5000万円の運用方法を考える
この記事では「5000万円」という大金の適切な資産運用について考えていきます。
貯金だけでなく退職金や相続、あるいは運用によってコツコツ資産を増やし、ついに5000万円の大台に乗った方々は、なんとかこの資金を上手く運用して増やしていきたいと考えているはずです。
5000万円もあれば十分と感じている人もいるかもしれません。もちろんライフステージによって必要な資産額は変わってきますが、インフレや様々な資産価値の下落リスクを考えると、運用しない手はありません。
「5000万円」という大金の運用は、一般的に流行っている金融商品やお手軽な投資方法を試すのとは意味合いが異なります。
大きな資金だからこそ、しっかりと運用し、リスクを抑えて着実にリターンを積み上げていくことが必要ですし、資産運用は、元手が大きい方が有利に進めることができます。また、大金があるからこそ試すことができる、ある種富裕層にだけ許された新しい投資の手法も存在します。
5000万円を元手にすることで、さらなる資産を作ることは十分に可能です。5000万、1億と資産を増やしていけるように適切な運用方法を考えていきましょう。
その他の金額(1000万円、2000万円、3000万円、1億円)の運用については以下の記事を参考にしてみてください。
あわせて読みたい
5000万円を運用するなら?1分でわかるおすすめ方法まとめ
5000万円を運用するおすすめのポートフォリオ、投資手法をまずは紹介します。ここで紹介するのは、ヘッジファンドを軸にしたポートフォリオです。
パターン①:国内株式ファンドを中心に少しでもリスクを抑えて運用する
ポートフォリオ例)
- 国内株式ファンド:4000万円(80%)
- 預金:1000万円(20%)
最も安心、かつリスクを抑えつつ着実なリターンが期待できる国内株式ファンドで基本的に運用します。
運用の大半を投資のプロであるヘッジファンドに任せることで、手間をかけずに着実なリターンを期待します。最低限の資金として1000万円程度は預金として確保しておいてもよいでしょう。
パターン②:国内株式ファンドに海外株式を組み合わせて成長性も確保する
ポートフォリオ例)
- 国内株式ファンド:2500万円(50%)
- 海外株式ファンド:1500万円(30%)
- 投資信託:500万円(10%)
- 預金:500万円(10%)
①よりも少し高いリターンが欲しいという人に向けた、海外株式で運用するファンドを組み込んでみるパターンです。ですが、5000万円を運用する人に求められるのは、大前提として「安全性」と「着実なリターン」なので原則は国内株式ファンドになります。
加えて、より高いリターンが欲しい、投資に対して前向きな人は、500万円程度を自分で運用する枠として残し、投資信託などを買ってもよいでしょう。投資信託はすぐに現金化(売却)できるので、投資信託と預金を合わせて1000万円ほど確保しておけば十分でしょう。
パターン③:海外株式ファンドを中心に積極的な資産増加を目指す
ポートフォリオ例)
- 国内株式ファンド:1000万円(20%)
- 海外株式ファンド:2000万円(40%)
- 不動産:1000万円(20%)※
- 投資信託:500万円(10%)
- 預金:500万円(10%)
少しでも積極的に運用したい人は、海外株式ファンドの割合を増やす方法もあります。また不動産投資など、他の金融商品を積極的に組み込むのもおすすめです(※ここでは頭金1000万円として割り振ります)
残りは②と同様に投資信託を組み込みながら現金(預金)を残しておきます。
5000万円の資産運用、資産を最大化ための基本的な考え方
5000万円は本当に安泰か?必要な老後資金の金額とは
ある程度の年齢の人の場合「5000万円もあればもう十分」「わざわざリスクをとって増やさなくても良い」と考えている人もいるかもしれません。
もちろん細々と生活すればしのぎ切ることもできるかもしれませんが、老後に必要な資金は決して少なくありません。
総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2020年(令和2年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦二人世帯消費支出は月23万円、単身無職世帯で月13万円です。
