不動産投資の概要については①の以下の記事をご参考ください。
不動産投資に関する7つの税金
不動産投資において「税金」は非常に重要なポイントです。
よく「不動産投資をすることで節税効果が期待できる」など耳にすることもありますが、実際にはどんな効果が期待できるのでしょうか。
ここではまず節税について考える前に、不動産投資において重要な以下の7つの税金について解説していきたいと思います。
- 不動産取得税
- 登録免許税
- 印紙税
- 所得税・住民税
- 固定資産税
- 都市計画税
- 所得税(譲渡税)
不動産取得税
不動産取得税は、「不動産」と呼ばれる土地や建物を売買取得した際に課される税金です。不動産取得税は地方税であり各都道府県に納税します。
「売買取得」が条件なので、相続で取得した場合は対象外です。
不動産取得税は、不動産の「課税標準額」を基準に算出されます。
不動産所得税の、算出基準(課税標準額)は不動産の時価をそのまま適用するのではなく「固定資産税評価額」が適用されます。
※建物については取得時の金額の約5割、土地については取得時の金額の約7割程度が目安です。
土地と建物について分けて計算され、税率はそれぞれ以下の通りです。
- 土地:課税標準額 × 3%
- 建物:(住宅用)課税標準額 × 3%
(非住宅用、投資用)課税標準額 × 4%
詳細は東京都主税局<税金の種類><不動産取得税><不動産取得税計算ツール>にてご確認ください。
また、自治体によっては軽減措置がある場合もあるので、不動産を取得する際には各自治体の税制についてきちんと確認するようにしましょう。
登録免許税
登録免許税は、取得した不動産の所有権を法務局に登記する際に納める税金です。
登記の内容に倒して、それぞれ税率が設定されており、不動産の評価額にそれぞれの税率をかけて算出されます。
登録免許税の税率
課税標準 本則の税率 軽減税率 所有権移転登記
(土地の売買)不動産の価額 2.0% 1.5% 所有権保存登記
(新築建物の購入)不動産の価額 0.4% 0.15% 所有権移転登記
(中古建物の売買)不動産の価額 2.0% 0.3% 抵当権設定登記 借入額 0.4% 0.1% 抵当権抹消登記 不動産1個あたり 1,000円 1,000円 ※「軽減税率」は、住宅用家屋について、2017年3月31日までの取得に適用されます。
※「軽減税率」の適用条件は以下の通りです。新築住宅について
- 個人の住宅用家屋(マイホーム)であること
- 床面積(登記簿面積)が50㎡以上であること
- 新築又は取得後1年以内に登記されたもの
中古住宅について
- 個人の住宅用家屋(マイホーム)であること
- 床面積(登記簿面積)が50㎡以上であること
- 取得後1年以内に登記されたもの
- 築後25年以内(木造は20年以内)のもの又は一定の耐震基準に適合するもの
印紙税
不動産購入時に締結される「売買契約書」や「金銭消費貸借契約書」は、印紙税法によって「課税文書」定められた文書(第1号文書)であり、そこに記載されている契約金額に応じて、印紙税を納めなければなりません。
不動産の売買契約に関する印紙税は、以下の通り定められています。
- 1万円未満:非課税
- 10万円以下:200円
- 10万円〜50万円以下:400円
- 50万円〜100万円以下:1,000円
- 100万円〜500万円以下:2,000円
- 500万円〜1千万円以下:10,000円
- 1,000万円〜5,000万円以下:20,000円
- 5,000万円〜1億円以下:60,000円
- 1億円〜5億円以下:100,000円
- 5億円〜10億円以下:200,000円
- 10億円〜50億円以下:400,000円
- 50億円〜:600,000円
- 契約金額の記載のないもの:200円
印紙税についても、「不動産譲渡契約書」については、令和2年4月1日から令和4年3月31日までに作成されるものについて、軽減措置が適用されます。
軽減税率は以下の通りです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円〜50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円〜100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円〜1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円〜5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円〜1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円〜5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
