資産運用の基礎知識と注意点

資産運用とは?投資ポイントとおすすめの制度を紹介

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「資産運用」という言葉をニュースなどでよく聞くことはあっても、実際に何をしたら良いのか分からない方が多いのではないでしょうか?

資産運用には様々な方法がありますが、具体的にどんな運用方法があり、それぞれの特徴やポイントを知った上で、ご自身に合ったものを選ぶことが重要です。

 

本記事では、「資産運用とは何か」「なぜ必要なのか」を解説し、おすすめの資産運用の方法をご紹介していきます。

この記事を読んで、資産運用にはどういったものがあるのかを知っていただき、ご自身の資産運用のイメージをしてみてください。

資産運用とは

資産運用とはご自身が持っているお金(=資産)を運用することで効率よく資産を増やすことを言います。

資産運用は、貯めることを重視した「貯蓄」と、増やすことを重視した「投資」の大きく2つに分けられます。

 

貯蓄において重要なのは「いかに支出を控えるか=お金を節約するか」でしょう。固定費の見直し、普段の生活で無駄遣いを無くすことなど既に取り組まれている方が多いかもしれません。

一方の「投資」についてはどうでしょうか?「資産運用では投資が重要」ということを頭ではわかっていても、なかなか実践できていなかったり具体的なことまできちんと理解できていない人も多いかもしれません。

今回の記事では普段教わることが少ない「投資」について詳しく解説していきます。

 

なぜ資産運用(投資)が必要なのか

資産運用の中でも、特に「投資」が必要な理由とは、運用をしなければ持っている資産を守れないからです。

なぜ持っている資産を守ることができないのでしょうか。それは、昔と比較してお金を取り巻く環境が大きく変化しているからです。

その中でも「インフレ」と「銀行の金利」に重点をおいて解説します。

 

少しずつインフレしている

少しずつですがインフレしていることが、投資/資産運用をしなくてはいけない理由になります。

インフレとは「物価が上がること」です。日本は10年前と比較すると1.2〜1.8倍物価が上がっています。

品目 1996年時の価格 2016年時の価格
カップラーメン 81円 151円
ガソリン 1ℓ 105円 124円
緑茶 100g 320円 497円

出典:総務省「小売物価統計調査」

 

昔の値段と比較すると分かりやすいのですが、あの時代はこんな値段で買えたの?と思うものもあるかと思います。

 

世界的な動向もありますが、日本政府と日本銀行は「物価安定の目標として消費者物価の前年比上昇率2%」を定めており、つまり安定的に年2%インフレさせることで経済成長を図っているのです。

極端なインフレは経済破綻を招きますが、物価が上がることは経済的に成長していることの表れでもあるのです。

反対にデフレに陥ると経済は悪化します。

デフレとは簡単に言うと「物価が下がること」で、モノの値段が下がるならいいのでは?と思われがちですが、モノの値段が下がれば会社の業績も下がり、会社の業績が下がれば、私たちの給料も下がってしまうという悪循環になってしまいます。

 

仮にこの「インフレ率2%」が達成される場合、の5年後には今100万円で買えているものが110万円になり、今持っている資産を銀行に預けたままでは、そのものが買えない=資産の価値が相対的に下がっていることになります。

現在の価格 5年後
貯金額(金利0.002%) 100万円 100万円
欲しいもの(インフレ率2%) 100万円 110万円

 

つまり何も投資をせずに貯金しておくと、5年後には同じ金額では同じ条件の欲しいものを買うことができなくなるのです。

そういったことを防ぐためにも投資によって適度に資産を増やすことは必要だと言えるでしょう。

 

銀行の金利が低い

そもそも年2%の物価上昇程度であれば、銀行の金利が高ければ何も問題ありません。

 

ですが、日銀はこの「インフレ率2%」を実現するために「異次元の低金利政策」を実施しています。それにより、銀行預金の金利も下がり、銀行にいくらお金を預けていてもほとんど増えない状況にあるのです。

 

さて、なぜこの低金利によって資産運用が必要になるのか具体例を説明します。

日本の銀行の普通預金の金利は年0.002%という低金利になっています。この場合は一年間銀行に100万円を預けていても年間で20円しか増えない計算です。

ちなみに10年前の年0.198%と比較すると約100分の1です。更に1990年まで遡ると、ゆうちょ銀行では定期貯金の金利が6%の時代がありました。

 

金利が高い場合、投資による資産運用をしなくてもお金を増やすことができます。金利が6%の場合は、100万円貯金しておくだけで年に6万円も資産が増えるので、積極的に株や債券を買わなくても十分なリターンを得ることができます。

この時代のイメージ・価値観によって、日本では積極的に株などに投資する姿勢が失われてしまいました。ここまで金利が変わってしまうと貯金に対するイメージが変わってくるのも無理はありません。

金利が高い時代は貯金でも立派な資産運用でしたが、低金利になってしまった現在では、貯金以外の方法で資産運用をしないと資産が増えません。

つまり、貯金をしておけば良いという時代から投資が必要な時代になっているということです。

 

