今回はSBI・V・S&P500インデックス・ファンドについて解説します。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、SBIアセット・マネジメント株式会社が運用する投資信託「SBI・Vシリーズ」の中でも圧倒的1位の純資産総額を誇る、超人気インデックスファンドです。
この記事では、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの、概要や特徴、メリット・デメリットなどの解説だけでなく、投資対象が同じ他ファンド(類似ファンド)とのパフォーマンス比較から、SBI・Vの良し悪しとおすすめ具合についても言及していきます。
米国株への投資や新NISAでの運用商品に迷っている人は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、バンガードのS&P500をベンチマークとするETFに投資をする投資信託です。
信託報酬が年0.0938%と最安値圏で、新しいNISAのつみたて投資枠の対象商品になっているので、長期投資で資産形成を考えている人におすすめのファンドです。
全米株式を対象とするインデックスファンドの中でも、マグニフィセント・セブンの比率が高く近年のパフォーマンスは良いが分散投資の観点では注意が必要。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの概要
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、米国のS&P500指数(円換算ベース)に連動する運用を目指すインデック型の投資信託です。
インデックスファンドとは、特定のインデックス(指標)に連動するように運用される投資信託です。代表的なインデックスには、TOPIX(日本株)、日経平均/日経225(日本株)、S&P500(米国株)、NASDAQ(米国株)などがあります。
SBIアセット・マネジメント株式会社が運用する投資信託は全72本あり、SBI・Vシリーズ(全10本)はその中の1部です。
SBI・Vシリーズは、米国の大手運用会社バンガード「Vanguard」を通じて運用するインデックスファンドのシリーズで、SBIに限らず、投資信託全体の中でも人気があります。
今回取り上げる、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、そんなSBI・Vシリーズの中でもダントツの純資産総額(約1兆3,387億円)を誇る、定番にして最人気の投資信託です。
商品概要
- 単位型・追加型:追加型
- 投資対象地域:北米
- 投資対象資産:その他資産(投資信託証券(株式))
- 決算頻度:年1回
- 投資形態:ファミリーファンド
- 為替ヘッジ:なし
- 対象インデックス:S&P500指数(円換算ベース)
- 信託期間:無期限
コスト
- 購入時手数料:なし
- 信託財産留保額:なし
- 運用管理費用(信託報酬):年0.0938%(税込)程度
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの特徴
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの主な特徴は以下の3つです。
- 米国株式市場の値動きに連動する投資成果を目指す
- マザーファンドがETFに投資
- 為替ヘッジを行わない
米国株式市場の値動きに連動する投資成果を目指す
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、ファンド名にあるように、S&P指数に連動することで米国株式市場の値動きに連動した投資成果を目指すファンドです。
S&P500指数は、ニューヨーク証券取引所、NASDAQなどに上場している銘柄から、主要な500社を時価総額で加重平均したもので、米国株式市場の時価総額の80%をカバーしています。
つまり、これ1つに投資するだけで、米国株式市場全体に分散投資するのと同じような成果が期待できます。
マザーファンドがETFに投資
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの投資形態は「ファミリーファンド形式」であり、ファンド自体が直接個別の株式に投資するわけではありません。
引用:投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日2023.12.15|SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
それだけであれば、よくある投資信託の一種ですが、SBI・Vシリーズはここからが一味違います。
一般的なファミリーファンド方式の投資信託は、マザーファンドが株式等に直接投資して運用しますが、SBI・V・S&P500は、マザーファンドが「バンガードS&P500 ETF」に投資し、そのETFが株式で運用します。
つまり、2重どころか、3重に投資するスキームとなっており、そのそれぞれに対して信託報酬が発生します。
そのため、SBI・V・S&P500では、ファンドのコスト0.0638%に加えて、ETFのコスト0.03%が加わり、実質的に年0.0938%の信託報酬がかかってきます。
為替ヘッジを行わない
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、為替ヘッジを行わないためドルに対して円安・円高の影響を受ける為替変動リスクがあります。
円安は基準価額を押し上げる要因になり、円高は基準価額を押し下げる要因になります。
他のファンドですと、為替ヘッジなし/ありの両方をラインアップしているものもありますが、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、為替ヘッジなしのみです。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドに投資するメリット
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドに投資するメリットは大きく以下の3つです。
- 手軽にバンガード・S&P500 ETFに間接投資ができる