5億円〜10億円以下 | 200,000円 | 160,000円 |
10億円〜50億円以下 | 400,000円 | 320,000円 |
50億円〜 | 600,000円 | 480,000円 |
詳しくは国税庁の案内『「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について』をご確認ください。
所得税・住民税
「所得税」と「住民税」は個人の所得に対して課される税金です。
一般に、所得税が課せられるものには、給与などに加えて、預貯金の利子や株の配当金などが挙げられますが、不動産を賃貸して得られる家賃収入もまた「不動産所得」という区分として、所得税の課税対象となります。
余談ですが、所得税の課税対象とならない収入もあります。宝くじの当選金や生活保護の給付、損害保険の賠償金などは課税の対象外です。
不動産所得は「総合課税」であり、給与などの所得と合わせた、所得全体に対して課税され、毎年納税する必要があります。
不動産所得は、単純に「家賃収入」にだけ課されるものではありません。
家賃収入をはじめとした総収入から、不動産の維持管理にかかる必要経費を差し引いた金額=「実質的な収入」が所得税の課税対象です。
収入には「家賃収入」のほか「更新料」や「駐車場代」などが該当し、必要経費には「管理費」や賃貸の入れ替えの際に発生する「工事費用」や「リフォーム費用」、「減価償却費」など、不動産を維持管理する上で必要な経費といったものが含まれます。
例:
- 家賃収入:420万円
- 駐車場代:36万円
- 管理費用:28万円
- 借入金金利:86万円
- 減価償却費:200万円
➡︎ 不動産所得:420万+36万円ー(28万円+86万円+200万円)=142万円
元々の年収が年収が1,000万円の場合、合計「1,142万円」がその年の所得税及び住民税の課税対象額になります。
不動産投資では損益通算が可能です。
不動産投資が赤字の場合、給与所得と不動産所得(損失)が損益通算され、課税対象の所得額が元々の給与所得より下がることもあり、その場合は、翌年度に支払う所得税・住民税額が低くなる場合があります。
特に初年度は、初期費用等によって一般的に赤字になる傾向が高くなるため、給与が変わっていなくても、納税額が抑えられ、手取りが増えることがあります。
固定資産税
固定資産税は、不動産を所有する個人や法人に対して納める税金です。
不動産取得税と同様に地方税であり、役所から送付される「納税通知書」を元に各市町村に納税します。
固定資産税は「固定資産税評価額 × 1.4%」で計算します。
※税率は1.4%が標準ですが、市町村によって異なるケースもあります。
固定資産税は、その年の1月1日時点で建物や土地を所有している人に対して課せられます。
そのため、売買などで所有者が変わった場合には、前所有者の方が納めてるケースが多く、契約時に日割り計算をして双方で負担するのが一般的です。
固定資産税にも軽減措置があり実際に購入金額の1.4%も支払うことはほとんどありません。
まず、納税額の算出基準となる「固定資産税評価額」ですが、これは実際の購入金額の7割程度が目安になります。
また、マンション・アパート経営の場合、住宅用地の課税標準額は以下のように軽減されます。
- 住戸1戸につき200㎡以下の部分(小規模住宅用地):1/6
- 住戸1戸につき200㎡を超える部分(一般住宅用地):1/3
「1戸についき200㎡」が条件なので、よほどの大型マンションでもない限り、全ての部屋に対して適用されることも珍しくありません。
例えば、1億円の物件(30~40㎡の1Rを5部屋)を購入した場合の、固定資産税は以下のようになります。
※あくまでも参考値です
- 物件購入価格:1億円
- 固定資産税評価額:7,000万円 = 1億円 × 7割
- 課税標準額(軽減措置): 1,166万円 = 7,000万円 × 1/6
- 固定資産税:16.3万円 = 1,166万円 × 1.4%
このように実際には、物件の購入価格の0.3%~1.0%程度になることが一般的です。
さらに、新築物件の場合
- 令和4年3月31日までに新築
- 床面積が50㎡以上280㎡以下
の条件を満たせば、通常3年間この固定資産税が半額になります。
都市計画税
都市計画税は市区町村の固定資産台帳に登録されている建物や土地の所有者に対して課せられる税金です。
都市計画法の市街化区域内にある建物や土地のみが対象で、すべての不動産が課税対象になるわけではありません。
都市計画税の課税対象かどうかは、自治体の窓口や不動産会社で確認できます。
