今回は「セゾン資産形成の達人ファンド」について解説していきます。
セゾン資産形成の達人ファンドは、セゾン投信株式会社(以下:セゾン投信)が運用している株式を投資対象にした投資信託です。
投資対象地域は、グローバルで日本を含みます。
投資している業種は、特定の業種に偏ることなくヘルスケア、情報技術、一般消費財サービスなど様々な業種に分散して投資を行っています。
このような投資を行うことで世界経済の成長を取り込み、投資元本の長期的な成長を図るように運用している投資信託、それがセゾン資産形成の達人ファンドです。
セゾン資産形成の達人ファンドは、その名前が示すように「資産形成」を考えている人に向けて設定された投資信託になり、セゾン投信は積立投資を推奨しています。
セゾン資産形成の達人ファンドの基本情報と主なリスク
セゾン資産形成の達人ファンドの基本情報は下表の通りです。
<ファンドの基本情報>
名称 | セゾン資産形成の達人ファンド |
運用会社 | セゾン投信株式会社 |
運用方針 | 信託財産の長期的な成長を図ることを目的に運用 |
主な投資対象 | 株式(投資信託証券) |
投資対象地域 | グローバル(日本を含む) |
投資形態 | ファンド・オブ・ファンズ |
決算頻度 | 年1回 |
手数料 | 購入時手数料:なし |
信託報酬:年1.34%±0.2%程度 | |
信託財産留保額:基準価額×0.1% | |
為替ヘッジ | 原則なし |
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|セゾン資産形成の達人ファンド
また、基準価額を変動する主なリスクとして「価格変動リスク」「為替変動リスク」「カントリーリスク」「信用性リスク」「流動リスク」の5つが挙げられています。
セゾン資産形成の達人ファンドの特徴
セゾン資産形成の達人ファンドは、つみたてNISAの対象商品になっています。この点から「長期」「積立」「分散」を強く意識した運用をする投資信託であることがわかります。
ゼゾン資産形成の達人ファンドの特徴は以下の4つです。
- 投資対象は株式
- 国際分散投資
- 複数のアクティブファンドに投資
- 原則、為替ヘッジなし
それぞれ詳しく見ていきましょう。
投資対象は株式
セゾン資産形成の達人ファンドの投資対象は株式になりますが、直接個別の株に投資をする方はとっていません。
後の特徴のところで詳しく見ていきますが「ファンド・オブ・ファンズ」という投資形態を採用しファンドを通じて間接的に長期的に高い成長(リターン)が期待できる株に投資をしています。
ファンド・オブ・ファンズ方式とは、そのファンドが個別の株式や債券などに直接投資をせずに、株式や債券に投資を行っている別のファンドに投資をします。ファンド・オブ・ファンズとありますように、複数のファンドに対して投資をする運用方式です。
国際分散投資
ゼゾン資産形成の達人ファンドは、北米・欧州・日本などの先進国を中心に新興国を含めた国際分散投資を行っています。
2023年3月11日使用開始の投資信託説明書(交付目論見書)で国/地域別投資比率(2022年12月30日現在)を見ますと、米国を含む北米が42.5%と最も高く、次に欧州26.1%、新興国15.8%、日本13.1%、日本を除く太平洋2.6%の順になっています。
出典:投資信託説明書(交付目論見書)|セゾン資産形成の達人ファンド
また、業種に関してもAIやIoT、バイオなどに関連する、今が旬な業種に偏ることなく、幅広い業種に分散投資を行っています。
ここでも、上記の投資信託説明書(交付目論見書)を参考に見ていきますと、2022年12月30日時点では、11業種に分散投資されています。この時点で最も比率が高い業種はヘルスケアの22.1%、次いで情報技術の20.6%、一般消費財・サービス14.6%、資本財・サービス12.9%です。
出典:投資信託説明書(交付目論見書)|セゾン資産形成の達人ファンド
ただし、上記の国・地域別投資比率や業種別投資比率の割合は固定ではなく、長期的な視点で各地域・国の市場規模や市場の成長性などを加味しながら見直しを行っています。
アクティブファンドに投資
セゾン資産形成の達人ファンドが選定しているファンドは、個別銘柄を選別して投資を行うファンドや、マザー・ファンドに投資をするファンドで構成されています。全てアクティブファンドになり、市場全体の値動きに連動した運用をするインデックスファンドへの投資はおこなっていません。
ファンドを選ぶ基準は、以下の3つで、セゾン資産形成の達人ファンドの投資信託説明書に記載されています。
- 企業分析をしっかりおこなっていること
- 長期的な視点で運用されていること
- 費用が適正なこと
2022年12月30日現在の選定されている運用会社は、
- バンガード社
- アライアンス・バーンスタイン・エル・ピー
