今回は、レオス・キャピタルワークス株式会社が運用する「ひふみ投信」を紹介いたします。
「ひふみ投信」は2008年10月1日に設定され基準価額10,000円スタートし、現在(2023年5月31日)の基準価額が59,293円(設定来騰落率492.93%)のアクティブファンドです。
投資先は主に日本株になり、大型株、中小型株、超小型株の中から長期的な成長を重視して、業績に比べて市場の評価が低い割安な銘柄を選別して投資します。
販売形態は、運用会社レオス・キャピタルワークス株式会社の直販で、運用はファミリーファンド方式になり「ひふみ投信マザーファンド」を通じて株式に投資をします。
そんなひふみ投信の基本的な情報から、ひふみ投信の特長や特色、ひふみ投信に投資するのメリット・デメリット、実績や評判について見ていきます。
- ひふみ投信は、主に日本株に投資をするアクティブファンド
- 大型株、中小型株、超小型株を区分けせず、長期に成長が期待できる銘柄に投資する
- 運用はファミリーファンド方式になり、ひふみ投信マザーファンドを通じて投資
- ひふみ投信は、運用会社レオス・キャピタルワークス株式会社の直販
- 投資元本の長期的な成長を図るために、設定来分配金の支払いなし
ひふみ投信の基本情報(概要)
ひふみ投信の基本情報は以下の通りです。
名称 | ひふみ投信 |
委託会社 | レオス・キャピタルワークス株式会社 |
投資対象 | その他資産(投資信託証券 株式 一般) |
投資対象地域 | グローバル(日本を含む) |
投資形態 | ファミリーファンド |
為替ヘッジ | なし |
決算頻度 | 年1回 |
販売形態 | 直販(レオス・キャピタルワークス株式会社) |
購入時手数料 | なし |
信託財産留保額 | なし |
運用管理費用(信託報酬) | 年率1.0780% |
参考:投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日2022年12月17日
投資対象地域は、グローバル(日本を含む)となっていますが、ほぼ日本株での運用です。
特にベンチマークは設定していませんが、運用状況を示すグラフでは参考値としてTOPIXと比較しています。
また、年1回決算をしていますが、投資元本の成長を図るために設定から現在まで分配金の支払をしていません。
販売手数料や信託報酬(運用時手数料)は、販売手数料「0円」と公募株式投信信託(追加型)の平均2.18%に比べお得です。信託報酬もひふみ投信は年率1.0780%と公募株式投信信託(追加型)の平均1.14%よりも低くなっています。また、信託財産留保額もありません。
*公募株式投信信託(追加型)の販売手数料と信託報酬の数値は、「投資信託の主要統計等ファクトブック(2023年5月末PDF)」(一般社団法人投資信託協会発行のレポート)を参考
ひふみ投信の特長と特色
ひふみの運用哲学
ひふみ投信の特長と特色を見ていく前に、最高投資責任者 藤野英人氏(レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役会長兼社長)の「ひふみの運用哲学」を押さえておきましょう。
藤野氏は、ひふみ投信の名前の隠れた由来を「火風水土心(ひ・ふ・み・とう・しん)」で表しています。
- 火は「攻め」 勢いある成長企業
- 風は「変化」 トレンド、テーマ性のある企業
- 水は「守り」 ディフェンシブ 割安株
- 土は「安定」 地味で地道、地方の中小型株
- 心は、銘柄選択の根本思想であり、公明正大に事業を行っている会社かどうかを見定めること(ESGやSDGsの概念も含まれる)
参考:ひふみの運用哲学 | ひふみブランドコンセプト | ひふみ
ひふみ投資哲学を知ることで、以下のひふみ投信の特長や特色をより理解できるようになるかと思います。
ひふみ投信の3つの特長と3つの特色
ひふみ投信の特長は、ひふみ投信のサイトの「はじめての方」」へのところに載っています。
- 日本や海外の成長企業に投資をします
- 守りながら増やす運用に挑戦します
- 顔が見える運用
の3つになります。
ひふみ投信の特色は、ひふみ投信|投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日2022年12月17日に載っています。