- 運用コストが安い
- 新NISAのつみたて投資枠の対象商品
手軽にバンガード・S&P500 ETFに間接投資ができる
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドに投資するメリットの1つ目は、手軽にバンガード・S&P500ETFに投資ができる点です。
バンガード社は、米国ペンシルベニア州バレーフォージに本社があり、運用資産総額は約7.2兆米ドル(2022年12月末現在)を誇るインデックス運用最大手の資産運用会社です。です。
バンガード・S&P500 ETFは、米国籍のETF(上場投資信託)のため、海外ETFとして国内証券会社から直接投資もできますが、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドを通して間接投資をすることで、金額指定の購入ができたりファンド内での再投資が効率よく行えたりと、より手軽に米国株への投資をすることができます。
運用コストが安い
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドのメリットの2つ目は、運用コストが安い点です。
先ほど2重コストになっている点を説明しましたが、それを踏まえてもSBI・V・S&P500の手数料は低コストです。
一般的に低コストだと言われているインデックス型の株式投資信託の平均信託報酬は、年0.37%(2023年12月末)ですが、SBI・V・S&P500は年0.0938%程度と、平均の約1/4のコストで済みます。
当然のように、購入時手数料と信託財産留保額は0円なので、他のインデックスファンドと比較してコスト面を心配する必要はありません。
新しいNISAのつみたて投資枠の対象商品
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドのメリットの3つ目は、新しいNISAのつみたて投資枠の対象商品になっている点です。
NISAの枠内で投資することができれば、約20%の税金が非課税になる分、投資効率は25%もアップします。
また、成長投資枠・つみたて投資枠の2つがある新NISAにおいて、非課税保有限度額1800万円をフルに活用できるつみたて投資枠の対象商品です。
つみたてNISAの対象商品は、金融庁のより厳しい審査を通じて選定されたものなので、お墨付きがもらえているという点でも、安心して投資することができます。
新NISAについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドに投資するデメリット
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドのデメリットは主に以下の3つが考えられます。
- 直接バンガード・S&P500ETFに投資した方が低コスト?
- 業種に偏りがある
- 分配金が期待できない
直接バンガード・S&P500 ETFに投資した方が低コスト?
ファンドの特徴でも説明しましたが、ファミリーファンド形式であるSBI・V・S&P500は、マザーファンドが、さらにETF(バンガード・S&P500)に投資します。
最終的に投資するものがわかっているので、ETFに自分で投資すれば、コストを1/3程度にまで抑えることができます。
バンガード・S&P500ETFの管理報酬(信託報酬)等は年0.03%程度。
ただし、バンガード・S&P500ETFは外国ETF(上場投資信託)のため、国内証券会社に支払う売買手数料や、外国証券取引口座の口座管理料、購入や解約時に為替手数料などが別途発生します。また、為替リスクも発生するため注意が必要です。
パッと見の手数料は抑えることができますが、余計な手間が発生したり、元々は無かったコストやリスクが発生する場合もあるので、投資初心者の方などは、SBI・Vを通じて投資することをおすすめします。
業種に偏りがある
これは、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドに限ったことではありませんが、S&P500指数の中身には、業種に偏りがあります。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの月次レポート(2023年12月29日基準)に載っているバンガード・S&P500ETFの組入上位10銘柄と組入上位業種を見ると、合計時価総額の3割弱を上記7社が占めています。また、業種では情報技術が同じく3割弱です。
出典:月次レポート 2023年12月29日基準|SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
上位7つを占めている、
- アップル
- マイクロソフト
- アルファベット(グーグル)
- アマゾン・ドット・コム
- メタ・プラットフォームズ
- エヌビディア
- テスラ
は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれ、GAFAにマイクロソフト、テスラ、NVIDIAが加わった、今アメリカ経済・世界を牽引する巨大企業です。
S&P500は、米国株全体に分散投資できるとされているものの、これらの銘柄・業種の影響を受けやすい指数になっており、分散効果から見るとデメリットといえます。
分配金が期待できない
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドでは分配金が期待できません。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、2019年9月26日に運用を開始して4回決算期がありましたが、全ての期で分配金は0円でした。
今後についてもこの傾向は続くと思われます。定期的な分配金を受け取ることを期待して投資する人にはデメリットです。
逆を見れば、長期的に投資した資産を増やしたい人にとっては高い複利効果が期待できるので分配金を支払わない運用はメリットとなります。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの実績
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの設定来の基準価額と純資産総額の推移は、下のグラフのとおりです。