つまり、最低限の生活をするだけで、夫婦二人で年間276万円、1人でも156万円必要になります。
仮に65歳で老後(仕事をリタイア)がスタートしたとして、5000万円では20年も保ちません。もちろん、年金などはありますが、それも将来的にどこまであてにできるかわかりませんし、そもそも最低限の生活でギリギリなので、贅沢はおろか、急な出費に対応することもできません。
事故や病気、トラブルなど、何か起きた時の備えを用意するためにも5000万円で安心することはできません。
貯金はリスク!運用することが最も健全な理由
そもそも金額や年齢に関係なく、資産運用は「必須事項」です。
銀行に預けていてもほとんど利息はつかない(メガバンクで年0.002%)ですが、世界は少しずつですが着実にインフレしており、何もしなければ相対的に資産の価値は減少していきます。
仮に政府の目標通り年2%のインフレが進むと、10年後の資産価値は18%近くも減少し、手元の5000万円は実質4100万円にまで価値が下がります。最低限でも年2%で運用しなければ、10年で900万円が溶けてしまうのです。
そもそも5000万円もの資産があるのに運用しないのは「もったいない」としか言いようがありません。資産運用は大きな金額であればあるほど、投資の選択肢が増え、安全に着実に運用ができるようになります。
1万円を必死に10倍にしても10万円(+9万円)ですが、5000万円は1%増やすだけで5050万円(+50万円)です。
お金はたくさん持っている方が、より簡単に増やすことができます。5000万円も資産があって生活に余裕があるのであれば、今すぐにでも資産運用に着手するべきです。
資産運用のポイント「ポートフォリオ」とは
では資産運用をする時に重要なポイントを考えていきましょう。
資産運用で重要なのは「ポートフォリオ」です。
「ポートフォリオ」とは、現金、預金、株式、債券、不動産、ファンド……など、投資家が保有している金融商品の一覧であったり、その組み合わせ内容を指す言葉です。
リスクを抑え、様々な事象に対応し、着実に資産を増やすためにも、バランスの良いポートフォリオを組むことが非常に重要になります。
まずはポートフォリオを考えた上で、その中でよりよい具体的な投資先を検討することが重要です。
ポートフォリオを考える際には「自分がどんな運用をしたいのか」「どの程度のリターンが欲しいか」「どの程度のリスクまで許容できるのか」など、自分自身が投資に求めるもの、資産運用で達成したい目標などを予め考える必要があります。
「少しでもリスクを抑えて着実に運用したい人」と「リスクがあってもガンガン資産を増やしていきたい人」ではポートフォリオのバランスも異なりますし、結果おすすめできる投資先も変わってきます。
また同じ「資産1億円」を目標にしている人でも、元本の金額や投資期間(何年かけるのか)などの様々な条件によって、必要な利回りやそれに伴うリスクが変わるのは当然のことです。
自分にあった運用方法を考えるためにも、まずは資産運用の目的や目標について考えてみましょう。
5000万円の資産運用における、投資ポートフォリオの組み方
では投資ポートフォリオの組み方を考えていきましょう。ポートフォリオを組む時に重要なのは「運用資金」「リスク」「リターン」の3点です。
ここでは5000万円を運用するケースを考えていますが、資産が10万円しかない人が8割を運用に回して残りの2万円を手元に残すのと、5000万円持っている人が9割を運用して手元に500万円残すのとでは意味合いが全く異なります。預金などの現金性の資産の割合を考えるためにも、まずは運用資金を見直しましょう。
そして必要な「リスク」と「リターン」について考えていきます。ポートフォリオ全体で達成したいリスクとリターンのバランスを先に考えた上で、それにあった金融商品(投資先)を配分していきます。
世の中には、株や債券、投資信託、不動産、FX、PB、、ファンドラップヘッジファンドなど様々な金融商品がありますが、それぞれに特徴がありメリットデメリットがあります。
- リスクも低いがほとんどリターンもないもの
- ハイリスクハイリターンなもの
- 少額から始められるもの
- 運用するためのハードルが高いもの
- 簡単に売買でき手軽なもの
- 一度投資したらある程度の期間運用し続けなければいけないもの
etc.