- 国内外の上場株式を投資対象として割安な銘柄を選別して積極投資
- 株式の組入比率は変化する
- 運用方法はファミリーファンド方式
の3つです。
以下、3つの特長と3つの特色からひふみ投信(ひふみ投信マザーファンド)の銘柄の選別方法と資産の運用方法について詳しく見ていきます。
ひふみ投信の銘柄の選別方法
ひふみ投信の特長1と特色1から、ひふみ投信(ひふみ投信マザーファンド)が投資対象とする銘柄が見えてきます。
単に割安な銘柄にではなく、長期的に成長が期待できる銘柄を投資対象として選んでいることがわかります。
また銘柄選びにあたっては、以下の2つのアプローチが取られています。
最初に、国内外の長期的な経済循環や経済構造の変化、経済の発展段階等をトータルに評価して、投資する株式市場を選びます。
次に、長期的な産業のトレンドを考えて銘柄を選別していきます。選別に当たっては大型株、中小型株、超小型株などの企業規模や業種を問わず、長期的に成長が期待できるが現在は市場から評価されず割安に放置されている銘柄を探します。
銘柄探しは定性調査・定量調査の両面から評価されます。
定量調査とは、その企業の収益の安定性と収益に対しての株価の割安感などを損益計算書や貸借対象表などの決算書を確認して行う、数字に表れる調査になります。
定性調査とは、数値化できない経営者の経営方針やビジョン、戦略や従業員の声や扱っている製品など、数字に表れない調査です。
ひふみ投信の運用方法は
ひふみ投信の特長2「守りながら増やす運用に挑戦します」とひふみ投信の特色2「株式の組入比率は変化する」が運用方法に関する部分です。
守りながら増やす運用の守り部分は、その時々の現金比率の増減により確認することができます。
ひふみ投信は、現金を運用資産の最大50%未満の比率まで保有できるように設定しています。
参考:ひふみ投信|投資信託説明書(交付目論見書)2022年12月17日
実際、投資信託説明書に載っている「ひふみ投資マザーファンドの時価総額別構比率の推移」を見てみると、北朝鮮による地政学リスクや新型コロナウイルスによる不確実性リスクなど、世界情勢や経済状況に応じて機動的に現金の比率を調整して(増やして)リスクに備えていることがわかります。
参考:ひふみ投信|投資信託説明書(交付目論見書)使用開始日2022年12月17日
特に2020年前半の新型コロナウイルス発生前後(2022年1月~4月)の現金の動きを資産別構成で見ますと1月の現金比率0.7%から、2月に現金比率を31.2%と急激に増やし価格変動リスクに備えています。3月以降は徐々に現金比率を落とし、株式の比率を徐々に上げています。
2020年1月度 月次報告書 | 2020年2月度 月次報告書 |
2020年3月度 月次報告書 | 2020年4月度 月次報告書 |
その後、現金比率は 6月に10%を切り、12月には1月とほぼ同じ比率になっています。
2020年6月度 月次報告書 | 2020年12月 月次報告書 |
また、株価上昇し割高になった銘柄を売却して現金化しますが、市場環境などにより割安な銘柄を発見できない場合、無理して株式に投資をせず現金比率を高めた運用をします。
株式の組入比率の変化についても、投資信託説明書に載っている「ひふみ投資マザーファンドの時価総額別構比率の推移」で大型株、中小型株、超小型株、海外株の組入比率の変化を確認できます。運用時期により組入比率が大きく異なる機動的な運用もひふみ投信の特色の1つです。
大型株は時価総額3,000億円以上、中小型株は時価総額300億円以上3,000億円未満、超小型株は時価総額300億円未満の日本株です。
また、月次報告書ではひふみ投信マザーファンドの「純資産総額と組入れ銘柄数」「資産配分比率」「市場別比率」「時価総額別比率」などを月ごとに確認することができます。
ひふみ投信マザーファンドの純資産総額は、銀行や証券会社で購入できる「ひふみプラス」も含まれていますのでひふみ投信の純資産総額よりも大きくなります。
ひふみプラスについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
ひふみ投信マザーファンドは、市場別比率を見て分かるように複数の市場に投資をしています。そのためベンチマークとなる指数がありません。
ひふみ投信の投資形態は
