投資家の2つのパターン
みなさんは「投資」と「トレーディング(trading)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
日本語と英語の違い程度に捉えて、同じように使っている人も大勢いるでしょうが、実はこの2つの言葉に分けて表されるように、投資・トレーディングをしている人は大きく2つのタイプに分けられます。
私自身、友人などと「投資」の話をすると、
などと聞かれることがあります。
ですが、私の投資スタイルはいわゆるトレーダー的なものでは無いので、画面を並べて張りつくことはないですし、銘柄の質問にも答えられず困ることがあります。
いわゆる「投資家」と呼ばれる人たちと、「トレーダー」と呼ばれている人たちは、根本的に考え方も行動も異なります。
今回は、この2つの違いについてハッキリと分けて詳しく解説していきたいと思います。
本記事では、わかりやすさを追求し、
- 投資/投資家
- トレーディング/トレーダー
という2つの言葉に分けて説明・解説していきますが、厳密な定義はなく、あくまでも筆者個人の呼称をベースに書き進めていきます。
単純に日本語と英語の違いとして捉え、あまり考えずに同じ意味で使っている人もいますが、表面的な言葉の違いに左右されず本質的な違いを考えていきましょう。
投資とトレーディングの違い
さっそく投資とトレーディングの違いについて解説していきたいと思います。
本記事(筆者の解釈)では、投資とトレーディングを以下のように定義します。
投資とは
「投資対象について詳しく理解し、集中して中長期的に資産を投入し続けること」
トレーディングとは
「相場や流れの中で、狙い所を見極め、その時その時で利益を最大化するために売買すること」
それぞれ詳しくみていきましょう。
投資とは
投資は以下のように定義しました。
投資とは
「投資対象について詳しく理解し、集中して中長期的に資産を投入し続けること」
つまり、投資をする人たち(=投資家)は、分析・研究を重ねて対象(会社)を深く理解し、「価格(株価)以上の大きな価値がある」と考えられるものに対して資産を投じます。
「投資」という言葉は、株式投資や不動産投資以外にも、「事業投資」や「人材への投資」「未来への投資」など、そこに資金を投入することに価値があるときに使用されます。
投資において重要なのは、そのものの価値を見極めることです。
トレーディングとは
一方のトレーディングは以下のように定義しました。
トレーディングとは
「相場や流れの中で、狙い所を見極め、その時その時で利益を最大化するために売買すること」
つまり、トレーダーと呼ばれている人たちは、その内容がどんなものなのかを理解せずとも、相場の動きから資金を充てることができます。
チャートと呼ばれる株価の値動きや取引量などから傾向を判断し、細かく売買することで利益を積み上げていきます。
彼らが注目しているのは、その会社の事業内容や価値・実力ではなく、「今どれくらい来ているのか」「今後どれくらい伸びそうなのか」「どの程度で頭打ちになるのか」といった流れや空気感です。
極端な話、チャートだけを見て判断する時、その会社の経営者や製品・サービスについて知る必要はありません。
投資の考え方と成功のポイント
投資が「対象を深く理解しして価値あるものに資産を投じるもの」だということがわかりました。
「投資」において重要なポイントはどこにあるでしょうか。偉大な投資家の言葉をヒントに紐解いていきましょう。
投資のポイント
投資において最も重要なのはそのものの価値を見極めることで、いわゆる「ファンダメンタルズ分析」に分類されます。
特に株式投資においては、会社の価格は「株価」として明らかになっているので、その会社の価値の把握・算出に全力を注ぐことになります。
そのため、投資を成功させるには、候補となる会社について徹底的に調査・分析し、誰よりもその会社のことを深く・詳しく理解しなければいけません。
投資の神様とも言われている、世界最高の投資家の1人であるウォーレン・バフェットの
という格言はあまりにも有名です。
また、圧倒的な調査と分析によって、価値があると断言できる投資先が見つかったのであれば、そこに集中的に資産を投じるのも、投資の特徴です。
よく「分散投資=リスクヘッジ=良い」と闇雲に分散投資を評価している人がいますが、これは間違いです。
確かに、投資対象を分けることでリスクは回避できますが、一方で利益を獲得するための機会損失をしていることも忘れてはいけません。
数十億円〜数百億円を運用しているようなヘッジファンドでも、実際の投資先は3〜5社程度だったりします。
特に投資においては、全身全霊を注いで企業研究することが重要であり、「全財産突っ込んでもいい」と思えるくらい価値がある会社を見出すことが最優先です。
このように、自信を持って資産を投じれる投資先を見つけたら、じっくりと収益機会(=株価が上がる時)を待ちましょう。
いわゆる「buy & hold(買って持つ)」のスタイルで保有株式を増やしていくのが、投資の王道です。
自信を持ってその会社の価値を見出し、投資すると決めたのであれば、それを買い付ける株価は低ければ低いほどお買い得です。
つまり、株価が下がった時は、含み損を悲観するのではなく、買い増しのチャンスと捉えるのが投資家の考え方です。
- より深く正確に投資対象の価値を見極める
- 価値があると考えられるものに集中的に資産を投入する
- 中長期目線で価格(株価)が上がるまでしっかりと保有する
= buy & hold - 値が下がっている時はむしろ買い増しのチャンス
投資家の特徴
投資対象の調査・分析・研究が主な作業となる投資家は、チャートではなく、決算資料や製品・取引先の情報、提携先、ライバル企業、関連するテクノロジーなど、その会社・事業に関するあらゆる情報を精査する必要があります。
そのため、後述するトレーダーのように画面を並べてチャートを睨みつけ、相場に張り付くようなことあまりありません。
