「今、インドが熱い」
そんな話を聞いて、投資先としてインドを検討された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
2022年から2023年にかけて
「インドの投資信託が好調」
「インドの不動産市場に投資する外国人の増加」
「インドのスタートアップ企業に外国人投資家が注目」
など、インド投資の過熱に関する情報も増え、一層注目が集まっています。
一方で「インド投資がおすすめ」と言われても、身近でない国や企業への投資はハードルも高く、多少リターンが大きい程度では踏み出せない、という方も多いはず。
そこで今回は、インドへの投資のメリットやデメリット、オススメの投資方法までを解説しながら、「本当にインド投資はオススメなのか?」という疑問にお答えしていきたいと思います。
この記事を通じてインド投資への理解を深めて、ぜひ自分の投資・資産運用の中で有効に活用してみてください。
- こちらもチェック:世界2位の経済大国の中国株式市場の魅力を徹底解説
インド投資のメリット/チャンス
- これまで/これからの成長期待値により、株価成長のチャンス
- 世界からの注目度が高く、様々な投資先・金融商品がある
インド投資のデメリット/リスク
- 既に注目度は高くなっており、株式の割高感が強い
- 新興国投資であれば、中国やインドネシア・ベトナムなど、他にも最適な投資先がある
インドに投資をするためにはどうする?
- 個別の株式投資をする際は「ADR」
- コストを抑えるなら「ETF」
- 高いリターンが欲しいのであれば「専門ヘッジファンド」
インド投資のメリット/チャンスは?
まずは、インドへの個人投資(特に株式投資)について、本当にメリットやチャンスがあるのかを確認していきましょう。
2012年から2021年の10年間を見てみると、インドの主要な株価指数である「S&P BSE Sensex」での平均リターンは約8〜9%でした。
一方で、同時期の東証株価指数(TOPIX)のデータを見てみると、平均リターンは約5.4%です。
つまり、株式市場の全体感として、日本よりもインドの方が株価が大きく上昇しているということがわかります。
日本企業への株式投資よりもインド企業への株式投資を行った方が、大きなリターンを得られる可能性が高く、投資先として期待できそうです。
なぜ、インド株は好調なのでしょうか?
それはシンプルに「インド経済の成長率」や「さらなる成長に対する潜在能力のチャンス」によるものです。インドの株式投資がオススメできる背景を、詳しく見てみましょう。
ポイント①:インド経済の大きな成長
インド経済は現在大きな成長を遂げています。
コロナ禍の影響が特に大きかった2020年を除いて、日本やアメリカとの比較をしてみると、
2019年の経済成長率
- アメリカ:2.2%
- 日本:0.2%
- インド:4.2%
2021年の経済成長率
- アメリカ:5.7%
- 日本:2.8%
- インド:8.4%
と、日本・アメリカなど主要先進国と比べて、圧倒的に高い経済成長率を誇っています。
経済成長を支えているのは企業の成長。そして、企業の成長によって企業価値である株価は上昇。これだけの経済成長を成し遂げていれば、株価が上昇するのも当然です。
また、現在GDPが世界5位のインドは、2027年には日本やドイツを抜き、中国、アメリカに次ぐ世界3位に、2050年にはアメリカを抜き、中国に次ぐ世界2位の経済大国になると言われています。
インドは、今後も圧倒的な経済成長を続ける見込みが高いとされており、それに伴ってますます株価が上昇すると期待されています。
ポイント②:さらなる成長の潜在能力
インドの経済/株価のさらなる成長の裏付けとして、以下のようなポイントが注目されています。
例えば、インドの人口増加や人口動態について。
インドの人口は、2023年には中国を抜いて世界1位になると予測されています。
人口が多い/増加するということは、国内にそれだけ大きな市場が存在し、これからも市場が拡大するということであり、企業にとっての成長のチャンスであると言えます。
また、人口は生産力にも直結します。単純な人手として生産力を担保し企業成長の糧となるのはもちろんのこと、インドの優れた教育、若年人口の多さなどを基盤とした、起業家や経営者、IT・技術分野などの先端領域人材が豊富なことでも注目されています。
GoogleでCEOを努めるスンダー・ピチャイに始まり、エンジニアでキャリアをスタートし現在はMicrosoftのCEOを努めるサティア・ナデラや、AdobeのCEOであるシャンタヌ・ナラヤンなど、世界的・先進的なIT企業で重要な役割を果たすビジネスマンを、インドは多数輩出しています。
インドは、人材の量・質を共に担保しながら経済成長を進めていくことのできる国だと期待されています。
こうした理由から、好調な株価推移を見せているインドは、今後、投資先の選択肢を考える上で、見逃せない国になるのは間違いないでしょう。
また、注目すべきは株式投資だけではありません。これだけ経済が成長しているため、不動産投資・債券投資なども大きな広がりを見せていますし、インド株を対象とした投資信託やヘッジファンドなどの選択肢も増えてきています。
オススメの投資手法は後述しますが、さまざまな投資手法があることを念頭にいれて、どんな投資をしていくかを考えることが重要にもなります。
インド投資のデメリット/リスクは?