ひふみ投信の投資形態は、マザーファンドのひふみ投信マザーファンドを通じて株式市場に投資を行う「ファミリーファンド方式」です。つまり、実際の銘柄の選別はひふみ投信マザーファンドがしていることになります。
引用:ひふみ投信|投資信託説明書(交付目論見書)2022年12月17日
ファミリーファンド方式とは、大元の運用母体となるマザーファンドを通じて、間接的に運用する投資信託の仕組みの1つです。投資家は、どの投資信託を通じて投資するかを選ぶことができますが、最終的にはひとまとめに同じように運用されます。
現在(2023年6月21日)のひふみ投信マザーファンドは、運用責任者の藤野英人氏(最高投資責任者)、日本株の運用担当者は佐々木靖人氏、世界株の運用担当者は韋 珊珊(ウェイ・シャンシャン)氏の3名で運営されています。
ひふみ投信 顔が見える運用とは
最後にひふみ投信の特長3「顔が見える運用」について見ていきます。
ひふみ投信の運用会社であるレオス・キャピタルワークス株式会社がは運用の責任者/担当者(トレーダー)達のプロフィールを顔写真付きで公開しています。
また、直接お客様に販売する直販方式のメリットを生かし、セミナーやイベントを通じてコミュニケーションをとっています。
セミナーの一例として毎月開催している月次運用報告会「ひふみアカデミー」や、ひふみ投信などレオス・キャピタルワークス株式会社が直販するファンドの仕組みや特長、運用方法などを説明した「はじめてのひふみ」などがあります。
また、動画配信なども行っており、安心して運用を任せられるパートナーとなることを目指しています。
ひふみ投信のメリット・デメリットや注意点
ひふみ投信のメリット
まずは、ひふみ投信に投資するメリットについて見ていきます。
ひふみ投信には、長く保有するほど実質の運用時手数料が安くなる「資産形成応援団」という仕組みがあります。これは、ひふみ投信を長期に保有している人に対しては信託報酬の一部を投資家に還元するものです。
引用:ひふみ投信|投資信託説明書(交付目論見書)2022年12月17日
5年以上保有した方が対象になり、当初の買付から5年経過後から10年経過までの方が0.2%還元され、10年経過後は0.4%還元される仕組みになっています。還元の原資には、レオス・キャピタルワークス株式会社の自己資金が充てられます。
充当された資金は、ひふみ投信保有者の口座に入金され、ひふみ投信の買い付けに使われます。長期で保有することにより、自動的にひふみ投信の保有口数が増えるメリットを享受できます。
ひふみ投信のデメリット
ひふみ投信のデメリットとしては、運用時手数料にあたる信託報酬が高いことが挙げられます。
アクティブファンドとしては平均(1.14%)以下の年率1.0780%と低い水準ですが、信託報酬が0.1%以下のインデックスファンドと比べるとまだまだ高水準です。
また、信託報酬は保有している間、継続してかかる手数料なので、10年、20年といった長期保有で考えると運用時手数料の差が大きくなります。
例えば、信託報酬1%のAファンドと0.1%のBファンドで基準価額の推移が同じであれば、10年間の信託報酬の合計はAファンドが10%(1%×10年)、Bファンドが1%(0.1%×10年)と9%の差が生じます。
現時点では、TOPIXを大幅に上回る運用成績ですが、今後のことは予想できないため、仮にTOPIXがひふみ投信以上の成長を見せたり、ひふみ投信の運用が滞った場合、この信託報酬の高さはデメリットになる可能性があります。
ひふみ投信に投資をする時の注意点
ひふみ投信に投資する際の1つ目の注意点の1つは、日々の値動きが掴みづらい点です。
ひふみ投信は大型株、中小型株、超小型株へ投資やプライム市場、スタンダード市場、グロース市場と特定の市場にとらわれない運用をするため、比較するベンチマークがありません。そのためトレンドに左右されにくく、値動きの理由も掴みづらいため、ネットや新聞などで経済情報を追っていても、ひふみ投信の値動きまでは掴みづらいでしょう。
もちろんある程度、市場の影響は受けるため、一般的な経済ニュースを追うことも重要です。
もう1つの注意点は、ひふみ投信をつみたてNISAで投資をした場合、レオス・キャピタルワークス株式会社の直販商品の中に「ひふみ投信」以外、つみたてNISA対象商品がない点です。