代表的な資産運用の種類

資産運用には様々な方法がありますが、ここでは代表的な株式投資・不動産投資・債券投資・FX・ヘッジファンドについて解説していきましょう。

それぞれの特徴や、メリットデメリットを紹介していくので、ご自身に合った投資方法を探して見てください。

株式投資の仕組みやメリットデメリット

株式投資は企業が発行する「株式」を売買することで利益を得る投資方法です。

「株主」となることで、様々なメリットを受けることができます。株価が上がれば資産を増やすことができますし、企業によっては株主になっていると、配当金が出たり、企業独自の株主優待が受けられることがあります。

一方のデメリットは、企業への投資となるため、企業業績が悪い場合や企業の悪材料が出た場合は株価が大きく下がることもあり、元本が保証されない点です。また銘柄の分析やタイミングを見計らった売買など、知識や経験、ある程度の時間も必要になります。

「増やす」ことに重点をおいている資産運用方法になりますので、元本割れなどある程度リスクをとっても大きく増やしたいという方に向いています。

 

不動産投資の仕組みやメリットデメリット

不動産投資とは簡単に言えばマンションやアパートの大家になることです。

ローンの返済や不動産の維持費を、家賃収入が上回っていれば、安定して毎月不労所得を得ることができますし、購入時よりも物件そのものの価格が上がった場合は、その差額が利益になります。

前者を「インカムゲイン」後者を「キャピタルゲイン」と言います。

また、不動産オーナーとなることで経費枠を利用して節税をしたり、保険がわりに使うといったメリットもあります。

 

デメリットは不動産に関する豊富な知識がいることや、大きな初期費用が掛かってしまうこと、銀行との借入交渉等ハードルが高いことです。また、気軽に売買できない(現金が必要になって急に手放したくなっても買い手が見つかるとは限らない)といった点にも注意が必要です。

気軽に小額から始めるという資産運用ではありませんが、苦労した分、ハマればリターンの大きさに魅力があります。

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債券投資の仕組みやメリットデメリット

債券とは、国や企業などが投資家から資金を集める為に発行する「有価証券」のことです。

債券投資のメリットとしては、基本的には元本割れしないこと、少額から投資を始める事が可能なところでしょう。個人向け国債であれば1万円から投資することもできます。

「増やす」というより「貯める」という所に重点をおいている資産運用です。資産運用を始めたいけど、なるべく元本を割りたくないという方にはおすすめです。

 

デメリットとしては、元本が保証されている反面リターンが小さいこと。また、外国の債券は通貨を交換する際に手数料がかかることや、為替レートの変動によっては元本割れする可能性がある点にご注意ください。

例えば、満期の段階で大きく円高になっている場合、円建てで見ると元本割れしやすくなります。

また、満期になるまでは引き出せないという点もデメリットになります。

 

FXの仕組みやメリット・デメリット

FXは「Foreign Exchange」の略であり、日本語で「外国為替証拠金取引」と呼びます。簡単に言うと色々な国の通貨を売買して差額分(為替差益)で儲けようという手法です。また、スワップポイントと言って通貨の金利差で稼ぐ方法もあります。

 

メリットとしては少ない金額から始められることや、レバレッジをかけることで効率よく資産を増やすことができる点です。

デメリットとしては、レバレッジのかけ方が自分の許容以上のものにしてしまうと大きな損をしてしまうことにあります。

レバレッジとは「てこ」を意味し、用意した保証金の何倍も大きな金額を取引することができます。日本国内のFXでは、書庫金に対し25倍まで投資することができ、これにより少額の資金で大きな取引をすることができます。

FXは少額で始めることができ、売買も簡単ですが、扱い方を間違えると非常にリスクが高いので注意が必要です。

 

ヘッジファンドの仕組みやメリット・デメリット

ヘッジファンドとは、投資家(出資者)から預かった資金をひとまとめに運用し、増やすことを専門にした、資産運用の組織・サービスです。

 

ヘッジファンドに預ければ、投資のプロに運用の全てを任せることができるため、安定したリターンが期待できたり、投資の知識や経験がなくても一定以上のリターンが得られる、運用を丸投げするので手間や時間を取られないといったメリットがあります。

一方で、一般的に私募(※公に広告などを出していいない)であるヘッジファンドは、その存在自体を見つけにくく、また限られた情報からファンドの良し悪しを判断しなければいけないといったデメリットもあります。

また、募集に制限があったり、投資の最低金額がかなり高かったりといったハードルもあるので注意が必要です。

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初心者が知っておきたい資産運用の制度

誰にとっても資産運用は必要なものであり、その重要性はますます高まっています。

「貯蓄から投資へ」というスローガンにもある通り、政府も国民一人一人が投資・資産運用をすることを推奨しており、それを後押しする制度も充実してきています。

ここでは、資産運用を後押しする制度の中でも、最も代表的な「NISA」と「iDeCo」について解説していきます。NISAとiDeCoは、税制優遇などのメリットも大きいのでぜひ利用を検討してみてください。