インドの魅力的な面をみてきましたが、反対にインドへの個人投資についてのリスクやデメリットについても確認していきましょう。
まず一つ挙げられるのは、新興国投資における一般的なリスクであるインフレや政治面でのリスクです。
経済成長が高い国は投資先として有望である一方で、それだけインフレリスクや政治リスクも上がるため、基本的には大きなリターンに対してリスクがあると言われています。
また、その国・企業の情報を取りづらいというのも一般的なデメリットです。
インドの企業について、日本企業ほど知っている人はなかなかいないですよね。どこに投資をするのかを判断する情報を新たに取得するコストは日本企業への投資よりも高くなってしまいます。
ただ、今回は一般的なリスクでなく、インド投資ならではの課題にフォーカスをしたいと思います。
それは「インド株は成長が見込まれる一方で、その成長も見越して既に高い価格がついている」という、いわゆる割高度に関する問題です。
この例えで言えば
「インドはすでに150円、200円になっているのでは」
「他の新興国は将来200円になるが、今は100円で買えるのではないか」
と言われているのが「割高度」の問題です。
投資をするのであれば、最もリターンが大きく、リスクの少ないものを選びたいというのは、当たり前のこと。
今後の大きな成長が見込まれる海外市場への投資は、大きなリターンが期待できますが、インドへの投資は、その中の選択肢の一つにすぎません。
インド以外にも、中国、ベトナム、フィリピン、インドネシアなど、大きな経済成長を遂げ、株価の上昇も期待できる国はたくさんあります(つまり先ほどの例で言えば、100円で買えるものがあるかもしれない、ということです)
それらの国と比較をした際、インドは必ずしもナンバーワンの投資先ではないかもしれないということが考えられるのです。
これからの経済成長が期待され、新興国投資の投資先として期待されている国々のPERを見てみましょう。
PER(株価収益率)とは、株価の割安/割高感を考える際の指標の一つであり、株価を一株あたりのEPS(Earnings Per Share、一株当たりの利益)で割った値を示す指標です。詳細な説明は省きますが、簡単言うとPERが高い方が「株価が本来的な価値より高く評価されている」「割高な価格になっている」と言い換えられます。
2023年4月時点の各国のPERは以下のようになっています。
(数値は常に変動していること、異なるソースから得られたデータもあることから、参考程度にご覧ください)
- インド:31.08
- インドネシア:20.84
- フィリピン:19.83
- タイ:15.23
- ベトナム:12.98
- 中国:12.52
データを見ると、インドのPERが圧倒的に高く、国全体、株式市場全体としては割高感のある状態になってしまっていることがわかります。こうした状況の中で、敢えてインド投資をするメリットは薄いかもしれません。
2030年には中国はGDP世界1位に、インドネシアも5位に。また、タイやベトナムもTOP20前後入りが見込まれる国々です。インドと同様に高い成長率を誇り、株価も割安である国々への投資も検討すべきでしょう。
こうした割高感は、インド投資のデメリットであり、他の新興国投資と比較をした上での判断が必要だと考えられます。
また株価の割安/割高感は、必ずしも上記の指標だけでは判断できないということも、ご理解をいただければとは思います。例えば中国などは、非常に高い成長率に対しても、政策リスクや国際情勢リスクを踏まえて、株価が下がり「割安感が生まれている=今が投資のチャンスである」可能性も検討されます。
インドに投資する方法は?自分に合った方法を選ぼう
これまでインド投資についてのメリット/デメリットを見ていきましたが、実際にインド投資を行う方法について確認をしていきましょう。
まず、大前提として、投資の大きな方針は
- 自由に株式を選択して投資する「個人投資」