- ブラウン・ブラザーズ・ハリマン・アンド・コ―
- FSSAインベストメント・マネージャーズ
- フォントベル・アセット・・マネジメント・アー・ゲー
- コムジェスト・アセットマネジメント株式会社
- スパークス・アセット・マネジメント会社
の7社です。
上記の7社から投資対象として選ばれたファンドが以下の11ファンドになります。
国/地域別でみていきますと、北米は
- バンガード 米国オポチュニティファンド
- アライアンス・バーンスタイン SICAV-コンセントレイテッドUSエクイティ・ポートフォリオ
- BBH・ルクセンブルグ・ファンズ・コア・セレクト
の3ファンドです。
投資信託説明書に記載されている2020年12月20日時点のそれぞれのファンドの投資比率を国/地域別で見ていきますと、
北米への投資では
- バンガード 米国オポチュニティファンド:20.6%
- アライアンス・バーンスタイン SICAV-コンセントレイテッドUSエクイティ・ポートフォリオ:9.8%
- BBH・ルクセンブルグ・ファンズ・コア・セレクト:9.7%
となっています。
欧州では、「コムジェスト・ヨーロッパ・ファンド80(適格機関投資家限定)」の1ファンドのみ選定され、比率は26.2%と投資比率がセゾン資産形成の達人ファンドの中で最も大きなファンドになっています。
日本では、
- スパークス・集中投資・日本株ファンドS(適格機関投資家限定)
- スパークス・長期厳選・日本株ファンド(適格機関投資家限定)
- コムジェスト日本株式ファンド(適格機関投資家限定)
の3本で運用がされています。
それぞれの投資比率は、
- スパークス・集中投資・日本株Sファンド(適格機関投資家限定):3.0%
- スパークス・長期厳選・日本株ファンド(適格機関投資家限定):4.4%
- コムジェスト日本株式ファンド(適格機関投資家限定):4.5%
になります。
新興国と日本を除く太平洋地域では、
- コムジェクト・エマージングマーケット・ファンド90(適格機関投資家限定)
- FSAAアジア・フォーカス・ファンド
- フォントベル・ファンド-mtxサスティナブル・エマージング・マーケット・リーダーズ
の3ファンドが選定されています。
それぞれの投資比率は、
- コムジェクト・エマージングマーケット・ファンド90(適格機関投資家限定):5.0%
- FSAAアジア・フォーカス・ファンド:10.9%
- フォントベル・ファンド-mtxサスティナブル・エマージング・マーケット・リーダーズ:3.9%
になります。
以上の11ファンドのうち8つは個別株に投資をするファンドですが、コムジェスト・アセットマネジメント株式会社が運用している3ファンド「コムジェスト・ヨーロッパ・ファンド80(適格機関投資家限定)」「コムジェスト日本株式ファンド(適格機関投資家限定)」「コムジェクト・エマージングマーケット・ファンド90(適格機関投資家限定)」はマザー・ファンドに投資を行うファミリーファンド方式で運用されています。
また、上記11ファンドに運用先が固定されているわけではなく、投資先ファンドを管理しているセゾン資産形成の達人ファンドのポートフォリオマネージャーが、投資先の候補となるファンドの調査を継続的に行っています。
原則為替ヘッジなし
為替ヘッジをしないので、円安が基準価格の上昇要因に、円高が基準価格の下落要因になります。
しかし、長期で高いリターンが期待できる株式に投資する場合、為替変動リスクが短期投資に比べ小さくなるため為替ヘッジが不要と考えているのでしょう。
以上の4つがセゾン資産形成の達人ファンドの特徴になりますが、セゾン資産形成の達人ファンドをもっとよく知るためにセゾン投信についての理解も深めておきましょう。
セゾン投信とは
セゾン投信株式会社(以下:セゾン投信)は、2006年6月12日に設立された比較的新しい運用会社です。業務内容は、投資信託の設定と運用及び販売になります。
2007年3月から営業を開始し、その時点で「セゾン資産形成の達人ファンド」と「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド(現:セゾン・グローバルバランスファンド)」の設定と運用を開始しました。
2023年5月26日現在、「セゾン資産形成の達人ファンド」「セゾン・グローバルバランスファンド」に加えて2022年2月1日に設定と運用が開始された「セゾン共創日本ファンド」の3本の運用と販売を行っています。
比較的新しい運用会社ということもあり、大手の運用会社のように数多くのファンドを運用していないという特徴があります
それぞれの運用資産残高は、セゾン投信のホームページで確認しますと、2023年4月20日時点で
- セゾン・グローバルバランスファンド:約3,600億円
- セゾン資産形成の達人ファンド:約2,400億円
- セゾン共創日本ファンド:約30億円
