「新興国への投資はリターンが大きい」そんな噂を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか?
特に2000年代にBRICsと呼ばれる国々を中心に対象とした新興国投資は過熱し、多くの投資家が新興国投資を通じて財をなしました。そして2020年代になった現在、今度は東南アジア諸国を中心に、新興国投資が再度注目されています。
一方で「新興国投資がオススメ」と言われても、身近でない国や企業への投資はハードルも高く、簡単には踏み出せないという方がほとんどです。
そこで今回、当記事では、新興国投資のメリットやデメリット、オススメの投資方法までを解説しながら、「本当に新興国投資はオススメなのか?」「新興国投資をするならどうしたらよい?」という疑問にお答えしていければと思います。
当記事で新興国投資への理解を深めて、ぜひ自分の資産運用/投資の選択肢の一つとして検討いただければ幸いです。
新興国投資のメリット/デメリット
- [メリット]投資先の経済成長に伴い、大きな投資リターンを得られる可能性がある
- [デメリット]世界情勢などの変化を受けて、損失に繋がるリスクも
投資におすすめの新興国
- 中国・ベトナム・インドネシア
新興国に投資をするなら?
- 個人投資をする際は、その国の株を取り扱っている証券会社の口座開設が必要
- 証券口座で特におすすめなのは、新興国も幅広く取り扱うSBI証券
- 新興国投資は難易度が高く、ヘッジファンドを利用しての資産運用が特にオススメ
新興国投資のメリット/チャンスは?
新興国投資の一番のメリットは「ハイリターンが狙える投資」であるという点です。
基本的にはという前提条件付きですが、経済成長している国への投資は高いリターンが得られる傾向にあります。
経済成長している国とはどんな国でしょうか。
人口増/技術発展などで経済の成長が進みますが、その成長を支えているのはその国にある企業群。そうした企業も国と併せて成長していきます。
すると、企業成長によって企業価値である株価は上昇していきます。
つまり、経済成長している国は全体的に株価向上が見込まれるのです。
具体的な例も併せて見てみましょう。例えば、2000年代に「成長目覚ましい新興国」と言われ投資先としても人気が急上昇したブラジル。
ブラジルの株式市場の全体平均を見てみると、2000年から2020年の間に、株価が3倍以上にも成長しています(日本円換算での数値)。極端な言い方をすれば、20年前にブラジルに投資をしていれば、その資産額は3倍に跳ね上がったことになります。
2000年代は、ブラジル、ロシア、インド、中国をまとめた「BRICs」という言葉が流行し、成長国として投資先として人気が急騰しました。BRICsに投資をしていた人の中には、資産が10〜20倍にもなったという人も。
新興国の成長を捉えて投資活動を行うことで、それだけの資産成長/増を見込める可能性があるということですね。
現在では、BRICsへの投資は落ち着きつつありますが、インドネシア/フィリピンなどの東南アジアを始め、次なる「成長する新興国」への注目は高まっています。
新興国投資のデメリット/リスクは?
投資に絶対はありません。リターンが狙えるからこそ、リスクも表裏一体です。大きなリターンを狙える新興国投資ですが、新興国だからこそのリスクも多数存在します。
例えば、いくら「注目の新興国」といっても、国が確実に成長するかはわかりませんよね。
先ほど例にあげたブラジルも、2000年代は好調に成長を遂げていきます。しかし2010年代には成長が低迷、経済成長率がマイナスとなった年もありました。2010年代には、様々な投資指標においても、思わしくない結果となり、投資をしていた人たちの中には損失を出してしまった人も少なくありません。
また、新興国ならではの、経済以外で問題が起こる可能性も。政治懸念や為替リスクなどで、株価が大きく下落することなどもあります。
直近の例で言えば、ロシア-ウクライナ戦争があげられます。ロシアもBRICsの一員として将来を期待された国でしたが、戦争と同時に、ロシアの株価指標は半分程度まで急落しました。
ハイリターンが狙える一方で、このように様々なリスクもあるのが新興国投資です。
新興国投資はどこに投資するのがおすすめ?
ハイリターンの狙える新興国投資。大きな資産形成のために投資したい、安定資産とポートフォリオを組んで投資をしてみたいなど、挑戦を考えている方もいらっしゃると思います。
しかし、一言で「新興国」といっても、先ほど例に挙げたBRICsに始まり、タイ・マレーシアなどの東南アジア諸国、中国・韓国などの東アジア諸国など様々です。
どの国に投資をすれば良いのでしょうか?
