ヘッジファンド選びは資産運用のキモ
まとまった資産を運用する人にとって「ヘッジファンド」は非常に有効です。
ヘッジファンドは、投資のプロであるファンドマネージャが率いる、資産運用を専門事業とする会社・組織です。
私たち投資家は、ヘッジファンドに出資(投資)し、資産を預けることで、その運用に相乗りし、手数料と引き換えに投資リターンを得ることができます。
元々富裕層や資産家にのみ解放されていた、超ハイエンド向けの資産運用のものでしたが、少しハードルを下げたファンドも増えてきており、ある程度の収入・資産がある人にとっては現実的な選択肢になってきました。
少しずつ手の届くものも増えてきたとはいえ、それでも「最低1,000万円」程度の募集のハードルはあります(元々が「億」単位だったことを考えれば…)
そんなヘッジファンドですが、高い収益性が期待できる反面、情報の面で乏しく
「どんなファンドがいいのかわからない」
「そもそも何を見てファンドを選べばいいのかわからない」
といった意見も数多く見られます。
そこで今回はそんな方に向けて「ヘッジファンドを選ぶときに見るべきポイント・注意するべきポイント」について解説していきたいと思います。
必ずチェックした方が良いポイントだけでなく、初心者がついつい目が眩んでしまいがちな「勘違いポイント」についても併せて解説していくので、これからファンドでの運用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
初心者が勘違いしがちなポイント
初めてヘッジファンドでの投資を考えている人、ヘッジファンドを選んでいる人がついつい気になってしまうのが「パフォーマンス」や「手数料」といったわかりやすい指標でしょう。
「年20%以上のパフォーマンス!」
「手数料0.1%の低コスト!」
「あの有名人が、こんな経歴、肩書きの人が支援している」
などのパッと目を引くセールスポイントについつい飛びついてしまいたくなる気持ちもわかりますが、決してこういった会社に飛び付いてはいけません。
「私たちはすごい!」「私たちは大丈夫ですよ!」と声高らかに掲げているファンドほど怪しいものはありません。
パフォーマンスを表面的に見てしまう
「年20%!3年で資産を2倍!」などと聞いて、「すごいパフォーマンスだ!ハイリターンが期待できるかも!」と飛びつきたくなる人は注意してください。
もちろんそれらのパフォーマンスにウソはないのかもしれませんが、「たまたま相場が良かっただけ」「ハイリスクな賭けに勝っただけ」といった、一過性のもので継続的に期待できるリターンではないかもしれません。
またそのように異常とも言えるハイリターンを記録しているファンドは、相応のリスクを伴ったハイリスクな運用をしていることも十分に考えられます。
資産運用において重要なのは、今後の期待パフォーマンスであり過去の実績ではありません。
ファンドのパフォーマンスを確認するときは、表面的・一時的な数字だけではなく、トラックレコードのようにこれまでの推移から将来を予測できるようなデータを確認するようにしましょう。
単純な「平均利回り」だけでなく、いかに運用が「安定」しているかも重要です。
同じ「平均10%」でも
- A:+8〜12%程度で推移しているファンド
- B:+30%のときもあるけれど、ー10%の時もあるファンド
の2つでは、Aの方がより確実に「10%」のリターンが期待できるのは明らかです。
また、市場が好調な時だけでなく、暴落時(リーマンショック(2008年)、コロナショック(2020年)など)にどのようなパフォーマンスを出しているかを確認することも重要です。
厳しい局面をどのように乗り越えたかを見ることでファンドの実力を測ることができます。
手数料など目先のハードルに飛びつく
パフォーマンスに次いで多くの人が気にするのが「手数料」でしょう。
ファンド側も、特に手数料が比較的安いところの場合、「手数料わずか〇〇%」などと大々的にPRしていることがあります。
ですが、そもそも手数料とはパフォーマンスと併せて考えるべき指標の一つであり、それ単体では何の意味も持ちません。
自分にとってわかりやすい目先の数字に逃げることなく、より本質的な側面で評価するようにしましょう。
例えば、
- A:パフォーマンス10%、手数料5%(パフォーマンスの50%)
→リターン5% - B:パフォーマンス5%、手数料0.1%(パフォーマンスの2%)
→リターン4.9%
の2つのファンドを比較したときに、より手元のリターンが大きなAのファンドを選べない人はそもそも投資に向いていません。
もちろんAのファンドの方が手数料は高く、損をした気になる気持ちになるのもわかります。
ですが、投資において感情は余計な要素であり、きちんと冷静に評価することが重要なのです。
また、最近の調査では、より手数料の高いファンドの方がリターンも大きくなるということが明らかになっています。
やはり優秀(好成績)なファンドマネージャを起用するとそれに適した報酬が必要になりますし、より高い手数料でもそれ以上のリターンを投資家に還元しているファンドが生き残っている証とも捉えることができます。
裏を返せば、手数料の安さをウリにしているファンドは、本質である運用で成果を出す自信がない二流と捉えることもできます。
詳しくはこちらの記事でも解説していますが、このデータからも手数料の大小でファンドを評価してしまうのは誤りです。