となっています。
セゾン投信の投資行動原則は「長期・積立・国際分散」の3つです。
また、セゾン投信ではリスクを軽減するための投資行動として以下の3つの方法を推奨しています。
- 定期積立プランによる購入
- 長期投資
- 定期換金サービス「セゾン定期便」の活用
定期積立プランは、毎月の積立額は5,000円から投資ができます。1,000円単位で設定や変更が可能で、年2回まで増額もできるサービスになります。
定期換金サービス「セゾン定期便」は、保有している投資信託を毎月または隔月で換金するサービスです。
ただし、定期積立プラン、定期換金サービスともセゾン投信が提供しているサービスなので、他の金融機関でセゾン資産形成の達人ファンドやセゾン・グローバルバランスファンドを購入したら利用することはできませんので注意しましょう。
セゾン資産形成の達人ファンドの特徴・注意点
ここでは、セゾン資産形成の達人ファンドに投資をする時の注意点やメリット/デメリットについて見ていきます。
セゾン資産形成の達人ファンドに投資する際の注意点として、一度に多額の投資を行わないということがあります。
これは、セゾン投信株式会社の代表取締役会長CEO中野晴啓氏が「トコトン長期投資」「コツコツ積立投資」「地球丸ごと国際分散投資」という投資哲学を持たれて、それに基づいてセゾン資産形成の達人ファンドを設定し運用しているからです。
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|セゾン資産形成の達人ファンド
またセゾン資産形成の達人ファンドは、AIやIoT、半導体など成長ができる業種や分野に集中投資をするファンドではなく、多くの業種から長期的な視点で成長が期待できる株式にファンドを通じて投資するファンドです。
そのため、5年程度の比較的短い投資期間で高いリターンを目指す投資信託ではありません。
セゾン資産形成の達人ファンドは短期中期で高いリターンを狙っている投資家の方には向かない投資信託と言えます。
セゾン資産形成の達人ファンドのメリット4つ
メリット1:長期積立ができる
1つ目のメリットは、信託期間(運用期間)が無期限なので長期でこつこつ積立投資ができる点です。
月々の収入に少しでも余裕資金があればすぐに投資を始めることができます。セゾン投信を利用すると「定期積立プラン」で5,000円から積立投資をスタートできます。
メリット2:価格変動リスクが小さい
2つ目のメリットは、セゾン資産形成の達人ファンドはアクティブファンドでありながら、各市場のインデックスよりも価格変動幅(価格変動リスク)が小さい点です。
下表は各市場とセゾン資産形成の達人ファンドの標準偏差を2007年3月の開始時期から年換算標準偏差を比較したものです。
参考:セゾン投信|セゾン資産形成の達人ファンドの魅力を解説!
標準偏差とは価格変動の振れ幅を表している数値で、この数字が小さいほど安定している=リスクが小さいと見ることができます。
セゾン投信のサイト「セゾン資産形成の達人ファンドの魅力を解説!」を確認すると、セゾンは、新興国株式はもちろん、日本株式全体や世界株式よりも、この標準偏差が小さくてリスクが低い となっています。
メリット3:つみたてNISAの対象
3つ目のメリットは、世界の株式の投資をするアクティブファンドで「つみたてNISAの対象商品」となっていることです。
つみたてNISAの対象となっているものは、セゾンの他には「キャピタル世界株式ファンド(DC年金つみたて専用)」1つしかありません。
つみたてNISAの対象商品なので、2024年から始まる新しいNISAのつみたて投資枠でも問題なく投資を続けていけます。また、セゾン資産形成の達人ファンドは、NISA(一般/ジュニア)、つみたてNISA、課税口座(特定/一般)のどの口座でも運用ができますので、新しいNISAの投資枠を超えても安心して運用を継続することが可能です。
メリット4:レポートが充実
4つ目のメリットは、月次の運用レポートが他社の投資信託に比べ充実している点です。セゾン資産形成の達人ファンドの月次レポートを毎月読むことで、確実に投資リテラシーを高めていくことができます。
セゾン資産形成の達人ファンドの月次レポートは要約版と詳細版が作成されています。
要約版は3ページで市場動向(株式・為替)、基準価額と純資産総額、騰落率の表、投資している各ファンドの分配状況がわかる円グラフ、運用状況に関する説明などがコンパクトにまとめられています。
詳細版は市場動向の説明に6ページ、セゾン資産形成の達人ファンドの運用状況に16ページと計22ページで構成され、通常の運用報告書以上にファンドの運用状況を毎月詳しく知ることができます。
市場動向のレポートでは、世界の株式市場の動向以外に債券市場や為替市場の動向について確認することができ、より広い視野で投資環境を見る目が養われます。