今回は、「経済成長率」「PER(株価収益率)」「株式時価総額/GDP比率」などの指標を活用して、投資先としての新興国を評価してみましょう。
経済成長率は、今回は10年間のGDPの年平均成長率を紹介します。
成長率が5%であれば、毎年5%ずつGDPが成長していると言うことです。
先ほど解説したように、一般的には、成長率が高い国は株価成長のチャンスが大きいです。
PER、株式時価総額/GDP比率の2点については、2021年のデータを参考に記載します。
PERとは、株価を一株あたりのEPS(Earnings Per Share、一株当たりの利益)で割った値を示す指標です。一目では難しいですが、一般的には「PERが高い=株式が割高な価格になっている」と見ることができます。
株式時価総額/GDP比率とは、その名前の通り、市場全体の時価総額を、国内総生産(GDP)で割った比率です。
こちらも一見わかりづらいですが、計算結果が「100%以上の時には株式が割高である」、というのが一般的な評価基準です。
各国のデータ
韓国
- 経済成長率:平均約 2% – 3%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率:約 90% – 125%(Bloombergデータ)
台湾
- 経済成長率:平均約 2% – 3%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 15倍 – 20倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率:約 150% – 250%(Bloombergデータ)
南アフリカ
- 経済成長率:平均約 1% – 2%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 250% – 300%(Bloombergデータ)
ブラジル
- 経済成長率: 平均約 1% – 2%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 50% – 60%(Bloombergデータ)
ロシア
- 経済成長率: 平均約 0% – 1%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 5倍 – 10倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 5% – 15%(Bloombergデータ)
インド
- 経済成長率: 平均約 6% – 7%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 20倍 – 25倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 80% – 120%(Bloombergデータ)
中国
- 経済成長率: 平均約 6% – 7%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 50% – 80%(Bloombergデータ)
ベトナム
- 経済成長率: 平均約 5% – 7%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 40% – 50%(Bloombergデータ)
フィリピン
- 経済成長率: 平均約 5% – 6%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 15倍 – 20倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 90% – 100%(Bloombergデータ)
インドネシア
- 経済成長率: 平均約 5% – 6%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 45% – 50%(Bloombergデータ)
シンガポール
- 経済成長率: 平均約 2% – 3%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 15倍 – 20倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 150% – 200%(Bloombergデータ)
タイ
- 経済成長率: 平均約 3% – 4%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 10倍 – 15倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 100% – 120%(Bloombergデータ)
マレーシア
- 経済成長率: 平均約 4% – 5%(IMFデータ)
- 株価収益率(PER):約 15倍 – 20倍(Bloombergデータ)
- 株式時価総額 / GDP比率: 約 90% – 120%(Bloombergデータ)
各国の簡単な評価
経済成長率 | 株価収益率(PER) | 株式時価総額 / GDP比率 | |
韓国 🇰🇷 | 2% – 3% | 10倍 – 15倍 | 90% – 125% |
台湾 🇹🇼 | 2% – 3% | 15倍 – 20倍 | 50% – 250% |
南アフリカ 🇿🇦 | 1% – 2% | 10倍 – 15倍 | 250% – 300% |
ブラジル 🇧🇷 | 1% – 2% | 10倍 – 15倍 | 50% – 60% |
ロシア 🇷🇺 | 0% – 1% | 5倍 – 10倍 | 5% – 15% |
インド 🇮🇳 | 6% – 7% | 20倍 – 25倍 | 80% – 120% |
中国 🇨🇳 | 6% – 7% | 10倍 – 15倍 | 50% – 80% |
ベトナム 🇻🇳 | 5% – 7% | 10倍 – 15倍 | 40% – 50% |
フィリピン 🇵🇭 | 5% – 6% | 15倍 – 20倍 | 90% – 100% |
インドネシア 🇮🇩 | 5% – 6% | 10倍 – 15倍 | 45% – 50% |
