「資産運用を始めたいけど何をすればいいか分からない」
「今まで投資をやったことがないから怖い」
「とりあえず投資信託やればいいと言われるけど本当?」
このような悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
物価の上昇、税金や社会保険料の負担増加、将来十分な年金をもらえるのかなど、考えだしたらキリがないほど「お金の不安」に終わりはありません。
日常生活や老後のために投資を始めたほうがいいと思うけど、何からすればいいか分からないまま時間だけが過ぎている人も多いかもしれません。
そこで今回は
- 資産運用の始め方
- 失敗を避けるために重要な投資先の選び方
- 代表的な投資先のポイント解説
- これから資産運用を始める人がまずやった方がいいこと
を解説します。
1分で分かる資産運用の始め方とおすすめ運用手法
ゼロから資産運用を始めるには何からすればいいのか、おすすめの資産運用のポイントをまずは簡単に紹介します。記事後半で詳細を解説しているので、気になった部分はぜひ確認してみてください。
資産運用をはじめるときのポイントは
- 資産運用をする目的を明確にする
- 自分がとれるリスクはどのくらいか、どのような形で投資したいのか確認する
- 必ず余裕資金の範囲内で運用する
の3点です。
資産運用を始めるにあたって必ず目的を明確にする必要があります。地図や事前準備がなければ登山で遭難するリスクが上がるのと同じで、資産運用も「なぜ運用をするのか、いくら欲しいのか(必要なのか)」をはっきりさせなければ、どれだけ大きな資金があったとしても失敗する可能性が高くなります。
投資は怖いから貯金しているという人も多いですが、普通預金の利回りはほぼゼロ(0.001%)なので預貯金に資産を全振りしてもお金は増えません。
物価上昇と比較しても、給料はほぼ増えないので、使えるお金を増やすには投資するしかないのです。
投資未経験者の多くは「何に投資したらいいのか」「どの投資先がおすすめなのか」ばかりに気がいってしまいますが、それぞれにメリットデメリットがあり、一概に「これがベスト!」とは言えません。
数ある投資先の中から良いものを選ぶ上で重要なのは「自分に合ったもの」を選ぶことです。
そのためにも、まずは自分自身の現状把握や、資産運用で達成したい目標(ゴール)の確認からはじめてみましょう。
そもそも資産運用とは?これから投資が欠かせない理由
資産運用とは、自分が保有している資産を預貯金や株式、債券、ファンド、投資信託などの金融商品に配分することで、お金を効率的に増やすことです。
さまざまな運用手法があり、それぞれメリットとデメリットが存在します。リスク度合いも異なり、短期間での価格変動が大きくリスクが高いものもあれば、値動きはあまりなく長期目線で安定的に運用しやすいものもあります。
資産運用をする際には、数ある投資先(金融商品)の中から、それぞれの収入や資産、リスク許容度によって自分に合ったものを選んでいく必要がありますが、本格的な運用を始める前に、そもそもなぜ資産運用をする必要があるのか確認しましょう。
目的/目標を明確にしないと、どれだけお金があっても曖昧で、闇雲に投資するハメになってしまいます。「もっと、もっと」と欲が出てハイリターンなものに投資した結果、不要なリスクをとってしまい結果損をするというケースは珍しくありません。
なぜ資産運用をしなければいけないのか。
結論からいえば
- 給料だけでは実質的にお金が増えないから
- 物価上昇や税金等の負担増は今後も続く可能性があるから
- 預貯金だけでは資産が増えず、むしろ目減りする可能性があるから
の3つが主な理由です。
厚生労働省が発表した令和4年度の毎月勤労統計調査によると、現金給与総額は約32.6万円となり前年比で2%増えましたが、物価の変動等を考慮した実質賃金で調べると前年比で1%下がったことが明らかになりました。
これは額面の給料は増えたものの、物価の上昇などで支出も増加し、実質的に使えるお金は減ったことを表しています。
食料品や日用品の値上げが相次ぎ、スーパーなどに行くとそれを強く実感する人も多いのではないでしょうか。見た目の価格は変わらなくても、明らかに中身が減った「ステルス値上げ」も目立ちます。
値上げだけではありません。税金や社会保険料の負担も増加しています。
財務省によると、租税負担率と社会保障負担率を合計した国民負担率について、2023年(令和5年度)は46.8%になることが分かりました。国民負担に財政赤字を加えた潜在的な国民負担率は53.9%となる見込みで、半分を超えています。
少し給料が上がっても物価の上昇等で実質賃金は下がり、税金や社会保険料は半分以上負担、これでは「使えるお金」は減る一方です。
年金の支給にも不安があり、「老後2000万円問題」などと言われるように、今や老後の資金は個人できちんと準備しなければいけません。
にも関わらず、実質的に使えるお金=貯められるお金は減ってきており、給料以外=投資でお金を増やすことが必要になってきているのです。
