円安が進む為替市場
為替市場で円安が加速しています。
日銀が、10年物国債の利回りが0.25%に上昇したことを受けて、連続指値オペを実施することを発表したことにより、先月28日(2022年3月28日)には、一時1ドル125円を突破しました。
その後1ドル121円前後まで戻したものの、120円を超える円安で推移しています。
通常、円安ドル高が進むと、アメリカ側からも調整が行われる場合が多いですが、今回のケースについては、ドルの価値が高まっているというよりかは、世界の通貨の中で日本円の価値だけが急落しているような状況にあります。
ドル円見ても「ドルが高くなってるだけだろw」というのが普通の感覚ですが、全ての通貨に対して日本円だけが暴落しているので、今回の円安のヤバさがわかると思います。セルフ経済制裁状態。 pic.twitter.com/gvePP1fRpE
— すまほん!! (@sm_hn) March 28, 2022
今後、円安はさらに加速するとも考えられており「1ドル130円までは止められない」といった見解も出るほどです。
仮に、今後も円安が続く場合、国内資産(日本円での貯蓄や、日本国内株式・不動産等への投資)ばかりを保有することは大きなリスクになりかねません。
そこで、今回は来る円安局面に備えた「海外投資」の魅力や重要性、おすすめの海外投資について具体的に解説していきたいと思います。
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為替には、金利や経済情勢、景気、地政学リスク(昨今だとロシアのウクライナ侵攻)など様々な要素が複雑に影響するため端的に解説するのは難しいです。
国債の利回りや金利と為替の関係については、改めて詳しい解説記事を書ければと思いますが、ここでは「今後も円安が進む可能性が高い」という前提だけ理解していただき、それに備えた資産運用について考えていきたいと思います。
なぜ円安だと海外投資が魅力なのか
では、円安が進む場合、海外投資の重要度が高くなる仕組みを解説していきましょう。
海外資産に投資する場合、その価格は原則「現地通貨建」です。
例えば、アメリカの株式に投資した場合価格は「米ドル」ですし、中国に投資すれば「人民元」で推移します。
例えば、人気の「VTI」(アメリカの株式市場に連動するように推移するETF)に投資するケースを見てみましょう。
5年前(2018年4月20日)VTIの価格は$137.50でしたが、2023年4月19日には$206.10にまで、5年間で+49.89%(=年平均8.4%)も上昇しています。
元々ドル建で資産を保有していた人にとっては、平均8.4%のリターンでおしまい(それでも十分すぎるリターン)ですが、日本円で投資していた場合、これに為替のリターンが追加されます。
同期間(2018月4月27日〜2023年4月20日)に、ドル円相場は1ドル109.01円→134.91円まで大きく円安に動いているためです。
2018年時点のドル円相場は、1ドル109.01円なので、買付時の価格は「$137.50 × 109.01(¥/$)= ¥14,988」です。
ですが、5年後の2023年現在は、為替が1ドル134.91円まで円安に振れています。
そのため、現時点のVTIの日本円での価値は「$206.10 × 134.91(¥/$)= ¥27,804」にまで上がっているのです。
ドル円相場が円安に振れたことにより、VTIの価格上昇以上のリターン「¥14,988→¥27,804(+85.5%=年平均13.2%)」が得られています。
VTIに投資した場合(2018年4月19日〜2023年4月20日)
- VTI:$137.50→$206.10(+49.89%=年平均8.4%)
- 為替:109.01(¥/$)→134.91(¥/$)
- 投資リターン:¥14,988→¥27,804(+85.5%=年平均13.2%)
円安が進むことで、リターンがさらに膨らむ!