様々な金融商品について、リスクリターンや投資のハードル(条件)、流動性などを理解し、予め考えたポートフォリオのバランスにあうように当てはめていきます。
また、様々な金融商品を組み合わせる、いわゆる「分散投資」をすることでリスクヘッジができるのは有名な話ですが、組み合わせにも相性があり、ただ数を増やせばいいわけではありません。
株式市場相場の影響(景気)に対する耐性が強い組み合わせもあれば、為替リスクに強い組み合わせ、アメリカ経済と中国経済バランスに強い組み合わせなど、その組み合わせ方によってヘッジできるリスクは異なるのです。
5000万円の資産運用における、適切な投資手法の選択
ポートフォリオにあった適切な投資手法を選ぶために、代表的な金融商品(投資手法)の特徴を把握しておきましょう。
資産運用には、いろいろな手段がありますが、ここでは以下の7つの特徴とメリットデメリットについて簡単に解説していきます。
- 株式(国内/海外)
- 債券(日本/外国/社債)
- 投資信託
- 不動産
- FX
- ヘッジファンド
- 預金
株式投資(国内/海外)
資産運用と聞いてまず最初に株式投資を思いつく方々が多いでしょう。株式投資とは、企業の株式へ投資を行い株式の売却益であったり配当を得る投資手段です。
株式投資の場合、後述する預金であったり債券と比較して、高い配当利回りを期待することができます。株式投資をした企業の業績がアップすることで、株価アップも期待することができます。
ただし、株価投資には、ボラティリティが大きいという特徴があります。そのため、市場の変動で株価が大きく下落してしまうリスクがあることもあらかじめ知っておく必要があります。どの企業に投資するのか、いくらで、どのタイミングで株を買い付けるのかなど、細かい分析や知識・経験がなど高い専門性が必要になります。
国内株式(日本企業)の場合、会社が身近な存在であるため、より詳しく知ることができるメリットや、為替リスクが無いといったメリットがありますが、選択肢が国内に限定されてしまいます。
海外株式(外国企業)にまで選択肢を広げれば、より収益性の高い銘柄に出会う可能性も高まりますが、海外企業のIR資料を読んだり、経営状況について詳しく把握するためには、言語の壁があったり、為替リスクもあるため注意が必要です。
https://n3epa.org/quarterly-journal/
債券投資(日本/海外/社債)
債券とは、国や企業などが、投資家から資金を借りるために発行する有価証券です。国が発行するものを国債、会社が発行するものを社債と言います。
投資家は債券に投資(債券を購入)することで、発行体である国や企業から利子を受け取れます。債券は、満期(償還日)まで保有することで額面の金額が満額返済される+保有している間は利子が受け取れるため、基本的にほぼ確実にリターンを得ることができます。
利率も銀行預金よりは高いのがメリットです。
一方で、満期まで保有しなければ市場価格で売却することになるため価格が下がっている可能性もあります。確実に満額償還を狙うのであれば、5年、10年と保有する必要があるため注意が必要です。
※この市場での取引を通じて利益を狙う方法もあります。
また、発行体である国や企業が解散(国の場合はデフォルト、企業の場合は倒産)すると償還されなくなるというリスクもあります。
5年10年のうちに日本がデフォルトすることは考えたくも無いですが、日本国債の場合は日本が破綻しなければ元本保証の金融商品と言えます。ちなみに日本国債の場合2022年の平均で約0.5%なので、銀行預金と比べるとかなりましな金利です。
債券のリスクについては「信用リスク」としてA、B、Cとランクづけされているので参考にすることができます。
一般に先進国の国債の方がリスクが低くて低利率、途上国の国債や社債の方がリスクが高いが高利率という傾向があります。外国債の場合、為替リスクが伴うのは株式と同じです。
投資信託
投資信託は、「投資信託」という証券を通じて投資家たちからお金を集め、集めた資金を運用会社が株式や債券に投資し運用し、運用で得た利益からコストが引かれたものが投資家のリターンとして還元されます。
投資信託は、個別の会社ではなく、特定の業界や国、地域に限定して運用するものが多いため、株式投資よりも分散されておりリスクが低いとされています。
ただし、投資信託ごとに予め決められたジャンル(業界や国など)に投資するため、似たようなものに投資する傾向がある点には注意が必要です。
投資信託は、少額からはじめられるという点や、NISAやiDeCoなど、税制面で優遇される制度を活用できる点などが大きなメリットです。
不動産
不動産投資は、アパートやマンションの一室から、ビル丸ごとまで、様々な不動産に投資する方法です。