とはいえ、「投資はリスクがあって怖い。預貯金は投資と違ってお金が減らないから安心」と考える人も多いかもしれませんが、預貯金も立派な運用です。
普通預金の利回りは平均0.001%でほぼゼロ、忘れた頃に数円入ってくる程度ですが、これも「減らない形の資産」という運用の一種と考えることもできます。
とにかく貯金する人も多いですが、これは「ほぼ金利がゼロの金融商品に資産を集中させている」状態です。ほぼゼロ金利なので、貯金だけしても全然お金は増えません。仮に1000万円を20年間運用しても2000円くらいしか増えません。これは1回ランチやディナーに行くとすぐになくなってしまう金額です。
「全然お金増えないけど、引き出さなかったら減らないよね?」と言われることもあります。
確かに出さなければ”見た目”のお金は減りませんが、物価は少しずつ変動するため今後もずっと同じ価値だけ使える保証はどこにもありません。
食料品等の値上げが話題になったように、物価上昇(インフレ)でモノやサービスの価格が上がると買える量が減ります。100万円で1本200円のビールを買おうと思ったら5000本買えます。ただし、1本500円に値上げされると2000本しか買えません。
見た目のお金の数字は変わっていないのに、インフレが起こったことで買える量は減っています。これは実質的に資産価値が目減りしているのと同じです。
政府や日本銀行は安定目標として年2%の物価上昇の実現を目指しています。
もし仮に毎年2%ずつ物価が上がり続けると、お金の価値は約20年後に67%程度に減少します。今手元にあるお金は少しずつその価値を失っているのです。
参考:老後に直撃?「インフレ」は暮らしにどう影響するのか | 野村證券
それを避けるためには最低でも年2%以上、お金を増やしていかなければなりません。実質賃金が下がって給料には頼れない、預貯金も全く増えない以上、投資でカバーするしかないのです。
資産運用の選び方!判断するポイント
投資にはリスクがつきものですが、できる限りリスクを減らして安定的に運用してお金を増やしたいと考えるのは自然なことです。今回は預貯金以外で資産運用をする場合、どのような判断基準で投資先を選べばいいのか解説します。
結論から言えば
- 投資する予算の範囲内で投資ができるか
- 自分が資産運用する目的/目標に合っているか
- 自分がとれるリスクに合っているか
上記3点の見極めが欠かせません。
投資する予算の範囲内で投資ができるか
気になる投資先が見つかったとしても、全てに簡単に手が出せるわけではありません。
最近は「100円からはじめられる!」といった投資信託やミニ株のようなものも増えてきていますが、一方で魅力的な不動産やヘッジファンドなどは数十万〜数百万円、あるいは1000万円以上の資金が必要になるものもあります。
まずはその投資先が自分の手が届くものなのかを確認するべく、自分の資産全体のうちいくらまで投資に使うことができるのかを把握することが重要です。
「儲かりそうな話だから!」と貯金が120万円しか無い人が100万円を一つの金融商品に投資し、そこで失敗してしまった場合取り返しがつかないことにもなりかねません。
最低限の生活費や日々の収支とのバランスなども考えて、まずはいくらを投資するのかきちんと考えましょう。資産(貯金)や収入の金額と実際に投資できるバランスについては以下の記事で詳しく解説しています。
自分が資産運用する目的/目標に合っているか
- 子どもの教育費として大学入学までに1000万円準備したい
- 年金をもらえる65歳までに2000万円ほしい
- 1年間で100万円の運用益を出したい
このように目的の内容によって、とれる手段やリスクは変化します。
子どもが生まれた時から将来を見据えて教育費を準備する場合は、投資信託のように少額を長期的にコツコツ積み立てられるものが良いでしょう。一方で、1年で100万円利益を出したいといった短期運用には向いていません。短期でお金が必要な場合は株式やFX、暗号資産などのトレードをした方がいいかもしれません。
自分がとれるリスクに合っているか
運用の目標(リターン、利回り)も大事ですが、一方で許容できるリスクについても考える必要があります。
- あまりリスクとりたくないのか、それとも積極的にリスクをとって挑戦したいのか
- 自分がいま投資に回しているお金は1割までなら減ってもいいのか、最悪なくなっても良いのか
- 投資しているお金がなくなった場合、今後の貯金はどうするのか
これらによって最適な資産運用方法も変化します。
仮に1000万円を投資するとしても、決して一つの金融商品に投資することは無いでしょう。
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言もあるとおり、万一に備えて資産を分散させ、リスクヘッジする必要があります。