 

NISAの解説

NISA(少額投資非課税制度)は、定められた期間、投資で得た利益が非課税になるという点が大きな特徴です。

通常株式投資などの売買で得た投資利益には約20%の税金が掛かりますが、これがゼロになります。

通常の口座の場合、株式投資で100万円の利益を得ることができても税金で20万円が引かれてしまいます。ですが、NISA口座であればこの20万円が引かれることなく100万円の利益を満額手にすることができます。

 

また、NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」の2種類があります。

一般NISAは、年間の投資額が120万円までで、非課税期間は5年間、総額で最大投資額600万円までの投資枠での利益に対して非課税になります。

一方、つみたてNISAは、年間の投資額40万円ですが、非課税期間は20年です。ただし、つみたてNISAの投資対象に株式は含まれず、投資信託も対象銘柄が限定されているので注意しましょう。

年間投資額 非課税期間 投資対象
一般NISA 120万円 5年 株式と投資信託
積み立てNISA 40万円 20年 投資信託のみ

 

また、一般NISAと積み立てNISAは併用できないので注意してください。

長い時間をかけて老後資金を作りたい場合は積み立てNISA、短期で目標金額を稼いでその分を非課税にしたいという場合は一般NISAを使うなど、目的に合った方を選びましょう。

NISAに関しては2024年から制度が改正されます。

現行は一般と積み立てのNISAは併用ができませんが、新制度はどちらにも投資することができるなど更にメリットが増えます。

公表されている新NISA制度の内容のポイントは以下の通りです。

  1. 一般NISA(成長投資枠)とつみたてNISA(つみたて投資枠)の併用が可能に
  2. 年間投資上限額が最大360万円に拡大
  3. 生涯非課税限度額が最大1,800万円で新設
  4. 非課税保有期間の無期限化
  5. 制度の恒久化

今のNISAと比較すると、投資できる金額や時間が増えており、この制度改正を見ても、ますます投資を後押ししていることがわかります。

 

iDeCoの解説

iDeCo(イデコ)とは個人型確定拠出年金の愛称です。

iDeCoは、専用の口座を開設し、加入者が毎月一定金額を積み立てて預金、投資信託、保険などで運用して、60歳以降に年金や一時金としてその金額(掛け金+運用益)を受け取ります。

 

iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象になるため、所得税を抑えることができます。

また、運用で出た利益についても非課税ですし、受け取る時にも「公的年金等控除」「退職所得控除」といった税制優遇があるため、運用で利益が出ない場合でも十分なメリットがあります。

積み立てた掛金は60歳になるまで引き出すことができないため、日々の家計のやりくりが厳しい人には難しいかもしれませんが、運用で大きく損をしなければ、ほぼ確実にメリットがある制度です。

月々5,000円と少額から始めることもできるので、資金繰りに余裕のある人はぜひ活用を検討してみてください。

 

資産運用をするときの注意点

最後に、資産運用をするにあたっての注意点を確認しておきましょう。

1つは「余剰資金で行う」ということ、もう1つは「長期で行う」ことです。それぞれ解説していきます。

 

余剰資金で行う

資産運用は必ず余剰資金で行うことを意識してください。

なぜなら、資産運用は元本を割る等、生活に関わるリスクがあるからです。またiDeCoの掛け金や、不動産の売買、ヘッジファンドの預け金のように、欲しい時に即時現金化できないものもあります。

 

余剰資金とはその名の通り、余ったお金、すぐに使わないお金の事です。

まずは、保有している資産の内訳を確認し、余剰資金がいくらなのか把握する必要があります生活費など。すぐに使うお金や、近い将来必要となる学費などに使うお金、などお金の整理をしたうえで、多少の変動があっても家計にダメージの少ない金額で資産運用を行いましょう。

 

長期で運用する

資産運用は無理のない金額を長期で運用することが非常に重要です。

短期的に資産を増やす方法もありますが、そのような運用はリスクも大きく資産を減らす可能性もあります。また、日々生活の中で運用している資産のことで頭がいっぱいになり、他の事に手が付かなくなってしまう可能性があります。

 

資産運用は増える日もあれば、減ってしまう日もあるでしょう。

しかし、一喜一憂することなく、コツコツと運用を行い、長期的にみて資産が増えていれば大丈夫です。そのためにも、無理のない金額で資産運用をしていきましょう。

 

まとめ

この記事では「資産運用とは何か」ということや、「なぜ資産運用が必要なのか」「運用方法の種類、メリット」などについて解説してきました。

今の時代はインフレや銀行の低金利政策だけでなく、増税や、会社の給与が上がらないなど、様々な要因で資産を増やすことが難しい時代になっています。

 

だからこそ、ご自身のお金を見直し、無理のない金額でコツコツと資産運用を始めることが間違いなく重要です。ご自身の資産を守り・増やす知識をつけて、少しでも老後や将来の生活を豊かにできるよう工夫してみてください。