一時下落することもありましたが4年間(2019/9~2023/9)で見ると右肩上がりです。純資産総額も順調に増加しています。
- 基準価額:22,229円
- 純資産総額:1兆2,255.63億円
※2023年12月29日時点
出典:月次レポート 2023年12月29日基準|SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
期間収益率は、すべての期間でプラスに推移し、ほとんどの期間でベンチマークのS&P500指数(円換算ベース)を上回っています。
出典:月次レポート 2023年12月29日基準|SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドと他ファンドの比較
ここまでSBI・V・S&P500インデック・ファンド自体を見てきましたが、ここから先は他のファンドとも比較しながら見ていきましょう。
ここでは
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド
の2本のインデックスファンドを挙げます。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)は、S&P500指数をベンチマークとしており、楽天・全米株式インデックス・ファンドは、全米株式の中でも「CRSP USトータル・マーケット・インデックス (円換算ベース)」をベンチマークとしています。
ベンチマークとするインデックス
- SBI・V・S&P500インデックス・ファンド:S&P500
- eMAXIS Slim米国株式(S&P500):S&P500
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド:CRSP USトータル・マーケット・インデックス (円換算ベース)
CRSP USトータル・マーケット・インデックス は、米国株式市場の大型株から小型株までを対象に投資可能銘柄のほぼ100%をカバーした時価総額加重平均型の株価指数です。S&P500指数よりも幅広い銘柄から指数を算出しています。
運用方法についてですが、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドと楽天・全米株式インデックス・ファンドはマザーファンドを通じてETFに投資しているのに対し、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)はマザーファンドが直接S&P500関連銘柄に投資を行っています 。
ファンド名 | SBI・V・S&P500 インデックス・ファンド |
eMAXIS Slim米国株式 (S&P500) |
楽天・全米株式 インデックス・ファンド |
カテゴリー | 国際株式・北米 |
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ベンチマーク | S&P500 | CRSP USトータル・マーケット・インデックス (円換算ベース) | |
スキーム | ETFに投資 | 直接投資 | ETFに投資 |
基準価額 | 24,174円 | 26,421円 | 26.889円 |
純資産総額 | 1兆3,731億円 | 3兆5,3212億円 | 1兆3,182億円 |
販売手数料 | 0% | 0% | 0% |
信託報酬等(税込) | 0.0938% | 0.09372% | 0.162% |
運用年数 | 4年 | 5年 | 5年 |
リターン1年 | 34.38% | 34.63% | 34.37% |
リターン3年(年率) | 22.12% | 22.26% | 20.43% |
標準偏差1年 | 12.43 | 12.48 | 13.31 |
標準偏差3年 | 15.63 | 15.70 | 16.03 |
運用会社 | SBIアセット | 三菱UFJ | 楽天 |
ソース(2024/2/5時点)
:SBI・V・S&P500インデックス・ファンド-ファンド詳細|投資信託[ウエルスアドバイザー]
:eMAXIS Slim米国株式(S&P500)-ファンド詳細|投資信託[ウエルスアドバイザー]
:楽天・全米株式インデックス・ファンド-ファンド詳細|投資信託[ウエルスアドバイザー]
信託報酬等のコスト面では、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)にはほとんど差がありませんが、楽天・全米株式が2ファンドに比べて高めです。
しかし、インデックス型の株式投資信託の平均信託報酬年0.37%に比べると半分以下のコストです。
1年のリターンは、3ファンドとも同じような収益率ですが、3年のリターンでは、楽天・全米株式が、SBI・V・S&P500インデックス・ファンドとeMAXIS Slim米国株式(S&P500)に比べ若干低いリターンになっています。
これは、近年のマグニフィセント・セブンの時価総額の伸びが影響していると考えられます。
S&P500指数(SBI・V、eMAXIS Slim)は、CRSP USトータル・マーケット・インデックス(楽天)よりも、相対的にマグニフィセント・セブンの比率が高く、2023年にこの7社が年間で6割近く時価総額を増やした影響が出ていると考えられます。
ただし、今後もこの傾向が続くか予想はできません。米国株への投資でより分散効果を高めたいと考えるのであれば、楽天・全米株式への投資も一案です。
まとめ
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドの概要や特徴、メリット・デメリットと実績について確認し、類似の投資信(eMAXIS Slim米国株式(S&P500)、楽天・全米株式)との比較も行いました。
SBI・V・S&P500インデックス・ファンドは、海外ETFのバンガード・S&P500ETFを使い勝手よく利用したい人(金額指定のつみたて購入やファンド内での分配金再投資など)におすすめの投資信託と言えます。
分配金の定期的な受け取りはできませんが、つみたてNISAにも対応しており、長期的に資産形成をしたい人や、低リスク・低コストで手間なく投資を始めたい投資初心者にもおすすめです。