- 機関投資家に資産を預けて投資してもらう「投資信託」「ヘッジファンド」
の2つに大別することができます。
大きな注意点としては、現状日本においては、インドの個別株式を自由に選択して、直接取引することはできません。
そのため、上記の「個人投資」においては「ETF」「ADR」という代理的な金融商品の購入を通じて投資を行うことになります。この点が、日本株やアメリカ株への投資とは大きく異なるポイントです。
ETF
海外への投資(特に、特定の企業ではなく、国や経済全体への投資)を考えたときに、選択肢として真っ先に思い浮かぶものがETFかもしれません。
ETFは、「国や産業など特定のテーマに基づき、複数の株式銘柄をまとめたもの」を売買ですることになるので、投資信託と同じように考えることもできますが、「上場投資信託」のため、株式のようにリアルタイムで取引/売買することができます。。
「株式市場の平均成長率を目指す」といった形で株式銘柄がまとめられているケースが多いので、国/産業の成長率に応じたリターンを得やすいことがポイントです。
ちなみに現時点(2023年9月5日)で、日本で購入できるインド関連のETFは以下の全8銘柄です。
インドETF銘柄
- iシェアーズ・コア S&P BSE SENSEX インディアETF
- db xトラッカーズ ニフティ50 UCITS ETF
- NEXT FUNDS インド株式指数・Nifty 50 連動型上場投信
- iシェアーズ MSCI インディア・インデックス ETF
- リクソーETF MSCI インディア
- ウィズダムツリー インド株収益ファンド
- Direxion デイリー MSCI インド株 ブル2倍 ETF
- ヴァンエック・ベクトル・インド小型株ETF
それぞれにベンチマークとしているインデックス/指数が異なります(TOPIXと日経225のような違い)。
インドの経済指数について理解を深めるのは難しいとは思いますが、過去のチャートやファンドの規模などから良さそうだと思える銘柄を選ぶようにしましょう。
また、これらの銘柄(全8種類)は、どの証券会社でも全てを取り扱っているわけではありません。
まだ口座を持っていない人は、SBI証券か楽天証券であれば、全ての銘柄を網羅しているだけでなく、ネット証券として手数料も安いのでおすすめです。
投資信託
投資信託はご存知の方も多いと思いますが、機関投資家が個人投資家から資金を集めて投資を行い、そのリターンを返却する形の金融商品です。
ETFとは違って、上場していない株式を取り扱ったり、不動産投資をポートフォリオに入れるというケースもあり、投資方法はそれぞれの投資信託によって様々です。
ETFと同じように特定の指数(インデックス)をベンチマークとするものもありその場合、はETFとほぼ同様のものになりますが、独自の基準で銘柄を選ぶものの場合、インデックスを大きく上回る可能性もあれば、反対にインデックスに届かない可能性も考えられます。
ADR
ADRとは、海外(ここではインド)の企業がアメリカの金融機関に株式を預け、それを金融機関が証券化して、アメリカ市場で売買しているものになります。
アメリカの金融機関がインド株の代理商品を売っており、投資家はそれを購入することで擬似的にインド株に投資できるようなイメージです。
ほとんど米国株と同じような扱いなので、銘柄によってはNISAに対応しているものもあります。
インドの企業に詳しければ、成長するインド市場の中で、さらに将来性の高い会社を選び大きな利益を狙うことができます。
ただし、必ずしも全てのインド株がADRでカバーされているわけではないので、特定企業の株式を欲しいと思っても、購入できない可能性もあります。
ADRは、野村證券、SBI証券など、多数の大手金融機関/証券会社が取り扱いをしています。それぞれの機関で口座を開設することで購入が可能になりますが、それぞれの取り扱い銘柄や手数料などは異なるので、比較検討を行いながら進めることが必要になります。
ヘッジファンド