その場合「手堅く運用したい700万円、そこそこのリターンが欲しい250万円、ハイリスクでもチャレンジしたい50万円」など、資産をひとまとめにすることなく、投資先・配分ごとにリスクについて考えることが重要です。
それぞれの資産を、リターンの目標とリスクの許容度にあったものに配分しましょう。
代表的な運用方法のポイント解説
このように資産運用をするには、自分の「予算・目標(利回り)・リスク」の3つのポイントを押さえる必要があります。
各々にあった投資先を選ぶには、自分自身が必要なものと、金融商品ごとの特徴を把握しておかなければいけません。
ここでは預貯金以外の代表的な資産運用方法として「投資信託」「株」「債券」「ヘッジファンド」の4つに絞り、それぞれの特徴やメリットデメリットを解説します。
投資信託
投資信託は、ファンド(銘柄)ごとにあらかじめ決められたルールに則って運用されるものです。
投資信託を買うと「全米株式」や「全世界株式」といった国や地域(全体の銘柄に満遍なく)投資したり、「5G業界」や「ベンチャー企業」といった特定の業界などに投資できたりします。
※最近は「全世界株式」型の投資信託がやたらと流行っていますが、どんなものに投資するのかは、その投資信託によって様々です。
投資信託のメリットは少額から始められる点にあります。
投資信託自体を1000円程度から買うこともできますし、1つの投資信託を買うだけで、様々な会社にまとめて投資していることになるので、手軽にはじめることができます。
例えば、アメリカに投資したい時、AppleやAmazonなどの株を買うこともできますが、あくまでも1社ずつ買うとなるとリスクが高くなります。とはいえ、アメリカ中の会社の株を満遍なく買おうと思うと予算がいくらあっても足りません。
それを簡単に少額で達成できるのが投資信託です。
またNISAなどでも投資信託は購入できるため、積立たり税優遇を受けたりなどの制度を活用しやすいメリットがあります。
投資信託全体のリスクは、銘柄によるので一概には言えませんが、「全世界」や「全米」などに投資する、いわゆるインデックス型のものに限って言えば、比較的低リスクと言えるでしょう。アメリカ経済、世界経済そのものに投資している状態なので、そこまで大きなリターンは狙えませんが、一般に年2,3%程度の安定したリターンが期待できると言われています。
一方のデメリットは、やはり短期的に見ると変動するリスクが大きいため、20年30年といった長期的な視点での投資が求められる点です。景気に左右されやすい投資とも言えます。ある程度のリターンが欲しい人や、いつでも確実なリターンが欲しい人にはおすすめできません。
メリット
- 資金が少なくても投資できる(毎月1000円など)
- 手軽にバランスよく投資できる
- NISAなどを活用できる
デメリット
- 世界経済の影響を受けるため、金融危機などが起こると利益が急減するリスクがある
- 20年30年単位の長期的な目線が必要
リスク/リターン
- 比較的低リスクだが大きなリターンも期待できない
株式
資産運用といえば株式投資をまず思い浮かべる人も多いかもしれません。企業が発行する株式を購入し、企業の出資者になることができます。
株価が安い時に買い、高くなった時に売れば利益を得られます。その一方で売却せず株式を保有している間も、配当金や株主優待を受けられるのも大きな特徴です。売買益をキャピタルゲイン、保有している間も得られる利益をインカムゲインといいます。
株の最大のメリットはその自由度の高さと幅の広さです。また、投資信託もヘッジファンドも結局は間接的に株式投資をすることになるので、自分で株に投資すれば余計な手数料をかけずに運用できる点も魅力的です。
ですが、株式投資は非常に難しく、専門的な知識や分析、時間も手間も非常にたくさん費やす必要があります。常に値動きをチェックし、売買するのはもちろん、保有銘柄の管理や新規投資先の開拓までやらなければいけないことに終わりはありません。
「いい銘柄を買って長期保有する」というスタンスの人もいますが、著名な投資家ウォーレン・バフェットは以下のように述べています。
「本当によい投資先を見つけてどんな時も保有することは重要だ。ただし、良い投資先を見つけ出し判断するためには、その会社や事業について1本の論文を書ける程度には研究し理解を深める必要がある」
この発言からも株式投資がいかに難しいかがわかるでしょう。
メリット
- 企業の業績等が好調で株価が上がると大きな利益を得られる
- 売却しなくても保有している間も恩恵がある
- 直接投資する分コスト(手数料)が低い
デメリット
- 非常に難易度が高く投資する銘柄の選定が難しい
- 銘柄によってはある程度まとまった金額(10万〜数十万円)も必要
リスク/リターン
- ハイリスクハイリターン
債券
債券は国や企業などが投資家からお金を借りるときに発行するもので、国債や社債など発行元によって言い方が異なります。
債券を購入すると、満期経過後は元本に利息を乗せた形で返金されます。投資前にあらかじめ支払利息や満期日などが設定されているので、いつお金が戻る予定なのか分かりやすく、投資初心者でも理解しやすいのが大きな特徴です。