運用状況のレポートでは、国別投資比率や業種別投資比率を世界全体の株価指数を表す「MSCI All Country World Index」と比較した表が載っていて、セゾン資産形成の達人ファンドどの国や業種がインデックスに対して高いのか低いのかを知ることができます。
参考:セゾン投信 月次運用レポート詳細版(2023年5月号)
また、投資先の各ファンドの組み入れ開始日から月次レポート時点までの成績がわかる表やグラフが掲載されているので、セゾン資産形成の達人ファンドが投資しているどのファンドの成績がいいのか一目で評価できます。
参考:セゾン投信 月次運用レポート詳細版(2023年5月号)
それ以外にも、セゾン資産形成の達人ファンドが投資している各ファンドの内容についても、投資している上位10銘柄の表やファンドによっては業種別構成比率など詳しく確認できます。
参考:セゾン投信 月次運用レポート詳細版(2023年5月号)
セゾン資産形成の達人ファンドのデメリット3つ
デメリット1:運用コストが高い
1つ目のデメリットは、同じ地域や業種に投資するインデックスファンドに比べて、運用コスト(信託報酬)年1.34%±0.2%程度と高い点です。長期での運用を前提としているセゾン資産形成の達人ファンドでは、投資成果によっては大きなデメリットとなります。
デメリット2:分配金の支払いがない
2つ目のデメリットは、定期的に分配金を受け取りたい方にとってのデメリットになります。
そのような方には、設定来分配金の支払いしていないセゾン資産形成の達人ファンドの分配金政策がデメリットになるでしょう。
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|セゾン資産形成の達人ファンド
デメリット3:短中期のリターンが期待できない
3つ目のデメリットとしては、セゾン資産形成の達人ファンドは地域/国や業種に分散投資を行い長期的なリターン目指した運用を行うため、テーマ型ファンドのように短中期の投資で大きなリターンが期待できない点があります。
セゾン資産形成の達人ファンドの運用実績と口コミでの評判
ここでは、セゾン資産形成の達人ファンドの運用実績と口コミでの評判について見ていきます。
セゾン資産形成の達人ファンドの2023年4月28日現在の運用実績は、基準価額32.555円、純資産総額2,361.2億円と何度か基準価格を下げた期間がありますが、右肩上がりで推移しています。
参考:セゾン投信 月次運用レポート要約版(2023年5月号)
また、期間ごとの騰落率は下表の通りです。設定来(2007年3月15日)の年換算収益率は7.61%(概算値)なので、過去1年間の騰落率は平均を若干下回る運用成績でした。
設定来騰落率 (年換算) |
過去1カ月の騰落率 | 過去6ヶ月の騰落率 | 過去1年間の騰落率 |
225.55% (7.61%/年) |
1.93% | 4.42% | 7.38% |
参考:セゾン投信 月次運用レポート要約版(2023年5月号)
次に口コミでの評判について見ていきます。
セゾン資産形成の達人ファンドの口コミをネット検索しますと、長期積立のスタンスで投資をしている人は、ほとんどの人が投資成果の満足という良い口コミでした。
悪い口コミには、投資対象が同じ全世界株式に投資をするインデックスファンドに比べ信託報酬が高いという運用コスト面への不満という口コミがありました。
また、投資タイミングの関係かも知れませんが、セゾン資産形成の達人ファンドを一括投資や短期で投資をした人から運用成果に対する不満の口コミがありました。
参考:投資信託説明書(交付目論見書)|セゾン資産形成の達人ファンド
ただし、全体的にはセゾン投信の投資方針を理解されている人からの口コミが多く、悪い口コミより良い口コミのほうが多く見受けられました。
[まとめ]セゾン資産形成の達人ファンドおさらい
最後に、セゾン資産形成の達人ファンドについて簡単におさらいしておきましょう。
記事の冒頭にも書きましたが、「セゾン資産形成の達人ファンド」はファンド名が示すように積立投資で長い期間かけて資産形成をする人におすすめの投資信託です。
つみたてNISAや新しいNISAの積立投資枠でも運用できます。また、月次運用レポートが充実していますので、これから金融リテラシーを高めていきたい人にもおすすめします。
しかし、世界経済の成長を取り込み、投資元本の長期的な成長を図るように運用している投資信託なので、短期投資や一括投資で高いリターンを期待している人にはおすすめできない投資信託になります。
今後の注意点として、世界は米中の対立やインフレの進行などにより経済環境が変化しており、世界の株式に分散投資をするセゾン資産形成の達人ファンドもその影響を受けることが考えられます。
基準価額の下落局面が訪れても焦らず長期的な視点で積立投資を継続できるよう金融リテラシーを高めておきましょう。