これが円安時に海外に投資することで、より大きなリターンが得られる仕組みです。
外国通貨建の資本に投資している場合、極端な話その現地通貨建の価格が上がらなくても、円安が進みさえすれば、大きなリターンも期待できます。
海外投資のメリット – 分散投資とリスクヘッジ –
このように、海外に資産を分散する(海外に投資する)ことは、リスクマネジメントの面においても非常に重要です。
海外投資やFXを一括りに「危ない」として敬遠している人も多いようですが、中長期的な目で見た場合、またグローバルな視点で考えた場合、様々な国の通貨に資産を分散させることは大きなリスクヘッジになります。
海外投資が危険だと考えられている背景の一つに、FXでの高レバレッジ運用があるでしょう。
FXでは高いレバレッジ(最大25倍)をかけることができるため、少額でも大きなリターンが期待できるとされている一方、そのハイレバレッジを原因に大損失を被る人もいます。
このことから「海外投資=ハイリスク・ハイリターンのリスキーな運用」というイメージが浸透してしまったのでしょう。
ですが、実際には高いレバレッジをかけることができるだけであり、必ずしもレバレッジをかけてリスキーな運用をする必要はありません。
一概に「海外への投資=リスキー」ではないのです。
むしろ、全ての資産を国内(円建て)で保有することはリスクになり得ます。
仮に、日本株に投資し続けて、大きな資産を築けたとしましょう。
ですが、それと同時に円安が進めば、海外での購買力が低下するため、そのお金(日本円)は国内でしか力を発揮できません。
「海外にはあまり行かないから、日本円だけ増やせれば十分」と考える人もいるかもしれませんが、石油・原油や食料品をはじめ、多くの資源を輸入している日本では、円安が進めばその分値段が高くなります。
そもそも、円安が進めば日本の株価は相対的に上昇するため、パッと見の価格は上がっていても本質的に価値が上昇しているわけではないのです。
これらのリスクを回避するためにも、全ての資産を日本円で保有するのではなく、適切に海外にも資産を分散させてリスクマネジメントしていくことは、これからの社会において非常に重要度を増していくことでしょう。
海外投資しないと円安になった時ここがリスキー
- 円で資産を持っていても、海外では購買力がない
- 輸入に頼る日本では、その分価格が上がる(インフレ)ため結局意味がない
- そもそも円安時には株価は上昇傾向にあるので、本質的に利益を得ていない
注目の海外投資先
海外への投資を検討する上で、具体的に「どこの・何に・どうやって」投資をすれば良いのかわからないという人もいると思います。
そこで、世界最大の経済大国である「アメリカ」と、それに迫る勢い(※)の「中国」に投資する方法や、具体的な投資先についてここでは紹介していきます。
※2028年にはアメリカを抜いて世界1位になるとも言われています。
アメリカ – VTI –
「海外投資=アメリカ」と考える人は多いでしょう。
アメリカは、世界最大の経済大国であり、「為替=ドル円相場」で語られるほど、日本にとっても身近な存在です。
アメリカに投資する方法は様々あり、最近はアメリカ株も日本のネット証券などから簡単に買うことができるようになりましたが、ここでは「VTI」を紹介します。
VTIは「ETF(Exchange Trade Fund)」と呼ばれる、いわゆる「上場投資信託」の一つであり、アメリカの株式全体の平均に連動するように運用されます。
VTI(ETF)は手数料も安く売買も簡単なため、幅広い投資家から人気があり、最近特に注目を集めています。
「アップル株が〜」「Amazon株が〜」という話を耳にすることもあるでしょうが、よほどの事情通でもない限り、情報を得にくい海外の個別銘柄に投資するのは簡単ではないでしょう。
先日もイーロン・マスク氏がTwitter社の株式を大量(9%)に保有したことがニュースになり、株価が26%も変動しました。
VTIの詳しい解説や魅力については、以下の記事で詳しく解説しているので興味のある人はぜひ参考にしてみてください。
中国 – Orient Management –
アメリカと並んで、注目の海外市場である「中国」についても考えてみましょう。
中国は、経済成長めざましく、アメリカを抜いて世界一となるのも黙然とされています。
圧倒的な経済成長には、国土や資源、人口(労働力)など様々な要因がありますが、一方で、株式市場の成長はやや遅れており、実態経済に比して、まだまだ成長余力を残しています。
経済成長が株式市場に反映され、株価が上がるまでには一般的に少し時間がかかると言われています。
中国の現状は決して不自然ではなく、むしろ爆発的成長の兆しが見えている状態です。
⬇︎中国経済について詳しくはこちら⬇︎
そんな中国の株式市場ですが、日本から投資するのも不可能でないものの、制約も多く簡単ではありません。
そこで、中国株式に本格的に投資するにあたって有効なのが「中国投資を主戦略としているヘッジファンド」を介して中国に投資することです。
一個人では難しい中国市場への投資も、組織として運用しているヘッジファンドであれば、海外拠点を駆使し、様々なハードルをクリアして投資しています。
中国に投資するヘッジファンドはあまり多くはありませんが、オリエントマネジメント(Orient Management)などは、その戦略や投資手法もしっかりとしておりかなり期待が持てます。
オリエントマネジメントについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある人はぜひ参考にしてみてください。
さいごに
今回は「円安」をテーマに、海外投資の重要性やそのメリットについて解説しました。
為替は上手く味方につけることで、大きなリターンを掴む可能性を広げてくれます。
例えば、先述の中国への投資などは
中国株式の株価上昇 × 中国人民元の価値高(円安人民元高)
と組み合わさることで、とてつもなく大きなリターンが期待できます。
為替にはリスクも伴いますが、適度に資産を分散させることで、反対のリスクへの備えになるということもきちんと理解しておきましょう。