家賃収入・テナント料といった収入を得る「インカムゲイン」と、物件自体の購入価格よりも高く売った時の売却益である「キャピタルゲイン」の大きく2つの収入ポイントがあります。
不動産投資の最大の特徴は、ローンを組みやすく、自己資金以上の大きな金額(の物件)を運用できる点です。株やFXでも信用取引などでレバレッジをかけることはできますが、こんなにも借入をすることが一般的なのは不動産投資だけでしょう。また、税金対策に活用するなどのオプションもあります。
一般に不動産は買ったところから価値がさがるため、簡単にキャピタルゲインが期待できない点は注意しておきましょう。もちろん借り手がつかないと家賃収入も望めないので「空室リスク」にも注意が必要です。
株式以上に高い専門性や、情報ネットワークが重要な投資手法なので、不動産投資に興味がある人は専門業者に相談することをおすすめします。
不動産投資については以下の記事でも解説しています
https://n3epa.org/real-estate-investment-recommendation/
FX
FXは外国為替を利用した投資手法です。
例えば、1ドル100円の時にドルを買い、120円の円安になった時にドルを売って円に戻せば100円→120円と資産を増やすことができます。FXの仕組み自体はシンプルで、日本円、ドル以外にもユーロや人民元など様々な通貨があります。
FXはシンプルでわかりやすく、簡単に始めやすいという点がありますが、為替の予測は非常に難しく、博打に近いと言われるほどリスキーな点に注意が必要です。また、瞬間的に大きく為替変動する可能性もあるので、常に相場を意識して、迅速に対応するなどの時間的な制約も大きくなります。
FXと言えば「レバレッジ」をかけて、元本以上の大きな金額を運用できるのが特徴として挙げられますが、レバレッジをかけることはリスクもリターンも何倍にも膨らませていることと同じなので注意してください。
ビックリターンは魅力的かもしれませんが、一瞬の判断ミスで莫大な損失を産んでしまった例も数多くあります。ゲーム性が高い、ハイリスクハイリターンな投資です。
ヘッジファンド
ヘッジファンドとは、投資のプロであるファンドマネージャに資金を預け、運用を一任するサービスです。他の投資手法と比較して手数料が高い傾向がありますが、プロに任せることで、高いリターンが期待できます。また、運用を丸投げできるので、手間要らずで時間コストがかからないのも大きなメリットです。
ヘッジファンドのパフォーマンスは、ファンドによって様々なため、優秀なファンドマネージャを見つけ出すことがファンド選びの重要なポイントになります。
ヘッジファンドは、元々富裕層や機関投資家などの限られた人たちからお金を集めていたという背景もあるため、存在が公になっておらず情報が少ない点には注意が必要です。
また、長期的に運用するために、一度預けた資産をすぐには引き出せないこと(最低でも数ヶ月〜)、最低金額などの条件のハードルが高いといったデメリットもあります。
それでも銘柄選びから売買のタイミング、ポートフォリオの調整まで、全てをプロに任せて、ラクに安定したリターンを得られるのが大きなメリットです。
預金
預金も一応資産運用の1つです。手元のお金を全額株やファンドに突っ込まずある程度は銀行に残しておくように、資産全体のどれくらいを預金としてキープするかを考えるのも重要なことです。
預金の最大の特徴は元本保証である点と、いつでも簡単に引き出せる点にあります。特に後者の「資産の流動性」については見落としてしまいがちですが、債券や不動産、ヘッジファンドなどと比較すると重要性が見えてくるでしょう。
一方で、ご存知の通り、ほとんどリターンが得られないのが最大のデメリットです。2023年現在の一般的な利率は年0.002%(メガバンク3行)とゼロに等しいものがあります。
適切な資産運用で、自分の資産を最大化しよう
ここで紹介した以外にも仮想通貨やソーシャルレンディング、プライベートバンクなど、投資手法や資産運用に関するサービスは数多く存在します。
新しいものもどんどん増えてきていますが、まずはファンドや不動産など、その道の専門家に相談できる・任せられるものから始めるのがおすすめです。
特にリスクを抑えて運用したい初心者は、ヘッジファンドなどを軸に運用を始めて、余裕が出てきたら自分で株や投資信託などを初めてみても良いでしょう。
ついつい投資手法にばかり目がいってしまいますが、まずは自分の運用の目標や計画を立てて、それにあったポートフォリオを考えることから始めるのが大切です。
5000万円は適切に運用すれば大きな資産を作ることができるかもしれない反面、闇雲に運用するとリスクが高まりますし、放っておけばチャンスを逃してしまいます。自身の資産状況や、人生設計を踏まえて、適切な資産運用を考えてみてください。