3.98% |
東京エレクトロン | 5.82% | ソニーグループ | 2.89% |
ソフトバンクグループ | 4.25% | NTT(日本電信電話) | 1.78% |
KDDI | 3.26% | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 1.75% |
ダイキン工業 | 2.94% | キーエンス | 1.75% |
参考:日経平均とTOPIXの違いとは?インデックスファンドのメリットも解説! | 三菱UFJ銀行
日経平均株価の構成比率トップであるファーストリテイリング(9983)の構成比率は、1社で全体の10%以上にもなっています。
また、上位5社だけで全体の25%以上を占めており、特定の銘柄の株価の影響を強く受けていることがわかります。
ファーストリテイリング社の株価に大きく左右されることから、日経平均は、一部では「ユニクロ指数」などと揶揄されてもいます。
一方のTOPIXを見ると、1位のトヨタ自動車でも4%未満、上位5銘柄の約12%とかなり割合が低く抑えられています。
そもそも日経平均は225銘柄、TOPIXは2100銘柄以上と、構成銘柄の数が約10倍も違うので、1銘柄あたりの比率に差ができるのはある種当然とも言えます。
株価が上がれば時価総額も上がりますが、株価が高い会社の方が大きい(=時価総額が高い)会社というわけではありません。
「時価総額=株価×発行株式数」で求められるため、その会社がどれだけの数の株式を発行しているのかによっても株価や時価総額の関係は変わってくるのです。
日経平均とTOPIXの上位にある会社から、いくつか株価と時価総額を比較してみましょう。
銘柄名 | 株価 | 時価総額 | 発行株式数 |
ファーストリテイリング | 43,510円 | 13兆8,457億円 | 3億1,822万株 |
ソニーグループ | 12,930円 | 16兆3,077億円 | 12億6,123万株 |
トヨタ自動車 | 3,582円 | 58兆4,402億円 | 163億1,498万株 |
ソフトバンクグループ | 8,993円 | 13兆2,196億円 | 14億6,999万株 |
日本電信電話(NTT) | 182円 | 16兆5,254億円 | 905億5,031株 |
2024年2月27日時点情報
このように上位数社だけを見ても同じような時価総額でも株価が100倍〜250倍近くも違う場合があるのがわかります。
日経平均 or TOPIXはどちらがおすすめか
ここまで見てきたように、日経平均とTOPIXではその中身に差があります。
東証プライム市場に絞って厳選された銘柄(225社)に投資したいならば「日経平均」、東証プライム市場に限らず、より幅広く分散投資をしたい人はTOPIXがおすすめです。
日経平均とTOPIXのリターン比較
日経平均とTOPIXの性質上の違いだけを比べても難しいという人もいると思うので、より具体的にそれぞれのインデックスのパフォーマンスも比較してみましょう。
それぞれの過去1ヶ月、6ヶ月、1年、5年のリターン(※2024年2月27日時点)は以下の通りです。
1ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 5年 | |
日経平均 | + | + | + | + |
TOPIX | + | + | + | + |
全期間で日経平均がTOPIXを上回る結果となりましたが、両者の推移をグラフで比較してみると、ほとんど同じように上下していることがわかります。
2024年2月の現在は、株価が非常に好調なため日経平均の方がよい成績を修めていますが、長い目で見ると値動きの形(上下するタイミング)に大きな差はありません。
やはり構成銘柄の数=分散投資の程度が、リスクヘッジに与える影響は大きく、TOPIXの方がより低リスクで安定した値動きのようにも見えます。
今後も株価が大きく上がっていくことを期待するのであれば日経平均、将来的に下落する可能性も考慮しリスクヘッジをするならTOPIXの方がおすすめでしょう。
まとめ
ここまで見てきた日経平均とTOPIXに関する話をまとめると以下のようになります。
- 日経平均は東証プライム市場の中でも大型の225銘柄で構成
- TOPIXは旧東証1部全銘柄(プライム市場+α)で2000銘柄以上で構成
- 日経平均は株価平均型/TOPIXは時価総額加重平均型
- 日経平均は値がさ株/TOPIXは時価総額の大きい企業の影響が大きい
- 日経平均の方が特定の銘柄の影響を受けやすい
- 近年のパフォーマンスは日経平均の方が良いがTOPIXの方が安定
日経平均とTOPIXはともに日本株式市場を代表する指数ですが、それぞれの指数は対象とする銘柄やその数、算出方法が異なります。
基本的には似たような動きをしますが、投資対象が違う分、明確な差もあるので、投資先を選ぶ際にはしっかりと特徴を把握するようにしましょう。
もちろん、どちらか一方に絞らずに日経平均とTOPIXの両方に分散させるのも一つの手段です。手軽に、どちらにも投資できるのも、少額から簡単に投資できるインデックスファンドのメリットです。
今回紹介した日経平均とTOPIX以外にも、国内外の株式市場を参考にしたインデックスは様々あります。
人気のインデックスファンドですが、投資先を選ぶ際には、
- そのインデックスが何によって(どんな構成銘柄)で決まるのか
- 何の影響を受けやすいのか
- どんな特徴があるのか
などをしっかりと調べてから検討するようにしましょう。