ヘッジファンドは、投資信託のように、たくさんの投資家から集めた資金をファンドがひとまとめにして運用し、出資者(投資した人)にリターンを還元するものです。
投資信託との違いは、ヘッジファンドは証券会社などを通じて販売されてはおらず、各社に直接連絡して個々に契約する必要があります。
ヘッジファンドはそれぞれに特化した専門の領域や得意分野があり、その中でプロが高いパフォーマンスを記録しています。
投資のハードルは高いですが、最も高いリターンが期待でき、インド投資に特化したヘッジファンドがあれば、最も高いリターンが期待できるでしょう。
なかなか手が届かないヘッジファンドを庶民化させたものが投資信託です。あまり馴染みのないヘッジファンドについては以下の記事で詳しく消化しいています。
投資手法の比較
「ETF」は、インドなど成長している国への投資においては、安定したリターンを得られる手法と言えるかもしれません
「株式市場の平均成長率を目指す」といった形で株式銘柄がまとめられているケースが多いので、国/産業の成長率に応じたリターンを得やすいことがポイントです。
また、既に複数銘柄をまとめられたものを選ぶだけでよいので、ポートフォリオを考えたり、個別の株式の株式の調査をしたりなどのコストは比較的低く抑えられます。
「投資信託」は銘柄ごとにあらかじめ決められたルール・基準に沿って運用されるため、銘柄選びが肝になります。
その投資信託がどんなものにどのように投資するのかを理解して選定することは重要ですが、インド投資についてはまだそこまで特化したものはなく、結局はインド市場全体に投資するようなものが中心です。
そうなってくるとETFの方が手軽でコストも抑えることができます。
「ADR」は、購入できる株に制限はあるものの、日本株やアメリカ株の一般的な個別投資と同様に考えて良いでしょう。
自分の狙った株式だけを購入できることから、腕に自信のある人向けの手法であり、ハイリターンを狙える一方、個別投資を行う際は当然その企業へのリサーチが必要で、情報収集のコストなどがかかることには注意が必要です。
「ヘッジファンド」は、プロに投資を任せる形式なので、リスク/リターンはファンドマネージャー次第。どのファンドに資金を任せるか、というのは難しい判断が必要になりますが、一度任せてしまえば、あとは全てやってもらえる、というのはありがたいポイントです。
純粋なリターン・パフォーマンスを期待するのであればヘッジファンドが最も期待できます。ただし、投資のハードルが高く数も多くないため、ファンド選びの際には注意が必要です。
まとめ
ここまで、インド投資のメリット/デメリットや、投資をする方法について紹介をしてきました。最後に再度、インド投資についてのポイントを整理していきましょう。
インド投資のメリット/チャンス
- これまでの/これからの成長期待値により株価成長のチャンス
- 世界からの注目度が高く、様々な投資先・金融商品がある
インド投資のデメリット/リスク
- 既に注目度は高くなっており、株式の割高感が強い
- 新興国投資であれば、中国やインドネシア・ベトナムなど、他にも最適な投資先がある
インドに投資をするためにはどうする?
- 個別の株式投資をする際は「ADR」
- コストを抑えるなら「ETF」
- 高いリターンが欲しいのであれば「専門ヘッジファンド」
いかがでしたでしょうか。
一定のメリットはありながらも、割高感などの懸念もあるインド投資。一方で、日本株への投資などよりは、安定して高いリターンを得られる可能性も期待できます。
これから資産運用を行いたい、投資で資産を増やしたいと思っている皆さんも、選択肢の一つとして考慮に入れてみることをお勧めします。
※今回の記事で紹介した内容は「インド株の値段が必ず上がる/下がる」など、未来の成果を確実に保証できるものではありません。これまで見てきた特徴は「あくまでも投資先の候補になりうる」という判断ができるまでです。投資の際は必ず自己責任で判断するようにお願いします。