高額資産を運用する時の注意点
一定以上の貯金ができてくると、銀行から資産運用について連絡がきます。
残高が1,000万円を超えた頃、これまでに連絡をもらったことがある人もいるでしょう。
ある程度の収入や貯蓄ができてくると投資・運用をはじめる人たちも周りに増えてきますし、そういった耳にする機会も増えてくると思います。
もちろん、まとまった資産があるのに運用をしないのは勿体無いですし、計画的に投資して資産形成をすることは非常に重要です。
何千万円も資産があるのに、全額貯金している人はいません。銀行の預金金利はほぼゼロに等しく、コツコツ稼いで貯めているだけでは何にもなりません。
ですが、日本では投資・金融について学ぶ機会も少なく、いきなり「投資をしろ」と言われても何から手をつけてよいのかわからない人も多いでしょう。
そんなときに、安易に身近なものに手を出してはいけません。
ここでは、多くの人にとって身近、あるいは手を出してしまいがちなものについて、投資する際の注意点を解説していきたいと思います。
メジャーな投資先がNGな理由とは
投資初心者やあまり経験のない人が、資産運用を始める際に「まずは〜」という気持ちで手を出してしまいやすいのが株や投資信託などの、いわゆるメジャーな金融商品です。
一般的に、よく耳にするものや、周りの人も投資しているもの、その特徴がシンプルでわかりやすいものの方が、なんとなく安心しやすい傾向があります。
ですが、そういったメジャーなものが本当に価値のある、おすすめできるものとは限りません。安易に手を出すと思わぬ失敗をすることになります。
ここでは「投資信託」と「高配当株」について考えていきましょう。
投資信託がNGな理由
投資初心者がまず最初に手を出しがちなのが「投資信託」です。
投資信託は「少額から買える」「1つ買うだけで分散投資になる」などのメリットが評価されますが、こういった投資の本質とは全く関係のないメリットを理由に投資先を選んではいけません。
そもそも、資産運用は、ある程度のまとまった資産がなければ意味がありません。
投資に充てられる金額が1万円しかないのであれば、10倍のリターンを得ても10万円にしかなりませんが、1,000万円を運用すれば10%(0.1倍)のリターンで100万円の利益になります。
投資は、運用する金額が多少増えても労力(負担)がほぼ変わらないという特徴があります。
1万円でも1,000万円でも、株を買う労力はほとんど変わりません。反対に、運用する金額が少額だからといって、分析も適当に株を買っていてはいつまで経っても利益を得ることはできないでしょう。
コツコツ運用することも意味がないとは言いませんが、まずはしっかりと稼いで貯蓄し、まとまった投資元本を確保することが重要です。
つまり「少額から始められる」という投資信託のポイントには大したメリットはありません。
また、投資信託は、それ1つが複数のファンドを介しており「分散投資」の効果がありますが、これにも大したメリットはありません。
運用する資金を複数に分けて(=分散させて)投資する方法。1つの対象に全ての資産を投資すると、一気に資産を失うリスクが高くなるが、分散させることでその被害を軽減することができるとされており、リスクヘッジの手段として有効だとされている。
そもそも、資産形成においては闇雲に分散投資をせずに、きちんとした銘柄分析と選定によって、本当に価値のあるリターンが期待できるファンドに集中して投資する必要があります。
投資の格言に「分散投資は富を守り、集中投資は富を築く」とあります。
もちろん1つの投資先に丸投げせずに、いくつかの投資先を候補にすることは大切ですが、一般的に5銘柄前後が良いとされており、闇雲に「分散投資=良い」と考えてはいけません。
そもそも投資信託は「利回りが悪く期待パフォーマンスが低い」というデータがあります。
投資信託では複数のファンドを介していたり、広報やレポーティングなどに多額のコストをかけています。その実、運用は複数の大型株に投資しているだけだったりうするため注意が必要です。
- 少額からはじめられることに意味がない
- 分散投資に意味がない
- 利回りが低い(マイナス)
高配当株がNGな理由
次に注目するのが「高配当株」です。
配当はわかりやすい利益の一つであり、株に詳しくない人がついつい気にしてしまうポイントの一つでもあります。
高配当株とは、配当利回りの高い株式のことですが、これについても「配当が高い=良い」と安易に考えてはいけません。
そもそも「配当」とは、会社の持つ資産を株主に払い戻しているものであり、配当を出せば会社の持つ資産(現金)が減るため、会社の価値はその分だけ下がります。
つまり、配当の高い株式は、その分だけ株価も下がりやすいのです。
また、会社がせっかく事業利益として貯めた現金を、活用することなく株主に還元するということは、会社としての使い道がないということです。
つまり、配当比率を高くしている会社には、事業としての伸び代があまりない可能性もあります。
実際、高配当の会社は、事業が成熟している老舗企業であることも珍しくありません。
そもそも運用の基本は、利益も積み立てて投資元本を確保ことで複利で資産を増やしていくことです。
株の利益は、株価上昇による「値上がり益」と「配当収入」を必ず併せて考える必要があります。「高配当」というキーワードに安易に流されないようにしましょう。