基本的には額面通りに償還されるので、元本+利子を確実に受け取ることができ、ローリスクな投資と言えます。その分上振れはないため高いリターンは期待できません。
メリット
- 発行元が倒産しない限り元本と利息が払われる安心感がある
- 業績や景気状況に左右されにくく、不景気のときに強い
- 仕組みがシンプルで投資初心者も理解しやすい
デメリット
- 発行元が倒産するとお金が戻らない可能性がある
- 途中で売却すると元本割れリスクがある
- 株式投資のように大きなリターンを狙いにくい
リスク/リターン
- ローリスクローリターン
ヘッジファンド
ヘッジファンドは投資のプロであるファンドマネージャ率いるファンドに資金を預けて代わりに運用してもらうシステムです。ファンドごとにそれぞれ特徴があり、独自の手法で着実なリターンを追求します。
投資信託と似たようなものとされる場合もありますが、ヘッジファンドの多くはパフォーマンス連動の成果報酬なので、基本的に相場に左右されるような運用はしません。
(「今年は景気が悪かったから下がってしまった」では、事業として成立しないので)
ファンドごとの専門性を活かした銘柄選定やポートフォリオの構築で、どんな市況でも安定したリターンが期待できます。
一方のデメリットは、手数料の高さと投資ハードルの高さです。専門的で高度な運用をお願いする分、機械的に売買する投資信託などと比べても手数料は高くなります。また、中長期的に資金を安定させるために比較的少人数からまとまった出資を募集するため、最低1000万円程度にハードルが設定されていることも珍しくありません。
メリット
- プロに任せて高いリターンが期待できる
- 景気に左右されない安定したパフォーマンスが期待できる
- 運用をお願いすることになるので手間も時間も取られない。初心者も安心して投資できる
デメリット
- 投資のハードルが高い(最低1000万円)
- 優良なファンドを見つけ出すのが難しい(証券会社などを介さず個別に問い合わせる必要がある)
リスク/リターン
- ローリスクミドルリターン〜ミドルリスク・ハイリターン
おすすめ投資手法 – 投資初心者はまずコレをやろう-
資産運用は、自分に合ったものを選ぶことが重要ですが、とりあえず投資初心者がはじめるべきおすすめを2つここでは紹介します。
1つは「投資信託」です。これはまだお金に余裕のない人、運用資金が小さい人におすすめできます。
資産運用は長い時間をかけてゆっくりコツコツと積み上げていくことが何より重要です。運用資金が多くなくても、少しずつでも早く投資を始めることは、将来的に大きな差を産むことになります。
運用資金にまだ余裕がない人は、まずは少額からはじめやすい「投資信託」を検討してみてください。
特に、分散投資されていてリスクの少ない「インデックス型」の投資信託がおすすめです。
インデックス投資は日経平均株価やS&P500などの指標に連動して、それぞれ構成する銘柄に分散投資できるのが強みです。投資対象が決まっているので、ゼロから運用先を検討する手間がかからず、手数料を軽減できるメリットがあります。
株やFXなども比較的少額から始めることができますが、こちらはリスクが高く専門的な知識も必要になるので、初心者にはあまりおすすめできません。
また、投資信託はiDeCoやNISAなどの税制優遇がある制度が活用できるメリットもあります。こちらは20代30代などの若年層に向いています。
投資初心者だけれども、今まで運用してこなかっただけで、ある程度お金に余裕がある、十分な運用資金があるという人は「ヘッジファンド」がさらにおすすめです。
ヘッジファンドであれば、5年10年単位の中期でリターンが期待できるので、40代50代などの中高年に向いています(投資信託の場合、経済の動きを考えると20年30年単位でじっくり構える必要があります)
最低金額のハードルは高いですが、お金に余裕のある中高年世代であれば、より着実にプロにお願いできるヘッジファンドは非常におすすめできます。
まとめ
資産運用の手段は、ここでおすすめしたもの以外も含めてたくさんの種類があります。そのため、どれから始めたらいいか分からず悩むこともあるかもしれません。
「何に投資するべきか」ということばかり考えてしまう人が多いですが、まずは自分自身の「投資の目標」や「許容できるリターン」「運用資金」といった足元の確認から始めましょう。
- いくらを何年間でどれくらいまで増やしたいのか
- その間どの程度のリスクが許容できるのか
をしっかりと把握することが先決です。その上で、一般的な投資手法の特徴を理解し、自分にあった方法を選びましょう。
投資初心者の場合
- まだお金に余裕のない若者は「投資信託」
- 比較的まとまった資金の運用を検討している中高年は「ヘッジファンド」
がおすすめできます。自分に合ったものを選ぶためにも、まずは自分自身のことを把握することから始めましょう。