むしろ、集中して投資している投資先の会社に、株主として訪問するなど、市場外での活動が多くなる傾向にあります。
ある投資家は、気になる会社があった場合、必ずその会社の製品を買って使用したり、サービスを実際に使ってみて判断するそうです。
投資先の候補となる会社を探し、調査・分析している間は多忙ですが、一度魅力的な投資先を見出して資産を投じた後は、意外と時間の余裕がある人も珍しくありません。
もちろん、都度情報をチェックしたり、新たにより有力な投資先を探したりしますが、相場の時間などに縛られにくいのも投資家の特徴です。
トレーディングの考え方と成功のポイント
トレーディングは「相場を先読みし、流れに乗っかってその時そのときの利益を追求していくもの」で、いわゆる「テクニカル分析」に分類されます。
トレーディングの考え方やポイント、トレーダーの特徴についても見ていきましょう。
トレーディングのポイント
トレーディングで重要なのは、いかに素早く正確に相場を読みとき、次の変化が起こる前に最善の一手を打てるかどうかです。
そのためトレーディングを成功させるには、常に最新・最速の情報を追い続ける必要があります。
相場は絶えず変化しているので、最低限市場(マーケット)が空いているうちは相場に張り付いている必要があります。
複数の画面を並べて、様々なチャートを常に監視しているようなスタイルの人たちはいわゆるトレーダーに多い傾向があります。
自身が注目・売買している株式のチャートをチェックすることも重要ですが、株価に影響を与えるものは多岐にわたります。
為替や金利、雇用統計、経済政策 etc. 常に様々な情報にアンテナを張り、最新の情報をチェックしながら即座に対応することが求められます。
トレーディングでは、過去の経験や数値的な指標を元に経験則的に先を読むことで利益を追求します。
そのため「打率を上げること」が重要であり、たくさん振ることが求められ、複数の株式に「分散投資」することが重要になります。
確実に打てるボールを待つ(探し出す)「投資」とは正反対の考え方です。
また、極端な話、買っている/売っている株式に対しての根拠や愛着、会社の理解があまりないこともザラなので、短期的に売買することが一般的です。
「利確」や「損切り」という考え方を持ち、下げ相場で損切り売却するのは主にトレーダーです。
- 常に最新の情報をキャッチし、最速で対応することが重要
- 相場に張り付いて株価の値動きを常にチェックしている
- 複数の会社に分散投資して確率を高める必要がある
- 利確や損切りなどをしながら短期的な売買を積み重ねていく
トレーダーの特徴
トレーダーは、チャートの先読みこそが真骨頂であり、様々なツールを駆使して分析を重ねます。
一般的なトレーダーは、相場が空いている時間こそが正念場であり、その時間(9〜15時)に全勢力を注ぎ込みます。
相場が動く限りは気が休まらない一方で、株価が動かない時間帯は比較的余裕があることもあります。
ただし最近は、海外の市場にも簡単にアクセスできるようになったことで、実質24時間気が休まらない人も増えてきているようです。
確認する情報も、決算情報(売上や資産etc.)や製品、経営に関するものではなく、テクニカル指標(移動平均線やボリジャーバンド、ローソク足、出来高指標etc.)を重視します。
よくSNSで「3ヶ月で〇〇万円儲かりました!ノウハウを知りたい人はDMください」といった胡散臭いアカウントを目にしますが、基本的にこういった類のものはテクニカル分析をベースにしたトレーディングをしている人が多いです(テクニカル分析をしている人みんなが怪しいわけでも胡散臭いわけでもないですよ)
テクニカル分析はとっかかりやすく、ゲーム感覚でチャートを追っかけることもできるため特に投資初心者が陥りやすい傾向にあります。
(実際FXを体験できるアプリなどもありますが、あれらも全てチャートを見て遊ぶゲームのようなものです)
ですが、実際の相場の読みはそんなに簡単なものではなく、ビッグデータを駆使する最新のAIでも半日先の未来は見通せません。
とっかかりやすいことと、成功しやすいことはイコールではないので生半可な気持ちで手を出さないよう注意してください。
[まとめ]投資とトレーディングの比較
ここまで見てきた「投資/投資家」と「トレーディング/トレーダー」の違いを一覧で比較してみましょう。
投資/投資家 | トレーディング/トレーダー | |
考え方 | 確実に打てるボールを見出す | 確率を上げてたくさん振る |
分類 | ファンダメンタルズ分析 | テクニカル分析 |
ポイント | 会社・事業の価値 | 相場の動き |
重視するもの | 決算資料、製品情報、経営情報 etc.(ミクロ情報) | チャート(値動き)、出来高、金利、為替 etc.(マクロ情報) |
ポートフォリオ | 集中投資 | 分散投資 |
投資スタイル | buy & hold(長期保有) | 短期的な売買の積み上げ |
値下がり時の対応 | 割安で買い増しのチャンス | 損切りして次の対応へ |
投資作業 | 各種資料を調査・分析 | チャート、画面と睨めっこ |
活動時間 | 投資先が見つかるまでは集中 | 相場が空いている間集中 |
それぞれに一長一短はありますが、どちらが優れているというわけではありません。
ですが、一言に「投資、トレーディング」といっても様々なスタイルや考え方があり、混同してしまうとあらぬ誤解や衝突を招くことになります。
Twitterなどでたまに平行線の討論しているしている人がいたりしますが、そもそも前提が異なっていることもよくあります。
また、人によっては、投資(ファンダメンタルズ)とトレーディング(テクニカル)を部分的に融合させている人もいれば、両方を並行して進めている人もいます。
投資・トレードには様々な考え方があることを理解し、その特徴をきちんと把握した上で、ご自身の資産運用をどのようにするのかを考えていくことが重要です。