特に、高齢者などに対して「配当収入をインカムゲイン」にして生活費を賄いつつ運用した方が良いといった営業をしてくる人がいます。
ですが、これは大きな間違いで、配当収入(インカムゲイン)でも株価の値上がり益(キャピタルゲイン)でも収益であることに違いはありません。
値上がりした株式の一部を売却して利益を得れば同じことなのですが、心理的に直接受け取る配当の方が手軽でお得な気がしてしまうという認知の差を利用した営業テクニックの一つです。
「なんとなく」や「イメージ」で配当やインカムゲインを必要以上に高く評価しないよう注意しましょう。
- 配当が高いということはそれだけ会社の資産が減っている=価値が下がっている
- 会社が現金を還元しているということは成長余力がない可能性も
- 株の利益は「配当」と「値上がり益」をセットで考える必要がある
「高配当」と同じように一昔前に流行ったのが「株主優待」に着目する方法です。
確かに、株主優待に魅力はありますが、優待券をもらったからといって、そもそもの株価が下がってそれ以上の損失をしていては意味がありません。
投資をするときには、最も影響大きい「株価変動」を中心に、株価・配当・優待などを総合的に加味して判断するようにしましょう。
[番外編]FPや銀行に相談してはいけない理由
「投資を始めた方がいいのはわかっているけれど、よくわからないから誰かに相談したい」という人もいるでしょう。
自分自身で勉強するだけでなく、有識者に意見を聞いて相談することも非常に重要です。
そこで、金融商品だけではなく、相談先についても考えてみましょう。
まず真っ先に思い浮かぶのが銀行や証券会社の窓口だと思います。
ある程度の資産があれば銀行側から「運用してはどうですか〜」と連絡がくるので、そのままどんな投資先が良いのかを相談するのは自然な流れです。
ですが、これは絶対に注意してください!
そもそも銀行側からあなたに「運用してはどうか?」と連絡がくる理由はあなたのためを思ってではありません。
投資してくれた方が手数料などの収益を得られるためです。
「あなたのために〜」という口調でアプローチしてくるでしょうが、絶対に自分達の利益にならない活動ではないわけがありません。
彼らの勧めてくる銘柄は、投資家の利益ではなく銀行側の利益になっていることを覚えておきましょう。
同様に、最近よく耳にするようになったFP(ファイナンシャル・プランナー)にも注意が必要です。
ファイナンシャル・プランナーはお金に関する様々なことに詳しく、税金や保険から投資まで、幅広い知識であなたのことをサポートしてくれる存在ですが、安易に彼らに勧められるままに投資先を選んではいけません。
特に、無料で相談に乗ってくれるFPには注意が必要です(最近増えてきてはいますが)。
FPがボランティアで活動しているわけがありません。彼らは、そこで紹介した投資先(金融機関)からキックバックという形で手数料をもらっているのです。
つまり、そこでもFPからは投資家(あなた自身)にとって利益になる投資先ではなく、彼ら(FP自身)にとって利益になる投資先を紹介される可能性が高くなります。
もちろん、犯罪に関するものや大損するようなものを紹介していては、FP自身の評判が下がり利益が下がってしまうためそんなことはしないでしょうが、投資家の利益が最大になるようなものを紹介する保証はありません。
そこそこに満足してもらえるものであれば、自分にとっての身入りが大きいものを紹介(=営業)してくるはずです。
同様に無料セミナーなどにも注意しましょう。
もちろんそういったものに参加することを否定はしませんが、ある程度身構えて話半分に聞きに行かなくては営業の的にされてしまいます。
まとまった資産はどう運用すれば良いのか
マイナーでも価値のある投資
では、投資先を悩んだ際にはどうすれば良いのでしょうか。
メジャーじゃなもの(投資信託や高配当株)に手を出してもダメ、銀行にもFPに相談してもダメ、となったら、まずは自分で色々と調べてアプローチするしかありません。
向こうからやってくるものではなく、自分自身が能動的に探して見つけたものから選ぶようにしましょう。
また投資に関する相談は「投資家にとって正しいアドバイスをすることが彼ら自身の利益にもなる」ところにするべきです。
例えば「ヘッジファンド」などがそれに当たります。
ヘッジファンドは、成功報酬をベースにしており、ファンドとして運用益を最大化することが、そのまま投資家の利益を最大化することに直結します。
ヘッジファンドにとって、投資家は対面のお客様ではなく、同じ方向を見て進む一蓮托生の運命共同体です。
アメリカが発祥のヘッジファンドは日本ではまだまだ馴染みがありませんが、最近では少しずつ日本のファンドも増えてきています。
ヘッジファンドは一般に、募集・広告活動を行っておらず、投資の際には必ずこちらからアプローチしなければいけない(=営業してこない)点も信頼に値します。
ヘッジファンドに投資するには、
- 既存の投資家などからの口コミで紹介してもらう
- ファンドのホームページを直接調べて問い合わせる
という2つの方法があります。
まずは色々と調べてみて、興味のあるところがあれば問い合わせてみましょう。
国内のファンド事情については以下のページにまとめているので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
https://n3epa.org/recommended-hedge-funds/