都市計画税も固定資産税と同様に「固定資産税評価額 × 税率」で計算します。
税率の上限は0.3%に設定されていますが、エリアにより税率が異なるので、きちんと各自治体の税率を確認するようにしましょう。
都市計画税にも、固定資産税と同様に軽減措置があります。
- 200㎡以下の部分(小規模住宅用地):1/3
- 200㎡を超える部分(一般住宅用地):2/3
と、固定資産税とは軽減率が少し異なるので注意してください。
所得税(譲渡税)
家賃収入と経費に応じて毎年支払う所得税・住民税とは別に、物件の売却時にも特別な所得税・住民税(合わせて「譲渡税」)を納める必要があります。
こちらは総合課税ではなく「分離課税」なので、給与などと所得と合算するのではなく、売却時の売却益に応じて納税します。
譲渡税は「譲渡所得=譲渡収入ー(物件価値+譲渡費用)」を元に、
- 短期譲渡の場合:譲渡所得 × 39%(所得税30% + 住民税9%)
- 長期譲渡の場合:譲渡所得 × 20%(所得税15% + 住民税5%)
で算出されます。
短期譲渡or長期譲渡の判断は、物件を売却する年の1月1日時点で、その物件を保有している期間が5年を超えているかどうかで決まります。
短期譲渡か長期譲渡かで、税金が約半額になるので注意が必要です。
また、譲渡所得を大きく左右する「物件価値」は、その物件を購入した金額ではなく、そこから減価償却費によって棄損した価値になります。
不動産投資に関する税金まとめ
ここまで解説したきた各種税金についてまとめると以下のようになります。
課税対象基準 | 頻度 | ポイント | |
不動産取得税 | 固定資産税評価額 | 購入時 | 「売買取得」が条件 |
登録免許税 | 固定資産税評価額 | 購入時 | |
印紙税 | 取引する不動産の価格 | 購入時 | |
所得税・住民税 | 不動産投資による収益 | 毎年 | 給与などの収入と合わせて算出する「総合課税」 |
固定資産税 | 固定資産税評価額 | 毎年 | |
都市計画税 | 固定資産税評価額 | 毎年 | |
所得税・住民税 (譲渡税) |
譲渡所得(売却時の収益) | 売却時 | 短期譲渡と長期譲渡で税率に大きな差がある |
これらの各種税金以外にも、「消費税」や「個人事業税」など、諸条件を満たす人に限り納めなければならない税金もあります。
不動産投資に関わる税金は複雑な部分もあるので、詳細については物件購入を検討する際にきちんとプロに相談・確認するようにしましょう。
不動産投資と節税
よく「不動産投資は節税効果がある」などという人がいますが、不動産を持つことで特別大きな節税効果があるわけではありません。
不動産投資と節税については
- 損益通算/費用計上によって、所得を抑えることができる(こともある)
- 総合的に支払う税金を抑えるような工夫ができる(した方がよい)
という2点があります。
1つめの「所得を抑える」効果ですが、これは不動産投資では減価償却や金利の返済など、様々な支払いを費用計上することで、不動産投資による実質的な収入を小さくできることに関係します。
費用計上する金額が大きくなれば、不動産投資は赤字になることもあるので、その場合、給与と合わせて考える総合課税の所得税・住民税は支払いを抑えることができる場合もあります。
もちろん、不動産投資で十分な利益が得られている場合、収入が増えているのに納税額だけが少なくなるということはほとんどありません。
所得が抑えられる効果は、もし赤字になった場合でも単純な損失にはならないというメリット程度と考えても良いでしょう。
そして、もう1つのポイントが「総合的に支払う税金を抑える工夫」です。
例えば、毎年の減価償却費が大きくなれば、その分所得は少なくなるので、毎年の所得税・住民税の納付額は小さくなります。
ですが、減価償却費が大きければ大きいほど、物件の価値は下がり、売却時の所得譲渡(譲渡収入ー物件価値)は大きくなります。
譲渡所得が大きくなれば、その際に支払う譲渡税(分離課税の所得税+住民税)は増えるため、毎年納める税金と売却時に納める税金とを合わせて考慮する必要があります。
また、譲渡税は、物件の保有期間によって大きく左右されるため、売却の際には毎年の利益/損失と、その際にかかる税金とを総合的に考慮して、最も負担の小さくなるタイミング等を検討するべきでしょう。
このように、費用計上の仕方や、売却のタイミングなどによって、不動産投資にかかる税金をなるべく抑えるようにした方がよいというのが、いわゆる「節税」という謳い文句で広まっていると考えられます。
売却のベストなタイミングなどは、物件や状況によって様々なので、一概に「〇〇にすると良い」などとは言えません。
不動産投資をする際には、物件だけでなく、税金等についても詳しいプロに相談することをおすすめします。