パッと見の華やかさや権威に目が眩む
メディアへの露出や、権威ある(ありそう)な人たちの支援、豪華でおしゃれなオフィス、社長の交友関係など、華やかでいかにも「儲かっていそう」なアピールをしているファンドには注意してください。
本来、ファンドの主事業である「投資・運用」にPRは不要であり、そういったコストはむしろムダ(=会社の収益性を損なうもの)です。
にも関わらず、権威や経歴、人間関係などばかりを全面に押し出しているファンドは、得手して中身がないこともしばしば見受けられます。
特に日本人が陥りがちな失敗ケースですが、ファンドの表面的な情報に目がくらまないように注意が必要です。
金融史上最悪の投資詐欺事件とも言われている「バーナード・マドフ事件」では、NASDAQ株式市場の会長を務めていたマドフ氏を筆頭に錚々たる権威が名を連ねています。
また後に被害者となる投資家にも、メジャーリーグ球団ニューヨークメッツのオーナーや、映画監督のスティーブン・スピルバーグ、野村ホールディングス、あおぞら銀行といった日本の金融機関まで含めた、数々の著名な投資家や金融機関が名を連ねており、肩書きや権威では信憑性は得られないことがよくわかる事例です。
なお、この事件の被害総額は650億ドル(約7兆円)とされています。
ヘッジファンドを選ぶときに見るべき3つのポイント
それではヘッジファンドを選ぶ際にチェックするべき具体的な「3つのポイント」を整理して解説してきたいと思います。
ヘッジファンドを見極める際に重要なのは
- 投資理念、戦略、手法
- 実績、パフォーマンスの”推移”
- 運用実態
の3点です。
投資理念・戦略・手法
「投資・運用」といえば、真っ先にファンドのパフォーマンスが気になる人も多いでしょうが、まずはそのファンドがどんな運用をしているのか(投資理念・戦略・手法)を確認するようにしましょう。
そのファンドがどんな理念・哲学で投資しているのか、どんな目標を持って投資しているのかというスタンスは、そのファンドの「リスク志向」や「戦略」に直結します。
一口にファンドと言っても、様々な性質のものがあります。
「ガンガン投資して利益を狙う」
「リスクを抑えてコツコツと確実に資産を積み上げる」
「将来性の高い魅力ある未来に投資する。収益は二の次」
など、そのスタンスや考え方は様々です。
ファンドの投資理論・スタンスは、運用手法やリスクに直結します。
自分自身が求める運用(高い収益が欲しいの or リスクを抑えて安全に運用したいなど)にあったファンドを選ぶようにしましょう。
実績・パフォーマンスの”推移”
次に重要なのが「パフォーマンス」です。資産を増やす目的で運用するのであれば、このポイントは外せません。
ですが、先述のように表面的な数字を見て「平均年20%の方が10%より高くて良い!」などと安易に判断しないよう注意が必要です。
ファンドの実績・パフォーマンスを確認するときには、必ずこれまでの推移を見て、パフォーマンスがどの程度安定しているのかを確認するようにしてください。
「たまたま儲かっているファンド」なのか、「実力があってしっかりと結果を残しているファンド」なのかは、ファンドのこれまでの推移を見れば明らかです。
より振れ幅(ボラティリティ)の少ないファンドの方が優秀であることは疑いようがありません。
また、先述の通り「下げ局面」での成績も注意して見てみましょう。
景気が良いときに、大きく張って儲けることは誰でもできますが、景気の悪いときにリスクを回避し少しでも利益を残しているファンドは、相場を読む力とそれをうまくコントロールする実力が備わっています。
運用実態
最後に確認するべきは「実際にきちんと運用がされているか(怪しくないかどうか)」の確認です。
これは、先述のように「〇〇協会」や「〇〇顧問」といった肩書きで判断せずに、その会社の実態(投資先)を具体的に確認しましょう。
ファンドの事業の根幹に関わるため、その時のポートフォリオなどを知るのは難しいでしょうが、過去の投資事例などは詳しく話を聞けば教えてくれるケースもあります。
ファンド側の説明と、実際にネットなどから得られるニュースなどを比べれば、その会社が本当に投資をしていたかどうかを確認することができます。
また、ヘッジファンドのように数十億〜数百億円の規模の資金を運用する場合、特定の会社(投資先)の大株主になるケースも少なくありません。
その場合、会社の公的文書である決算資料や大量保有報告書等に、大株主として名前が残ります。
公的文書は金融庁の管理する『EDINET』というシステムで、誰でも簡単に検索・閲覧できるので、興味のあるファンドについてはこちらで調べてみるのも良いでしょう。
まとめ – ファンド選びのポイント –
ここまで解説してきた、ヘッジファンドを選ぶ際に確認するべきポイント・注意点をまとめると以下のようになります。
①
➡︎ パフォーマンスは推移を確認する
②
➡︎ 投資に対する考え方や戦略・手法を見る
③
➡︎ 過去の事例など投資の実態を確認する
自分に合った優秀なファンドを見極めることができれば、資産運用はグッとラクになりますし、安定して高い収益を期待することもできます。
ファンド選びの際には、安易にわかりやすいものに惑わされることなく、より本質的に意味のあるもの・価値のあるものを見極めるように注意してください。