ひふみ投信を販売しているレオス社で扱っている「ひふみシリーズ」の商品は数多くあり、NISAやiDeCoに対応しているものはありますが「つみたてNISA」対応のものは多くありません。
ひふみシリーズ全体についてはこちらの記事でまとめています。
ひふみ投信の実績や評判・評価
ひふみ投信の実績
まずはじめに、ひふみ投信の実績である、基準価額や純資産総額の推移と騰落率を確認します。
基準価額は、下のグラフにあるように下落する時期もありますが、設定来で見ると右肩上がりで推移していいます。2008年9月30日(設定日前日)の基準価額10,000円からスタートし、2023年5月31日の59,293円と約15年間で5倍以上の上昇を記録しています。
ひふみ投信のベンチマークではありませんが、同時期のTOPIXの約2.7倍の倍以上の上昇になります。
ひふみ投信と同じマザーファンドに投資する「ひふみプラス」の基準価額のグラフでは現金比率も載っているので、ひふみ投信と併せて見ておくと、運用担当者がどの時期に守りに入ったのか、確認することができます。
次に純資産総額の推移を確認すると、2016年10月以降から2018年にかけて急激に純資産総額が増えています。これは、基準価額の上昇と2018年1月から始まった「つみたてNISA」の影響かと思われます。その後は、上の基準価額の上昇下落と同じ動きで増減しています。
最後に騰落率を確認します。
設定来のパフォーマンスでは、ひふみ投信492.93%、同期間のTOPIXが169.75%とひふみ投信が大幅に上回っていますが、過去3年間で見ますと逆にTOPIXがひふみ投信を上回っています。
これは、新型コロナ対応による巨額の財政出動による金融相場の影響かと考えられます。金融相場では、企業業績に関係なく市場全体が上昇することがあります。
ひふみ投信の評判や評価
最後に、ひふみ投信の評判や評価について見ていきます。
ひふみ投信の良い評判として、最高投資責任者の藤野英人氏の運用を信頼して投資を継続しているとのコメントが多く見受けられました。
これは、「顔の見える運用」で触れました、セミナーやイベントを通じてお客とのコミュニケーションがうまく取れていることの表れかと思います。
一方の悪い評判として、過去3年間の運用成果に対する不満のコメントがありました。
こちらは上記の騰落率にあるようにTOPIXに劣後していることが原因だと考えられます。
全体的には、ひふみ投信を長く保有している人からの評判はよく、保有期間の短い人からの評判が悪い印象でした。
ひふみ投信の評価として、2023年R&Iファンド大賞 投資期間10年部門/国内株式コア部門 優秀ファンド賞の受賞が挙げられます。
過去にも2022年と2021年R&Iファンド大賞 投資期間10年部門/国内株式コア部門 優秀ファンド賞、2020年と2019年R&Iファンド大賞 投資期間10年部門/国内株式コア部門 最優秀ファンド賞受賞といった高い評価を受けています。
ひふみ投信のまとめ
今回紹介した「ひふみ投信」は、主に日本株に投資し、大型株、中小型株、超小型株を区別することなく長期的な成長を重視して、市場価格が割安な銘柄を選別して投資しています。また、設定来から現在まで分配金を支払わず、投資元本の成長を図っています。
大型株、中小型株、超小型株への投資やプライム市場、スタンダード市場、グロース市場と特定の市場にとらわれない運用をするので、投資する際は、比較するベンチマークがなく日々の値動きが掴みづらいと点に注意しましょう。
「ひふみ投信」がおすすめできる人は。
- 長期で資産形成を考えている人
- 日本株の投資に興味がある人
- 個別株への投資も考えている人
などです。
3.の個別株への投資も考えている人にとっては、「ひふみ投信マザーファンド」の運用担当者の銘柄選びが参考になるでしょう。
反対に、「ひふみ投信を」おすすめできない人は、
- 海外株への投資に興味のある人
- 信託報酬などの運用時手数料の安さにこだわる人
- 定期的に分配金を受取りたい人
などです。
日本では長いデフレからインフレに方向に動いたり、上場企業がPBR(株価純資産倍率)を意識した経営をするようになったりと、経済環境や市場環境が変化しています。
今後、金融相場から業績相場へ移行した場合、ひふみ投信マザーファンドの運用担当者がどのような銘柄を選んで運用していくのか、注目です。