シンガポール 🇸🇬 | 2% – 3% | 15倍 – 20倍 | 150% – 200% |
タイ 🇹🇭 | 3% – 4% | 10倍 – 15倍 | 100% – 120% |
マレーシア 🇲🇾 | 4% – 5% | 15倍 – 20倍 | 90% – 120% |
それぞれのデータを見てみると、いかがでしょうか。
例えば台湾は、経済成長率は他の新興国よりも低く投資先としての期待が下がると共に、割高感を示す指標においても不利で、このデータからみると、投資先としてはあまりオススメできないと言えるでしょう。シンガポールなども同様ですね。
逆に、特に注目すべきなのは中国・ベトナム・インドネシアなどの国々です。
経済成長率が高く、今後の投資先としても期待できると同時に、割高感を示す指標も有利。他の国々と比較すると、期待度の高い株を割安に購入できると言えそうです。
一方で、新興国の中でも特に注目されがちなインドなどは、成長率は高い一方で、割高感も。注目とは裏腹に、難しい投資になるかもしれません。
今回はあくまでも簡単なデータを参照しただけですが、こうした分析だけでも、どの国に投資をすべきかの輪郭が見えてきます。
新興国投資に興味を持った方は、中国・ベトナム・インドネシアなど、チャンスが大きい国々への投資について、ぜひより深い研究を行ってみてはいかがでしょうか。
この3国の中でも特に注目の「中国」への投資については以下の記事でも詳しく解説しています。
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新興国への投資を始めるなら
すでに新興国投資に興味を持っている方、当記事を読み進めて新興国投資に興味を持った方もいらっしゃることかと思います。
しかし、新興国投資を始める際には少しだけ注意が必要。メジャーな日本投資や米国投資とは違い、アクセスのハードルが少しだけ高めです。
新興国への投資に興味がある/投資を始めたい人向けに「どうすれば投資を始められるか」を解説していきましょう。
今回は、不動産投資などは割愛し、株式/企業への投資をターゲットにします。
まず、大前提として、投資の大きな方針は
- 自由に株式を選択して投資する「個人投資」
- 機関投資家に資産を預けて投資してもらう「ファンド(投資信託/ヘッジファンド)」
の2つに大別することができます。これは、日本国内や米国への投資と同様ですね。
個人投資
まずは、個人投資についてみていきましょう。
基本的には、日本株/アメリカ株への投資と同様に「証券会社の口座を開設して、株式を購入する」ことなります。
注意すべきは、新興国株を取り扱っている日本の証券会社が少ない点です。求める株を取り扱わない証券会社の口座を開設しても、その株の取引はできません。
例えば、先ほど注目の国として挙げた
「中国」であればSBI証券・楽天証券・マネックス証券が、
「インドネシア」はSBI証券・楽天証券・アイザワ証券が、
「ベトナム」であればSBI証券、アイザワ証券、むさし証券などが、
取り扱っています。
そもそも、取り扱い会社が少ないことはもちろん、どちらかと言えば、いわゆる日系大手証券ではなく、新興系・ネット系の証券会社の取り扱いが多いですね。
すでに証券口座を持っているよ、という方でも、自分が投資したい国の株式を取り扱っているかどうかは要確認です。証券口座を持っていないと言う人は、特に幅広い取り扱いのある、SBI証券がおすすめです。
投資信託/ヘッジファンド
次に、投資信託やヘッジファンドなど、機関投資家に資産を預けて運用してもらう方法です。個人的には、新興国投資を検討している人にとっては「ヘッジファンド」での運用が特におすすめです。
新興国投資には、様々なハードルがあります。
例えば、先ほどもお伝えしたように「世界情勢の影響を受ける」というリスク。あるいは「どこに投資をするか」と考えるのも一筋縄ではいきません。ベトナムで投資すべき企業はどこか?と聞かれてすぐに答えられる人はほとんどいないでしょう。
しかし、投資のプロフェッショナルである、ヘッジファンドなどに依頼をすることで、こうした課題は解決します。
専門の投資ファンドは、投資で確実に運用益を出すために、それぞれの国について、企業/株価の動向から、政府の動向・政策と影響度などまで、徹底的な調査を行っています。
私たち個人投資家では出来ない水準でのリサーチ、投資を行っている「投資のプロ」に運用を任せることで、様々なコストやリスクを削減しながら、新興国投資に手を出せることは、大きなメリット。
もちろん、委託には若干の手数料がかかりますが、こうしたメリットの対価であることを考えると、十分検討に値すると思います。
こうした手法を通じて、新興国への投資を始めることができます。興味を持たれた方は、少しずつでも良いので、ぜひ初めてみてはいかがでしょうか??
[まとめ]新興国投資について
ここまで簡単に、新興国投資のメリット/デメリットや、投資すべき国、投資手法について紹介をしてきました。最後にもう一度新興国投資についてのポイントを整理していきましょう。
新興国投資のメリット/デメリット
- [メリット]投資先の経済成長に伴い、大きな投資リターンを得られる可能性がある
- [デメリット]世界情勢などの変化を受けて、損失に繋がるリスクも
投資におすすめの新興国
- 中国・ベトナム・インドネシア
新興国に投資をするなら?
- 個人投資をする際は、その国の株を取り扱っている証券会社の口座開設が必要
- 証券口座で特におすすめなのは、新興国も幅広く取り扱うSBI証券
- 新興国投資は難易度が高く、ヘッジファンドを利用しての資産運用が特にオススメ
いかがでしたでしょうか。
ハイリターン投資の有力な選択肢となる新興国投資。すでに投資・資産運用をしている皆さんも、これから資産運用を始める皆さんも、ぜひ考慮に入れてみることをお勧めします。
今回の記事で紹介した内容は「中国株の値段が必ず上がる」など、未来の成果を確実に保証できるものではありません。
これまで見てきた特徴は「あくまでも投資先として優れた候補である」という判断ができるまでです。投資の際は必ず自己責任で判断するようにお願いします。
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